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【重要】ティー・エム・イーほか事件

要点

 従業員の私病 (例えば精神疾患) に対し、うつ病発症と業務に因果関係がなく従業員が当該私病を理由に自殺しても、使用者は安全配慮義務違反の範囲において損害賠償責任を負う

概要

経緯:

 従業員Aは、平成19年2月5日、内科・精神科・心療内科を受診し自殺で死亡するまで継続通院していた。最初は不安障害及び不眠に対し支持的精神療法と投薬が行われていたが、平成21年10月以降は抗うつ剤など投与が行われ、平成22年4月10日から抗うつ剤はいったん中止された。
 Aは平成19年9月10日に派遣雇用契約を締結し、派遣先で空調設備メンテナンス工事など現場管理業務に従事した。業務遂行に問題はなく、異常な言動を認めることもなく、残業時間も月平均は40時間を超えることはなかった。
 平成22年3月に早退、休暇取得2回、4月に2回早退したため、派遣先の所長が心配して派遣元の代表取締役に体調を聞くように依頼した。確認すると、頭痛がありよく眠れないので通院して睡眠薬をもらっているとのべたことから、薬に頼らず気分転換するようすすめた。その後も代表取締役及び派遣先の所長も面談を繰り返したが、Aは体長は大丈夫であると繰り返し、同年12月9日に自宅で自殺した。

本判決:

  1. Aの自殺に派遣元及び派遣先の法的責任はない

  2. しかし、派遣元代表取締役及び派遣先所長はAの体調不良を把握した以上、調子はどうかと抽象的に尋ねるだけではなく、より具体的に、通院先、診断名、具体的な処方薬を訪ねて具体的な不調の内容と程度を把握し、ひつようならば産業医の診察や指導を受けさせるなどしてAが自身の体調を適切に管理できるよう配慮し指導する義務があった

  3. これを怠った限りにおいて損害賠償義務を認める

注意点

  • 個人情報保護の観点から従業員の私病に踏み込む必要はない

  • しかし、従業員の体調不良を把握した以上は、安全配慮義務の一環として、ただ面談をもうけて体調はどうかと尋ねるだけではなく、具体的な状況把握につとめ、難しければ産業医につなぐなど、具体的な対処につなげる必要がある

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