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ホームトレーニーのリングフィットアドベンチャーレビュー #1

先日、任天堂が発売した「リングフィットアドベンチャー(以下、RFA)」というゲームが話題になっている。

「リングコン」という輪っか状のコントローラー(正確には、コントローラーを差し込んで使用する輪っか、だろうか)を操りながら筋トレや有酸素運動、ヨガのポーズなどのフィットネス種目を行える、ユニークなゲームだ。

「wii fit」以降だろうか。家庭内ゲーム機でフィットネスをこなすというのはもはや珍しいものではなくなった。

その今までのフィットネスゲームにおいては、有酸素運動やストレッチ等、負荷の低いものが中心だったと記憶しているが、「RFA」においては「筋トレ」が重視されているようだ。

巷では、「リアルスタミナゲー」と呼ばれるほどに高強度な運動ができるとのことだが、ホントか?

きっかけあって、この度、このゲームをトレーニーである筆者は半信半疑で購入したわけだが、せっかくなのでその内容をいくつかのポイントを踏まえてレビューしていく。

(なお、筆者はトレーニーとしてベテランではないが、主に、元ボディビルダーでトレーナーの山本義徳氏の著書等から得た知識を基に記事を書かせてもらう。筋トレの情報は正に玉石混交、もとい玉石石石石石石…混交といった状況ではあるが、氏の著書は理論と根拠に富んでおり、正しく宝庫と言っていいだろう。また、最新の研究が過去を改めるようなことがあれば即座に対応する潔さを持っている人物である。)

さて、レビューだが、筆者はまだこのゲームのさわりしかやっておらず、記事の締めに「結論!」などと書けるほどではない。ほんの数種目をやってみたに過ぎないのだ。その理由は、もちろん筋肉のためなのだが、詳しい理屈については後の自分に解説を譲ろう。

そこで、レビュー記事は長期的にやっていくとして、2つのルールを決めておきたい。

1つ目は、ひとつの記事において自分がやった範囲だけをレビューすること。やってもないメニューについての発言は控えておく。

2つ目は、運動を考察すること。特に、対象の運動が筋トレとしてどの程度有効であるのかはしっかり見極め、解説していきたい。

種目ごとに着眼点が異なるようでは統一性に欠けるので、そのエクササイズが筋トレなのか、有酸素運動なのか、その他の運動なのかを判断する「分類」、そのエクササイズがどれほど身体の変化に影響するかの「有効性」、この2点を特に注意していく。

レビューを始める前にダラダラと書いて申し訳ないのだが、大前提として、このゲームは「ゲームとフィットネス両方を楽しみたい人向け」であることを明らかにしておきたい。ゲームだけを楽しみたい人・筋トレだけを楽しみたい人はどちらもこのゲームを買いはしないだろう。ゲームとしてもフィットネスとしても楽しめるのがメリットの商品である。やれ、RFAを指さして「こんなに運動したいわけじゃない!」とか「ダンベル使ったほうが運動になる!」などと筋違いな文句を言う人は購入者にはいないだろうが、筆者はトレーニーであるからといって、このゲームをダシにウエイトの優秀性を説くつもりはないということだ。ゲームはゲームとして、その出来る範囲で全力で遊び、鍛えられる手段を探して楽しむのが健全というものだろう。

お待たせしました。

今回レビューしていくのは、大胸筋種目1つだ。

大胸筋トレーニングは「シンプル」というシンプル過ぎる名前の項目からエクササイズを選んで行った。

ところで、1回目のレビューということで、先に「リングコン」の感触に触れておく。これは固めのフラフープ(大きさは明らかに違うが)といった感じで、非常に頑丈につくられている。

正直、フルパワーで潰して「壊れちゃった♡」などとツイッターに投稿し、パワフルアピールでもしたかったのだが叶わず、頑丈さのおかげで財布も守られる形となった。

これを引っ張ったり押し込んだり、上下に向けてエクササイズとするわけだ。

なお、左足にはジョイコン(左)を装着する。これは見た目通り脚の上げ下げを認識しているのだろう。

さて、実際のエクササイズだが、まずは「大胸筋チャレンジ」(これ以上ないシンプルな名前!)をやってみた。

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これは、制限時間内に何回リングコンを押し込めるかに挑戦するエクササイズだ。

大胸筋チャレンジの分類

いきなり飛び道具的なものになるが「高強度インターバルトレーニング(以下、HIIT)」とするのが妥当だろう。

「HIIT」を簡単に解説すると、「短時間の爆発的な運動と緩やかな運動を交互に数セット行う運動」である。中でも「TABATA」と呼ばれるメソッドでは、20秒の爆発的運動と10秒のインターバル(休息)を交互に8セット行う(一例であり、応用もある)。これは、数分の間に全力を出し切る運動であり、心肺機能の強化、運動後酸素消費量の増加において有酸素運動や筋トレを凌ぐ非常に優秀なトレーニングだ。やれ、酸素がどうのと言われても興味がない人が殆どだろうから、ここでは噛み砕いて、「体力向上・脂肪燃焼に有効なエクササイズ」とでも言っておこう。

なお、「爆発的運動」とは、短距離走のような、瞬間的に全力を出す運動を想像してもらいたい。

「大胸筋チャレンジ」が「HIIT」である所以だが、まずは、短時間(たしか20秒だったか)の運動であること。そして、リングコンを押し込んだ回数を競う性質上、爆発的に反復することになる点。

「短時間のうちに爆発的な運動を行う」ということで、HIITの要素を持っていることがおわかりだろうか。ただ一点、これはゲームなので、セットを2回、3回と繰り返すにはそれなりの操作が必要だ。このゲームには自分でセットを組める機能があるので、それが利用できるかもしれない。

なお、「有酸素運動」としてはかなり短時間であり、「筋トレ」としては刹那的に高回数を求めるのは不適切であるため、これらの分類ではないと判断した。

大胸筋チャレンジの有効性

さて、HIITとしては、「筋トレ的な」負荷は必ずしも必要ではないが、身体が全力を出し切るためにはある程度の強度が必要となってくる。

強度を求める場合、このエクササイズには問題があり、普通にやっていては物理的な負荷の軽さを埋められない。そして、これは後に紹介する「ストイック大胸筋」にも共通する。

ただし、工夫すれば通常のプレイ以上の負荷を筋肉に与えることは可能である。

問題点を指摘し改善案を示す前に、大胸筋の様々な役割の中からひとつ紹介しておこう。それは、横に伸ばした腕を前へ持ってくる「水平屈曲」という機能だ。「横へ突き出した腕を閉じる」と言ったほうが分かりやすい人もいるだろう(なお、肘は曲がっていても関係ない)。

自宅で記事を読んでいる人は、ちょうどアルファベットのTの字になるように両腕を横に伸ばし、そこから最短で「前ならえ」のポーズに持ってきてほしい。腕を横にしているときは大胸筋が伸び(ストレッチ)、前ならえのポーズに近づくにつれ収縮していく。これが「水平屈曲」だ。

「ベンチプレス」というエクササイズは、筋トレに詳しい人でなくとも知っているだろう。ベンチに寝転がって、胸の前に構えたバーを上下させる運動で、「水平屈曲」を利用しているエクササイズである。バーが胸に近づいた状態では、腕は横に広がり、バーを胸から離していくと腕は身体の前方へ向かっていく。

ウエイトトレーニング、もとい筋トレとは、対象の筋肉の動き(働き)に負荷をかけながらを果たしていくものである。大胸筋のトレーニング種目は必ず大胸筋の機能に沿ったものだし、それは広背筋だろうが大腿四頭筋だろうが原則として変わらないということだ。

さて、では大胸筋チャレンジの動作をおさらいしてみよう。前述の通り、このエクササイズはリングコンを押し込む動きをする。有効性の解説なので、もっと細かく言うと、「身体の前に構えたリングコンを外側から内側に向かって押す」動きだ。

「水平屈曲」の動きを思い出して(すぐ上なので読み直して)ほしい。これは、横に伸ばした腕を前へ持ってくる動きだ。この動作の、ほぼ最後の動きが「大胸筋チャレンジ」と一致するのがわかるだろうか。

つまり、「大胸筋チャレンジ」は「水平屈曲」の一部の動きを行うエクササイズということだ。

問題は、「一部の動きを行う」という点にある。

運動による筋肉への負荷は、筋肉の収縮と伸展の幅が広くなればなるほど増していく。最大限に引き延ばされた状態から、もう縮まないというところまで収縮させれば最高だが、そういったエクササイズは少ない。多くは、そこそこの収縮と伸展を行う「ミッドレンジ種目」、最大収縮を狙えるが、最大伸展は望めない「コントラクト種目」、逆に、最大伸展ができるが、最大収縮はできない「ストレッチ種目」の3つに分類されることになる。

「水平屈曲」の場合、腕を横に持ってきた状態が大胸筋の伸展(ストレッチ)となるが、「大胸筋チャレンジ」はリングコンを身体の前方に構えるため、ゲームの指示通りにやると伸展はほぼ望めないということになる。もし、リングコンの直径より胸幅が短い人がいれば、リングコンを押し込んだ状態から戻す際に伸展するだろうが、いくら全年齢対象のゲームとはいえ無理がありすぎる。

構えの位置からして、腕の力も利用しやすく、既プレイの方の中には「先に腕が疲れてしまった」人もいるのではないだろうか。

まとめると、「大胸筋チャレンジ」は僅かな幅で収縮を繰り返すのみ、大胸筋に集中しきれない欠陥を抱えたエクササイズで、大胸筋への刺激としてはそれほど有効ではないと言える。これから提示する改善案を行わないならば。

大胸筋チャレンジを高度なトレーニングへ引き上げる

さて、「大胸筋チャレンジ」を改善するにはどうすればいいのか。そのポイントはやはり「水平屈曲」の意識にある。何度も繰り返すが、これは横に広げた腕を前方に持ってくる動きだ。

ならば、「大胸筋チャレンジ」を行う際、「腕を最大限に横に広げた状態でスタートし、身体のできるだけ前でフィニッシュすれば良い」のである。

具体的に解説しよう。

リングコンを身体の前に構えたとき、可能な限りリングコンを胸に近づけておく。自然と、腕が横に広がるはずだ。これで、大胸筋は伸展された状態になる。ゲーム内の指示通りに構えるより、遥かに伸ばされているのがわかるだろう。

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ゲーム内での指示はこのあたりだが、

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リングコンを広げつつ、しっかり身体に引きつけることで大胸筋が伸展する。

続いて、リングコンを押し込む動作の時は、限界まで腕を前に押し出しながら行うことで、(可能な範囲で)強烈な収縮を行うことができる。

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身体から離せば離すほど、腕の力を利用できなくなり、真に大胸筋の収縮力が試される。

このフォームで行えば、筋トレとしての有効性もかなり増すだろう。ゲームを持っている人は是非試してほしい。また、「身体にどれだけ近づける/離すか」によって負荷を変えられるといえるので、単純にゲームとして回数を稼ぎたい人は、なるべく楽になる位置を探してそこで固定してやるといいし、急にこのやり方をやると負荷がかかりすぎる人は、腕を前後させる範囲を工夫してみてほしい。

さて、いかがだったろうか。1回目のレビューとあって、ゲームそのものの解説もいくらか含んだことで、簡潔なものにはならなかったし、文も今一つ読みづらい部分があったかもしれないが、今後もこの調子でやっていくつもりだ。

今回はここまで。ありがとうございました。

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