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【緊急寄稿】12月21日の大阪高裁の松井一郎氏との名誉毀損裁判の判決に向けて。(その④12/18版)〜「サンデー毎日」に掲載した「議員失格」の裏版です。

(『サンデー毎日』の12月27日号に全てを書ききれなかった、裁判の経緯をここに書きます。随時、書き足していきますので(その①)から番号が増えていくのをご確認ください。
【注】(佃克彦弁護士のリーガルチェックを受けています)


まず、改めて自己紹介からします。
水道橋博士61歳、
たけし軍団のメンタル傷痍軍人、元・参議院議員です。

現状を話します。

昨年7月10日投開票の参議院選挙に全国比例区から出馬して、晴れて当選したものの直後にコロナ罹患を経て、9月の映画『福田村事件』の撮影では極右の元・日本兵役で出演後、心身の過労から鬱病が再発してしまい10月には臨時国会開催と共に休養を発表しました。

そして今年1月に議員辞職してしまいました。

有権者の皆様、そして期待して投票してくださった方々には謝っても謝りきれません——。

心より申し訳ありませんでした。

その後、『自分が消えてなくなりたい」ほどの強い自責の念に苛まれ ながらも、7ヶ月に渡る休養の日々を送り今年の夏から芸人稼業に復帰させていただきました。

しかし、本来なら余生を楽しむべき還暦の歳に何故ここまで激動の人生に
なってしまったのか、その切っ掛けとなった事件について、しばし振り返らせてください。

  その当事者である、被告と原告、
ボクと松井一郎元大阪市長の来し方と行く末 を——。

 
 ことの発端は、2022年2月13日の深夜。

 モニター越しにTwitter(現X)の画面を見た瞬間でした。
 画面には松井一郎大阪市長(当時)がボクのTwitterに対して書き込みをしていました。

《これらの誹謗中傷デマは名誉毀損の判決が出ています。
 法的手続きします》
さらに重ねて
水道橋さんは有名人で影響があるのでリツイートされた方も
 同様に対応致します》

 と書いてありました。

 その瞬間、動悸が止まらず、手が震えパニック状態になりました。
(権力者に突如訴えると脅される経験者は皆さん、
 このような症状になることが多いようです)
  それでも努めて冷静を言い聞かせて調べてみると、このツィートがボクがこの日の朝に呟いたツィートに対する、松井市長の返信であることが徐々にわかってきました。

 この日の朝、ボクがTwitterに
《これは下調べが凄いですね。維新の人たち&支持者は事実でないなら訴えるべきだと思いますよ(笑)》

 
と書いて政治系YouTuber金子吉友氏の『あつまれニュースの森』というYouTubeの「維新の闇!大阪市長・松井一郎の経歴を調べたらヤバかった」と題する 動画のリンクを貼っていたのです。

ボクが引用した動画はこちらです。

(サムネの画像は当日のものとは違います)
 
今では面識もありますが、この金子吉友氏とは当時は完全に見ず知らずで、経歴も一切何も知りませんでした。

 ボクと維新のファウンダー(創設者)である橋下徹氏とは、ボクが2017年にテレビ大阪の「『たかじんNOマネー』での生放送降板事件を起こすなど数々の因縁はあり、ボクが『週刊文春』で連載してた『藝人春秋』で数週に渡ってとりあげるなど個人的にはジャーナリスティックな方法で略歴などを調べあげていました。

しかし、この時点では松井一郎氏とも面識はありませんでしたし、氏は維新のファウンダーのひとりでありながらも、興味を抱くことなく完全にノーマークでした。

それ故に、ただただ、この動画で描かれている松井市長や維新に関わることの歴史的経緯が今まで自分の知らないことだらけだったので、純粋に興味深く驚いたのです。

 そして、このツィートの一文の何が名誉毀損になるのか?
 もう一度このYouTubeを見直しました。

このYouTubeは27分9秒の長尺です。

  YouTubeの視聴者を飽きさせないツカミのテクニックとして、冒頭から今日のテーマと結論を紹介しています。

「今日のテーマ……パワハラしてもオトガメなしの大阪市長・松井一郎の経歴を調べたらヤバかった!」

 
と金子氏が語り出します。

「本日の結論は……松井一郎氏が大阪府議会で強い権力を手にできているのは、そのバックに競艇で得た莫大な資金力と笹川財団ブループからの強力なバックアップが背景にあった」

 
と語るのですから、このツカミの段階でボクは既に興味津々です。

笹川財団とは、故・笹川良一が競艇利権で築き上げた日本のエスタブリッシュメントが集う一大組織であり、今も政財界に根を生やしています。

戦前、戦中に軍国主義を浸透させた右翼の領袖である笹川良一が戦後、A級戦犯に問われました。

しかし、服役した巣鴨プリズンで闇の人脈を築くと、戦後は競艇利権を一手に得て巨大な王国を築き ます。

70年代には巨額を投じた日本船舶振興会のCMに「♪戸締まり用心火の用心〜」と歌いながら自ら顔出し出演し、テレビの太客スポンサーとしてマスコミを懐柔、骨抜きにしたことは年配の方なら誰でもご存知なことであると思います。

YouTubeの話に戻ります。

金子解説を辿っていくと、維新と竹中平蔵らが笹川グループ を通じて繋がり、以降、民間人だった竹中らは自民党に食い込み、小泉政権では民間から大臣登用され、小泉退陣後は東京から大阪へ拠点を移し、維新の政策ブレーンに転じていきます。

笹川財団のトップ・笹川陽平氏(良一の三男)と自民党の歴代首相は昵懇の仲であり、小池都知事も笹川尭元自民党議員から強いサポートを得ていて、維新と自民党、都民ファーストは笹川財団グループを通じて深い関係で結びついている……

と金子氏は、まずは全体像を話してから……。

ここから本題の「松井一郎の経歴」から始まります 。

まず、2021年、大阪市議会議員の山中智子議員が
Facebookで松井一郎市長の議会でのパワハラを告発しています。
そしてYouTubeのなかで実際の府議会の映像が流れます。

「うるさい!!静かにせぇ!!バカがぁ!!」

この議会に轟く、松井一郎氏の怒声は強烈であり、
強面が似通う「日本統一」の親分役・小沢仁志を彷彿させるほどの恫喝発言でした。

最近も、こんなXをポストしていましたが……。

こういう書き込みは「どの口が言う?」と思います。

過去のYouTubeを調べてみても
橋下徹氏、松井一郎氏のパワハラ問答は数限りないです。

というより記者やマスコミ、他党の議員に
「バカ」「糞」を連発し、居丈高に振る舞うのは
橋本スタイルであり、長年続いている維新スタイルです。

閑話休題。
その後は、松井一郎の父・松井良夫の経歴が語られます。

1937年生まれで、
79年に大阪府議会議員に自民党から出馬して当選、
1996年大阪府議会議長まで上り詰めます。

更にかつては笹川良一氏の専属運転手だったこと。
政治家転身前は電気関連工事会社を立ち上げ、笹川良一氏が住之江競艇の電気設備関連の工事を良夫の会社に融通したこと。
そのことで、松井家のファミリービジネスの業績が一気に拡大していったことが語られます 。

当初は、このあたりは金子氏の裏取りが少ないので、訴えられたのは、この周辺の利権問題あたりだろうと踏んでいました。

その後、政界に進出した父親のもとでやんちゃに育ったのが松井一郎氏であり、高校2年の時に暴力・傷害事件を起こし退学しています。

その後、笹川良一が理事をとつとめる「福岡工業大学付属高校」に編入したとのことですが 、それが「裏口入学」であったとの疑惑が「週刊文春」2012年5月24日号で報じられたことが紹介されます。

 動画で紹介されたその記事の見出しには「松井一郎大阪府知事、裏口入学を告発する!元秘書が証言」と書かれています。

この記事によれば、松井氏は高校を中退後、父親と懇意な笹川氏のツテで福岡工大付属高へ。

その際「試験問題を事前に入手して対策を練り、答えを松井一郎氏に丸暗記させた」と元秘書が証言したと文春は書いているのです。 

ちなみに、この告発に対しては、松井氏は「訴えてやる!」ではなく、反論すること無く見過ごし、今も放置したままのようです。

 逆に、記憶に新しい、橋下徹事務所が代理人をつとめた 「週刊新潮」が報じた、爆笑問題の太田光氏の裏口入学問題。

この裁判では太田側が勝訴しているのですから、事実でないなら、むしろ、まずこちらを提訴するのが筋というものです。

  その後、この金子氏の動画は、雑誌にも掲載されたという過去の「強姦疑惑」にも触れますが、この件は早々に「ネットで調べても証拠は見つかっていない」と金子氏がまず噂を否定します。

 そして2021年1月22日の産経新聞WESTを引用し、

「平成31年4月の大阪府知事・市長のダブル選前にSNSで誹謗中傷されたとして、大阪市の松井一郎市長が埼玉県の女性に550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、大阪地裁であり、金地香枝裁判長は女性に330万円の支払いを命じた」

 
と裁判結果を明示して、この疑惑をもう一度否定しています。

 ちなみに、この話題に費やす時間は動画の中の10分23秒から11分42秒のわずか「一分強」であり、しかも先述のように明確に松井氏の潔白を伝えています。

 その後は「大阪市の仕事を同族企業に融通か?」という新たな疑惑を語り、笹塚財団が作ったシンクタンクである「日本財団」と維新との関係が明かされます 。

 このようなことからも、最初からデマ認定の「強姦疑惑」などにはボクには関心がなく、その後の裏口入学や財団との関係 の話やファミリービジネスの話の方が むしろ初耳過ぎて、真相を詳しく知りたく、それがTwitterに書いた先述の文言に繋がるわけです。

しかも、読者の皆さんも想像してみてください。

YouTubeを見て、たまたま引用RTをしただけで大阪市長に裁判所に呼び出されることを宣言される——。

その理不尽さと恐怖感を。

多くのスラップ事案はここで止まります。
何故なら、権力者の恫喝は、
それだけで十分に功を奏するからです。

ボクも普通なら、
このままツイートを削除して穏便に引き下がるでしょう。

しかし、ボクには
《リツイートされた方も同様に対応致します》
という文言は明らかに権力者による
大衆への言論弾圧に思われました。

ちなみにボクのツイートに対する
一般のRTは延べ4000回以上に及びます。
つまりこの延べ4000人強の人々が
今も「訴えられるおそれがある」ということになります。

これでは日常的に市民の発言に対し
「提訴」をちらつかせ、
スラップ(脅し)をする
言論封殺上等の為政者である、
ということになります。

それでも最初は、単なる「脅し」だと思いました。

この市長の理不尽な行為に多くの識者に心配もされました。

今回の訴訟が典型的なスラップ(口封じ)と感じるのは、
なにしろ今に至るまで、
件の動画を作った張本人である金子吉友氏は訴えられることが無く、
しかも、この問題の発端になったYouTubeは
今も停止されることなく公開されたままなのです!! 

合理的な理由がさっぱりわかりません。
やっていることに論理的な整合性がないのです。

ボクを訴えるならまず、噂の元栓を締めるべきでしょう。

だからこそ読者の皆さんも、
この動画を今、ご覧になってお確かめください。

 昨今、日本でも「恐喝訴訟」「嫌がらせ訴訟」を意味する
「スラップ訴訟」が問題視されており、
提訴が市民の政治活動に対抗、圧迫するために利用され、
また提訴者が裁判での勝訴を目的するのではなく
ターゲットから時間、費用を吸い上げ、
被告の人生を疲弊させることで市民の政治参加、
言論の自由に対し重大な影響を与えている——


という風潮は続いており、
日本では立ち遅れている「反スラップ法」の法制化を
求める声も大きくなってきました。

2021年3月31日——。
訴状が所属事務所へ送られてきました。
結果、賠償金550万円の名誉毀損裁判を
大阪地裁に起こされてしまったのです。

しかも驚いたことに、
松井氏が名誉毀損だと訴えている理由は、
動画の内容ではなく、
金子氏が作った動画のサムネイル画像に関してなのです。

最初に公開されたサムネには
「維新の闇」の大きな題名の下に
「傷害事件」「裏口入学」「競艇利権」「強姦疑惑……」
と並べて書かれてしました。

訴訟ではなんと松井氏はこの「強姦疑惑……」
の4文字だけを問題視しているのです。

しかも内容ではなく、
ボクが引用したTwitterの再生時 にサムネの
『強姦疑惑……』の文字が
「見えたか、見えなかった」が、
この裁判の最大の焦点になっているのです。
もう一年以上も。

サムネですらもちろんボクが作ったものでなく、
また、そのサムネは訴訟リスクが高まった際に、
金子氏にすぐに変更されているのに……。

阿呆らしい……。

その後、ボクは反スラップ訴訟法案制定を公約にして
参院選に出馬して、ボクが国会議員になりました。

逆に4月6日に任期満了で市長と政界を引退した
松井氏が一般人になってしまいました。

 公人と私人の立場は逆転したのです。

 しかし、当選後にボクは鬱病に罹患、議員辞職したことで、
松井氏とは私人として同じ道を歩むことになります。

 休養中もボクが不在でも裁判は進み、
無収入となった我が家は就学児を3人抱えて、
生活費に加えての、
裁判の維持費塗炭の苦しみを背負うことになります。

 これは収入格差を狙い目にする、
スラップ訴訟の仕掛け側の思惑通りの展開なのですが……。

 今年5月16日、大阪地裁で一審判決を受け、
ボク側の敗訴、110万円の賠償を命じられました。

 その頃は、まだボクは療養中で頭のなかは霧の中です。
ちなみに、ボクは昨年5月の第一回口頭弁論には出廷し、
その後、大阪のマスコミを集めて記者会見も開催しましたが、
松井氏は代理人に任せたきりで、
一度も裁判に姿を現してもいません。

彼らは、
ずっとこのスタイルのままなのです。
裁判にしておけ!!
あとはシランガナ、の態度。

しかし、この判決を不服として、
両陣営ともに控訴して第二審に委ねられ、
来る12月21日は二審、大阪高裁での判決が出ます。

読者の皆様、是非、注目いただきたいと思います。

 この裁判が本末転倒であることは、
今回の裁判によって、松井氏の過去に触れた
金子氏の前記の動画に世間の注目が集まったことです 。

これは裁判に於ける「ストライサンド効果」として知られています。

 映画『追憶』で知られる大女優のバーブラ・ストライサンド。

彼女が2003年、自身の邸宅が写っていた
ネット上の画像の公開の差し止めを求め、
裁判を起こしたところ——。

図らずも却って世間の関心を集めて、
桁違いの閲覧数となってしまったことが語源です。


バーバラ・ストライサンド



 人間は何らかの情報が秘匿されていることに気付くと、その情報を入手して広めようとする習性があります。

 とりあえず12月21日の2審の結果に関わらず、
この裁判は最高裁まで争うことになるとは思います。

しかし、ボクが必勝を期すことは当然ながら、
仮に100歩譲って松井氏が勝つことになっても

「権力者の不利益になるものなら市民のRTですら違法行為になる」

という悪しき先例を作ることになります。

そうなれば日本の自由な言論を狭めた「裸の王様」として、
松井氏は後ろ指を刺されつづけます。

今でもコロナ禍に公務の時間にもスパに通い続ける
浪花の「スパ王」と揶揄されているのに。

それに加えて、
天下の悪法「松井阿法」(まついあほう)の語源として
末代まで語られ続けると思います。

松井氏は「家族のために私人として裁判をした」
と言っていましたが、
末代の恥が代々と流布されていく。
そんなことを松井氏の家族が望んでいるのでしょうか?

 全ての裁判が終わった時、
「議員失格」のボクは
「市長引退」の彼と一緒に
この歌を歌いたいと思います。

『追憶』のテーマ曲、「THE WAY WE WERE」を。 

彼とは一度も同じ道を歩んだことは無いけどネ……。


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