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火葬

柩に入れる花を葬儀屋さんに頼むではなく私が用意することにした。

以前母が好きな花と言っていたトルコ桔梗で飾りたかったから。

家の近所にとてもセンスの良い花屋さんがありそこに事情を話し支度を手伝ってもらった。

当日の朝お姑さんから「何か花を供えたい」と言われありがたく母の好きな花でブーケを作ってもらい柩用の花の箱とブーケを花屋さんから受け取り火葬場に行った。

炉に入る前に妹一家と夫と私で用意した大量の花を母の柩に入れ姪と甥は手紙を書いて入れてくれ最後柩の上にお姑さんからのブーケを乗せて母は火葬炉に入っていった。

実は葬儀場の冷蔵庫に保管してもらってる間に妹一家と私達夫婦で会いに行った。
その時すっぴんの母に眉毛を描こうと化粧道具を持って行ったけど上手くかけず諦めた。
夫は若い時父親を亡くしているのだけど手形を取れば良かったと後悔してたそうで今回私に母の手形と遺髪を取る事を強く勧めた。
なので色紙と朱肉と鋏を持っていき葬儀屋さんが席を外した時に「私達が見張るから!」という妹と姪を入り口に立たせ急いで母の手形と遺髪を取った。
もちろん妹の分も取ったのだけど「え…いらない」とか言われ今もうちに全て置いてある。

焼き上がった骨は亡くなる前の2年何度も骨折して骨が脆くなっていると言われていたのにしっかり骨格標本のように綺麗に形を残していてみんなで驚いた。
それと同時に長かった母との人生がようやく終わったと強く実感した。

斎場には妹一家と私達夫婦だけ。
親戚には一切連絡しなかった。
他県に住む母の妹達はそんなに付き合いも深くなくなっていたし2人いるうちの1人は足が悪くてとても来られないと思ったから。
全ての人に事後報告にするつもりだった。

母のお骨と白位牌を祭壇が作られている実家に置き線香をあげ花を飾りお供えを飾って一旦各自家に帰った。

その後誰もいない家に置いておくのは寂しいだろうという事になり妹の家は置くスペースないと言うので私がお骨と位牌を預かる事にした。
父の位牌を置いとくわけにいかないだろうと父の位牌とご本尊様?何か仏壇の奥にあった物も同時に引き上げた。

葬儀も終わりお世話になった病院やケアマネや介護用品屋さんに挨拶に伺いその後母の友達や妹に連絡をした。
彼には亡くなった日に連絡していた。持っていた合鍵を返しておくと言われ泣きながらお礼を言われた。こちらこそ長年お世話になりましたと挨拶をした。

母を納骨堂に入れようと話し合っていたので市営の納骨堂に決まるまでうちに預かる事にした。
今も母のお骨はリビングにある。

死者を思いだすとあの世にいる死者の周りに花が降るという素敵な話を聞いた事があるので毎日思い出し母のエピソードをほぼ毎日誰かしらに話している。
きっと毎日母の頭上には花が舞っているだろう。

母と色々あったし憎しみもあったけど今は心から母の次の人生が穏やかで幸せでありますようにと毎日祈ってる。

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