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HOTEL SHE, KYOTO公式サイト全面リニューアルの裏側に迫る! - ホテルの支配人がプロデュースを手掛けた理由とその舞台裏

2024年1月20日、水星が運営するHOTEL SHE, KYOTOにて、ホームページの全面リニューアルが実現しました。

以前のホームページの様子を知ってくださっている方の中には、その変わりっぷりに驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。
まだご覧になられていない方は、ぜひ一度ご覧いただき良ければ感想をお聞かせください。パソコンがお手元にある方は全画面100%モード推奨です。


この度のリニューアルを手掛けたのは、HOTEL SHE, KYOTOのマネージャーである岸えりなさん。それを支えたのが、水星プロデュース事業部プロデューサーの木村由佳さんです。その他社内メンバーの協力のもと他事業部間での知見や感性を集約し、大幅リニューアルを叶えることができました。

HOTEL SHE, KYOTOマネージャーの岸さん。岸さんの学生時代や前職のエピソードとこれからの夢についてはこちらから。
水星プロデュース事業部の木村さん。木村さんの学生時代のエピソードや今の仕事内容についてはこちらから。

どういう背景があって、このような進化に至ったのか。お二人にお話を伺いました。この記事を読んでいただいた上で件のサイトを見れば、もっとその世界観を楽しんでいただけるかもしれません。



File1. なぜリニューアルをしたのか

気になるサイトの中身について聞く前に、そもそもなぜリニューアルすることになったのでしょうか。Webサイトのリニューアルとなると、お金も時間も人手もそれなりにかかり、強い思いがなければ踏み切れないように思いますが…

岸:リニューアルを考え始めた理由は2つあって、まず、ひとつ目は機能面での課題です。これはHOTEL SHE, に限ったことではなくどのサービスでも、Webサイトをアップデートする際にまず検討されることかと思いますが、サイト内の情報の過不足が原因でお客様の満足度を下げてしまっていた部分がありました。私はコロナ禍真っ只中で入社したのですが、コロナも落ち着いて客足が戻ってきたタイミングで、自分たちのホテルに来られるお客様が求められている情報がある程度まとまってきたなと感じ、リニューアルをするなら今かなと思いました。
そして、情緒面での課題も。私たちは「ホテルはメディアである」というコンセプトを掲げて、ホテルの空間を通して人と文化を繋ぐ存在でありたいと考えています。客室にレコードプレイヤーを設置しているのは、単純に他のホテルにない宿泊体験を提供したいからということではなく、レコードプレーヤーのような自分が触れたことのないライフスタイルをホテルで体験することで、新しい生活の窓が開くようなきっかけをゲストに提供したいと思っているからです。また京都駅の南側にホテルを構えているのも、京都市内の画一化された観光のあり方とは一線を引いた私たちなりの目線での京都観光のあり方を提示したいと考えているからなのですが、最近はホテルの業界でも「まとめアカウント」のようなものが主流になり、自分たちの意図しない形で体験が切り取られて拡散されてしまうことも少なくありませんでした。改めて「ホテルはメディアである」という私たちの原点をWebサイトで隅々まで表現することで、私たちの想いに共感してくださるお客様を増やしたいと思ったんです。水星は創業当時から、「旅の目的地になるホテル」をつくることを目指してきました。”CHILLNN”を開発したのも、OTAのような定型的なサイトではなく、ホテルの世界観を詰め込んだサイトからお客様が直接予約できるプラットフォームを作りたかったからです。今回目指すのも、そういう“指名買い”をしてくださるお客様に喜んでいただけるWebサイトを作ろうというところでした。

今の課題を整理するところからプロジェクトは始まった


File:2. なぜ支配人がデザインをしたのか

ホテル事業部とプロデュース事業部の連携で実現した今回のリニューアル。いち事業部でのプロジェクト、あるいは外部への委託など、いくつか選択肢が考えられた中、事業部横断の社内プロジェクトという方法を取った理由はどんなところにあったのでしょうか。また、それによって生まれたシナジーはどのようなものだったのでしょうか。

岸:HOTEL SHE, KYOTOのサイトをリニューアルしたいと会社の稟議を通した当初から、この企画は外部への委託などはせず、プロデュースもデザインも、実装も、全て自分たちですることを前提に話が進んでいました。会社の社是にも“自分たちが愛せるものを作ろう”という項目があるのですが、HOTEL SHE, はこれまでも、自分たちの「好き」をベースにブランド作りをしていました。「マーケットはこうだから」と別の場所から一方的な視線で市場を分析するのではなく、自分たちがユーザーの立場で考えることが何より大事だと思っています。こういった自分視点のブランディングを守っていくためにも、なるべく色んな企画を自分たちが使えるリソースの中で進めていくような、スモールスタートを模索するカルチャーが私たちにはあります。
しかし、有志の締め切りのないプロジェクトという建て付けだと、どんどん優先度の高い業務が出てきてしまうので、きちんと社内のプロジェクトとしてチームを作る必要性を痛感し、木村さんに相談しました。

2023年8月にHOTEL SHE, KYOTOで実施した映画「アイスクリームフィーバー」とのコラボルームは、企画から客室デザインまでを岸さんが主導で手がけた。岸さんが一日をどのようなスケジュールで過ごし、支配人業務と並行して、これらプロデュースやデザインの業務を遂行しているのかは、こちらの記事もぜひ併せてチェックしてみてください。

木村:私は普段はクライアントワークがメインで、主に開業支援やブランディング支援などをしており、それこそホームページ作成のプロジェクトにも携わってきました。岸さんから相談をもらった時、社内でやるからこそできることがあるはずだと可能性を感じ、私としてもモチベーションが高まりました。水星全体をみても、大小関わらず依頼や相談のやり取りなどはあっても、自走している部署同士で並走する社内プロジェクトはそこまで活発ではなかったので、今後、今回の事例がひとつのベンチマークにもなればいいなという期待も抱きながら、岸さんとプロジェクトをスタートさせました。

水星の働き方の特色の1つは、事業部の枠にとらわれずやってみたいことや面白いことに挑戦できることだと思っています。例えば、HOTEL SHE, KYOTOの籔田さんは、ホテル業務と並行してPodcast番組「水星移住計画」を立ち上げから企画しているし、普段のオペレーションと並行してそれぞれの特技や好きなことを発揮しながら会社に貢献しようというする文化が根付いています。だけどそれを、一個人でホテル事業部の中だけで完結するのではなく、部署を跨いで協力できるような体制が整っていくと、より各プロジェクトの成果も上がるしお互いのスキルアップにもつながるだろうなと思っていました。

進行状況の整理

岸:木村さんに入っていただいたことで、一気にスピードが上がりました。ひとりだったらここまでできなかった。特に予算面では、どこにどれくらい割くのがベストか、クライアントワークをされてるからこその的確なアドバイスをくださり心強かったです。

木村:予算は何回組み直したか分かりませんよね。今回はタイミングよく利用させてもらえる補助金事業があったことも、プロジェクトの後押しになりました。先ほど岸さんも言っていた通り、スモールスタートで自分視点のブランディングを実現するのが私たちのカルチャーなので、特に予算配分については使うべきところと削減できるところの見極めが大事だと思っています。普段のクライアントワークの中でも、クライアントさんに提示された予算を最適に配分することを心がけているので、特に予算面ではこのプロジェクトで自分がパフォーマンスを発揮すべきところだと思っていました。余談で、今回は予算の決定後に私が加わりましたが、社内で関わる人数が多い方が、ふとした時の社員間の話題にも上がりやすくなるし、重要度がより高く見え協力してもらいやすくなる。さらに予算の組み方も変えられることもあるかもしれないので、認知してくれている仲間を増やしていくことは、社内プロジェクトを進める際には大事かもしれませんね。

ちなみに木村さんと岸さんは入社時期が近いこともあり、プライベートでも定期的に遊ぶ仲なのだとか。これはふたりでNewJeansのライブを観に行ったときのお写真。


File:3. なぜこのデザインになったのか

今回のリニューアルで最も目を引くといっても過言でもないのが、どこか懐かしく一見全くホテルと結びつかないようなそのデザイン。「一瞬なんのサイトかと思った」という口コミもあったようですが、どういう目的でこのデザインに至ったのでしょうか。

岸:実は、最初に考えていた案は、全く違うトンマナのデザインでした。旧サイト寄りのカラートーンでどちらかというと守りに入り、その分、サイトの構成やアクセスの動線の方に独自性を出していて。その案を翔子さんに見ていただいたら、「デザインでもっとえなりちゃんらしさを出して、アクセスの動線はもう少しわかりやすくした方がいいのでは」とフィードバックいただいたんです。原点回帰して、リニューアルの目的のところから再度考えてみたら、確かにそうだなと思いました。そして、「わかりやすい動線にするには、どういうデザインがいいのだろう」と悩んでいた時、ふと浮かんできたのがWindowsのデスクトップ画面だったんです。小学生の私でもできた単純な操作だし、確かにアクセスの導線は良い。加えて、「ホテルはメディアである」というコンセプトを体現するデザインにもできそうだなと。そこから一晩で一気にデザインを作り直しました。(注:岸えりなの愛称は「えなり」である)

ワイヤーフレームから使いやすさの検討を重ねた初期案

木村:ガラッと変わったデザインを見た時は「えなりちゃん、やるな〜〜」と思いました(笑)。デザインに関しては、私もえなりちゃんらしさ全開が1番だと思っていて、発想やブラッシュアップは任せ、私はゲスト目線でのフィードバックに徹していました。普段から、クライアントの課題や要望に対して、寄り添うだけではなく客観的な視点も忘れないように意識しています。

岸:特に、攻めたデザインを作っていると、独りよがりなものになっていないかと不安と隣り合わせなので、木村さんに客観的な視点で定期的にフィードバックをいただくことで安心して進めることができました。

京都は、学生のまちとも呼ばれるように、学生主体のユースカルチャーが根付いています。これは、私がこのまちの好きなところの1つです。例えば、大学生バンドが路上ライブしていたり、小さなライブハウスがたくさんあったり。そういう、よく言われる“京都らしさ”とはまた違った京都の魅力や新しい京都観光のあり方を伝え、私たちの京都での生活シーンやライフスタイルを提示することにも、力を入れています。これらを、サイトを通しても伝えたいなと思い、あえてホテルのサイトっぽくない、メディアとしての機能を携えた世界観に仕上げたかったんです。

トップページの動画に登場してくださったのは、Homecomingsというバンドの方で、私やHOTEL SHE,KYOTOスタッフである籔田さんの大学時代の共通の知人。私も籔田さんも同じ大学出身・軽音サークル出身で、軽音界隈では当時から話題のバンドでした。今ではドラマの主題歌になるなど、大活躍されています。「Homecomingsとも何か一緒にできたら面白いね」と話していたタイミングでサイトリニューアルが決まり、思い切ってお声掛けしたところ、快く引き受けてくださりました。元々、静止画にする予定だったのですが、木村さんから提案いただいた動画にして、本当によかった。

Homecomingsさんとの撮影風景

木村:補助金が取れることになって予算を組み直す際、ここが1番えなりちゃんが考えているコンセプトや想いを込められるポイントだと思い、提案させてもらいました。Homecomingsのお二人には、前日からHOTEL SHE, KYOTOに泊まっていただきこの世界観を体験してもらえたことで、演技ではない自然な姿を撮影でき、クリエイティブによりよく響いているように思います。


File:4. エンジニアでなくてもサイトリニューアルは可能なのか

プロに依頼することなく自分たちの力でやり遂げた今回のリニューアル。
技術面での苦労はなかったのでしょうか。

木村:実は、リニューアル前から引き続き、このサイトは全てWixで作っているんです。Wixと言うと、ノーコードで誰でも手軽にホームページが作成できる反面、凝ったデザインはできないイメージがあると思うので、驚かれます。もちろんシステムも、課金すればするほどできることが広がりますが、今回は、システムのグレードアップに割くお金や時間をクリエイティブに回すことができないかと考えました。作りたいものをよく考えて解像度を高め、今自分たちが持っているものを最大限に活用した上で、お金と時間をかけるべきところにかける。それが、良いものを作るためには必要なことだと思っています。今回も岸さんと、「今のままではこれができない」で終わるのではなく「じゃあどうしたらできるか」とその都度考え、常にポジティブに進んできたので、Wixで完走することに不安はなかったですね。

サイトビフォーアフター

岸:そうですね。私はWixの実装について詳しいわけではなかったので、よくお仕事を委託しているデザイナーさんにも相談し、試行錯誤しながらやってきました。逆にWixを使ったからこそ、社内のプロジェクトとして最後までできたと思いますし、また、私がやりたいことを全部表現できたのだと思っています。先ほどもお伝えした1番こだわりたいポイントを絞ることで最大限のパフォーマンスを発揮するスモールスタートのプロジェクトとして一番大切だった部分が、この「Wixでの実装」かもしれないですね。


File:5. リニューアルを終えて、今思うこと

自らの手で表現したい世界を見事に作り上げた、この度の全面リニューアル。最後に、改めてプロジェクトを振り返り、またこの成功経験を踏まえた今後に向けて、今の思いを伺えますでしょうか。

岸:自分が作りたかったものを作れたとはいえ、世に出す前にやっぱり少しの不安はありました。でも予想以上に良い反応をいただけて、嬉しかったですね。

「現地での体験により想像が膨らんでワクワクするようなサイトだ」っていうお声をいただいたのが特に心に響きました。最近は検索できる情報が高度化して、ホテルに泊まる前から現地での楽しみが若干読めてしまう。HOTEL SHE, も例に漏れず、うちのホテルでの体験内容を手っ取り早くまとめられてしまって、簡単にブランドを消費されてしまうことに悩むこともありました。このサイトはそんな悩みに対する私なりの1つのアンサーなのかもしれないと、この口コミを見た時に思いました。

今回のリニューアルを通して、私も改めてHOTEL SHE, KYOTOのホスピタリティーの形を可視化できた気がします。ラグジュアリーホテルのような高級感のある接客でも、ビジネスホテルのような無機質な感じの接客でもなく、私たちのカルチャーや楽しみ方をゲストと共有する接客が、 私たちのアイデンティティ。そんな接客に自信を持ってやっていきたいです。

水星がずっと掲げてきた”ホテルの新しい可能性を広げる”というミッションのように、”新しい可能性を広げる”ようなサイトができたように思っています。たくさんお寄せいただいた反響を読みながら、私たちが思う、HOTEL SHE, KYOTOの立ち位置や提案している観光のあり方をいいと思ってくださる方がたくさんいらっしゃるのを実感できたことも、リニューアルして良かったことの1つです。これを糧に、接客にも発信にもイベントにももっと力を入れ、さらに存在感を強めていきたい。このサイトを見てHOTEL SHE, KYOTOの世界観や思想に共感していただき、それがご宿泊いただける機会に繋がって、お客様とのコミュニケーションが生まれるきっかけになったら、この上なく嬉しいです。

木村:このプロジェクトに携わることができ、私としても新しい気づきや学びがありましたし、手応えも感じています。クライアントワークや外部の方と関わることで日々アップデートされるナレッジをどう社内に還元できるか、今後も模索していきたいです。

今回のような、尖ったもの、ぶっ飛んだもの、他とは違うものを世に生み出すのって、なかなか勇気がいりますよね。水星にお仕事を依頼してくださるクライアントさんも、今回の岸さんのように、それぞれに作りたいものだったり積み上げてきたものへの熱い思いや愛だったりをお持ちです。でも「自分の持っている愛をどう伝えたらいいのかわからない」と悩まれている方がたくさんおられます。その思いや愛をどう落とし込むかをご提案できるのが、私たちプロデュース事業部の強み。ただ、それでいくら作りたいものを作れても、自己満足で終わってしまうのは勿体無いし不本意だと思います。クライアント様へのご提案で、尖ったものを作る場合は慎重になるのも事実です。その点、今回は社内の共通意識として機能面の充実という目的が根底にあったことで、情緒面では恐れず躊躇せずえなりイズム全開のサイトを実現できました(笑)。

面白いことをしたくても一歩が出ない、ジャンプを恐れて意思決定できない方にとって、「こんな尖ったものでも大丈夫なんだ」「自分も面白いものを作ってみたくなった!」と、背中を押せるような事例になったら嬉しいです。いつでもご相談お待ちしています!!


fin. おわりに (耳寄りな情報も!)

もしおふたりのお話を聞いて、そしてこのサイトをご覧いただいて心が動かされたという方がいらっしゃれば、ぜひHOTEL SHE, KYOTOへ足を運んでいただき、京都・東九条の空気を感じながら、ここでしか味わえない宿泊体験を楽しんでいただければ幸いです。


最後に、この記事を読んでくださった皆様にちょっと良いお話を。
このサイトのどこかにある”隠しコマンド”に辿り着いた方には、HOTEL SHE, KYOTOからの嬉しいプレゼントがあるんだとか…!ぜひ探してみてくださいね。

テレレ〜ン…(Windows95の終了音)


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