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『フリーバッグ』に夢中になってしまった

「皮肉屋で性欲は強め、怒りに駆られ悲嘆に暮れる。」

皮肉屋で性欲は強め

皮肉屋で性欲は強め

って…こんな主人公の紹介、あるだろうか。でも本当にそうなのだ。それはもう開始3分くらいで明確なのである。

加えるとすれば、この主人公は、「めっちゃ嘘つく」、そして「盗む」。
なんでそんなことしちゃうのよ、っていう酷さにまみれているのに、
気がつけば目が離せなくなっている。

出会ってしまった、ものすごい、凄まじいドラマに。

FLEABAG というドラマをご存知だろうか。

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シーズン1・2まで出ていて、Amazon Primeで見ることができる。1回30分弱なのでちょっとずつ見てもいいし、一気見しても5時間くらい。私はといえば…やめられずに一気見してしまった。

Fleabag、フリーバッグとは、『みすぼらしい人、ノミがたかるような不潔な人』という意味合いのようだが、どういうわけだか主人公にはそんなあだ名が付いていて、正式な名前は作中一度も呼ばれなかった。

33歳のFleabagの振る舞いは、なんというか、得てしてヒドい。横柄でムチャクチャで、共感しづらいような傍若無人な振る舞いが続く。神経質な性格のお姉さんとのシーンでは、むしろお姉さん側の苦労に共感してしまい『もう、信じらんない!なんでこんな妹持っちゃったの!縁切りたい!』って見放したくなってしまうくらいである。

それでもFleabagの魅力にハマってしまい、ハラハラしながら見守り、シーズン1はながら見をしていたのだけれど。シーズン2が、とにかくすごい。ものすごい速度と引力で引っ張られて、私は気がつけばテレビの前で正座をしてハイボールを飲み始めていた。

気づけば怒涛の勢いで共感してしまっていた

彼女の傍若無人な振る舞いの裏には、大きな大きな喪失感がある。大事な親友を不慮の事故で亡くしていることは、シーズン1の早い段階で明かされてはいるのだが。シーズン2から、それ以上にもっと深く彼女の心に迫っていくことになり、彼女の失ったものの大きさを知ることになる。どれだけ大切だったか、どんな思いに蓋をして来たか、彼女や彼女を取り巻く人たちそれぞれのつらさまでもがどんどんと明らかにされ剥き出しになって行く。痛々しいとも言えるけれど、そこには不思議な湿っぽさがない。自身が強く蓋をしていた心が、丸裸にされていく。その過程に主人公が戸惑う姿を見て、急激に彼女への共感点が増えていくのだ。そしてみんな何かを決断して進んで行くし、その過程にはとにかく『笑い』があり『愛』がある。

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みんながみんな人間らしすぎて、笑ってしまうし泣いてしまう。もう、一緒に泣いてしまいましょうやっていうくらい、人間の芯を見せてくれてしまって、気がつけばキャラクター全員が愛おしくて、全力で応援してしまうのだ。シーズン2を見終わった時には、ここまで連れてきてくれてありがとう!!そんな気持ちになってしまった。

そしてすっかり見終わった後に、驚愕した。この主演の彼女が、この作品の脚本・製作をもつとめているということに。主演として圧倒的な存在感と輝きを放ち、美しいのに下世話でヒドい主人公にすっかり夢中になってしまう、それだけですでに女優として凄まじいのに。そんなすべてを手がけてしまっているなんて。

このドラマは元々、彼女、フィービー・ウォーラー=ブリッジの一人芝居から生まれたというから何重にも驚きだ。作中に印象的なもう一つは、主人公自身が視聴者に向かって語りかけるという、壁を超えた演出で。ストーリーが進むうちに劇中の会話の端々で、彼女は私たち視聴者に心の声やナレーションを漏らして行く。私は舞台は見ていないけれどそれも一人芝居から生まれている所以なのだろうか。

なんていうかもう。アマプラ契約している人はすぐに見てくれ。見始めたら、なんとか我慢してでもシーズン2まで辿り着いて欲しい。ひどいシーンも多いので、家族とかカップルとかで見るのにはあまりおすすめしない。一人か友達と一緒に見て笑って泣きましょう。久しぶりにこんなに全力でオススメしたい作品に出会った。


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