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サントリーホールディングスほか事件

概要

経緯:
 従業員Aは、グループ長の指示で営業部品購買金額提言プロジェクトに従事したが、同プロジェクトの他部署からグループ長に対してAの勤務態度の問題を指導するよう要望されたり、指示通りの資料を提出しないことなどあった。次いで購買予算と実績管理システムの開発をAを主任として行うこととなったが、翌年に開発は無理だとのべてグループ長が指導した。その後もAのミスがあり指導回数が増えるとともに厳しくなっていった
 Aはグループ加入からおよそ一年後にうつ病にり患しており3か月間の自宅療養を要する診断書の交付を受け、グループ長に休職を願い出た。しかしグループ長より、有給休暇を消化すること、もし休みをとるなら異動予定は白紙に戻すが異動を希望するか回答するように問われ、異動を希望していることから休職せずグループ長の下で勤務を再開した。
 後日別グループに異動したが、Aの精神状態は快方に向かわず、有給休暇を取得するなどしておよそ2か月間休職した。
 4年後に、Aは社内の内部通報制度を利用してグループ長の行為はパワハラだとして責任追及を求めた。担当者は複数名に事情を聴取したうえで、悪質ではないため処罰できないことが口頭で伝えられた。

結論:
グループ長には不法行為が認められる。すなわち、

  • 受診記録によればAに対して「新入社員以下だもう任せられない」「何でわからない、お前はバカ」またはこれに類する発言をしたことが認められ、この言動は注意または指導のための言動としての限度をこえて不法行為を構成する。しかし、これが執拗に行われていたとは言えず、悪質性は否定される。

  • グループ長の診断書棚上げにかかる言動は、Aのうつ病離間を認識したにもかかわらず休職の申出を阻害させ、部下であるAの心身に対する配慮を欠く言動として不法行為を構成し、上記①②はうつ病の発症及び振興に影響を与えた違法なものである。

注意点

  • 執拗に行われない人格否定を含む言動は心理的負荷「中」に該当するものだが、診断書の棚上げと相まってグループ長の言動がうつ病の発症及び悪化に影響を及ぼしたと認められており、複数案件の総合的判断で因果関係の判断がなされる

  • ハラスメントあるいは内部通報に係る調査の過程で関係者にヒアリングする際は、真実を述べてもらうためにヒアリング結果を開示しないことを条件とすることが少なくない。内部通報制度規定などに、会社が通報・相談内容及び調査過程で得られた個人情報を正当な理由なく開示しないことを定める必要があるかもしれない

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