お経の代わりに歌って送り出す

 作曲家・小林亜星さんが2021年5月30日に心不全で亡くなった。
ドラマ・寺内貫太郎一家で強烈なキャラクターを演じてた人が、アニメ・特撮ソングを数多く作曲してたのを知ったのは、幼稚園くらいだった。
『お前が歌ってる曲はこの人が作ったんだ』と親に教わったが、ちゃぶ台をひっくり返して西城秀樹と取っ組み合いの大げんかをしてる姿とはなかなか結び付かなかった。
結びつかなかったが、曲は身も心も染み付いている。
歳と共に曲は増える。
改めて、知ってる範囲で調べてみると....
あさりちゃん、宇宙大帝ゴッドシグマ、宇宙の騎士テッカマン、宇宙魔神ダイケンゴー、狼少年ケン 、快傑ライオン丸、怪物くん、科学忍者隊ガッチャマン、The・かぼちゃワイン、超電磁マシーン ボルテスV、超電磁ロボ コン・バトラーV、ドロロンえん魔くん、ハゼドン、花の子ルンルン、ひみつのアッコちゃん、百獣王ゴライオン、ファイヤーマン、プロゴルファー猿、魔法使いサリー、未来ロボ ダルタニアスなどなど....

テレビっ子だった小学生時分。
それはマックロクロスケな黒歴史。
クラスに馴染めなかっただけじゃない。
当時は担任にもいじめられてた。
夢も希望も見いだせず、絶望の淵の中で溺れていた。
そんな中で亜星さんの曲は心の支えだった。
基本的に暗い曲調はなかったしで。
どんなに救われたことか。
当時はよくぞ鬱病にならなかったと思った。
一歩間違えれば犯罪者にもなりかねなかった。
犯罪者にならなかったら死んでてこの世に居なかったかもしれなかった。
それを踏み止まらせたと言っても過言じゃない。
あの世の亜星さんからしたら、『そんな大仰な...』って思うかもしれないけど、亜星さん一人だけじゃないにしても、当時のアニメ・特撮ソングには本当に救われた。
よくよく聴き込めば曲には様々な要素が詰め込まれてあって、ジャズも演歌も歌謡曲や他の様々なジャンルの入門編みたいなところ、子供でも違和感なく馴染めて移行できる要素はあった。
そんなこともあって、カーステにはアニメ・特撮ソングは入っていて、ヘビロテにもなってるし、合わせて歌うこともある。
声を張り上げればストレス解消にもなるしで。

そんな日々を送る中で訃報を知る。
葬儀に参列するのは憚られる。
そもそも面識がないし、この御時世。
救ってくれた人の供養はしたい。
考えた末にしたのは、結局はいつも通りだった。
でも、違うのは小林亜星作品だけをかけて歌うことだった。
葬儀に参列できない代わりに、お坊さんを呼べない代わりに、自分が勝手に車の中でカーステをガンガンにかけて歌うことだった。
何とか今日まで生きて来れた感謝を込めて。
小林亜星さん、本当にありがとうございました。
明日も明後日もあなたが作った曲を聴き、歌います。
御冥福を心よりお祈り申し上げます。

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