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松原興産事件

ポイント

パワーハラスメントによる精神疾患への損害賠償において、労働者の性格が通常予想される範囲を外れるものではない限り過失相殺の対象とならないことを明確にしたもの

概要

経過

 平成21年8月よりパチンコ店の正社員として勤務するAは、平成24年4月より週6日勤務のうち半数を同時刻に出勤する班長Bよりインカムでの注意が激しくなり、帰るか、しばくぞ、殺すぞと繰り返されるようになった。
 その後、6月半ばにはアルバイトを指導する立場から降格、7月には顧客やほかの従業員の前で「お前もほんまにいらんから帰れ。迷惑なんじゃ」と怒鳴り、同年9月にはAが否定したが新台を破壊した始末書を提出させ、同年10月には指示を守らなかったとしてカウンター横に1時間立たせてさらし者にした。
 同日勤務後に体調不良となり、4日後にうつ病と診断された。
 休職3か月間の間に復職できないなら退職届を提出するよう求められ、翌年1月末日をもって退職した。
 北大阪労働基準監督署長は休業補償給付を支給決定した。

判決

  • Bの行為はパワハラに該当するため会社は使用者責任を負う

  • 損害の認定につき、上司からのパワーハラスメントを受けてうつ病にり患したことを原因とする損害賠償請求でも、民放722条2項の過失相殺の規定を類推適用して損害の発生または拡大に寄与した被害者の性格等の心因的要因を一定の限度で考慮できると解される

  • しかし、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さと比較して通常想定される範囲を外れるものではない限り、その性格などが当該労働者に生じた損害の発生または拡大に寄与したとしても使用者として予想すべきものということができる

  • しかも、使用者または代わりに指揮監督を行うものは各労働者がその業務に適するか判断して配属先・遂行すべき業務の内容を決めるのだからその際に各労働者の性格も考慮できる

  • したがって使用者の芭蕉額を決定するにあたり労働者の性格及び業務遂行の態様を心因的素因として考慮することはできないというべき

注意事項

すなわち
パワハラで精神疾患を発症した場合に、従業員の性格要因を理由にする過失相殺はそれが相当期待値よりも外れている場合を除いて行われない

被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる

民法第722条2項 (損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)

出典



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