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病院(ケースワーカー)と生活訓練の施設(生活支援員)それぞれのやりがいや適性について。

頂いたコメントに、タイトルのようなご質問を頂きました。
ありがとうございます。

コメントいただけて光栄と思ったと同時に、「一言、二言で伝えるのは難しいな...」とリトルすまは心の中で呟きました。

ですが、こうして言語化する機会を頂いたので、少し考えてみようと思い記事にしました。

あくまで私見であることを先に述べておきます。
福祉の仕事に限らず、世の中にある仕事の多くは事業の内容や適性といった物差しだけでは計れない部分もありますし、それらは独立したものではなくて化学反応のように相互作用しているものだと思うので。

なるべく、事業内容という軸に特化して、他の要素を区別した上で見えてきたものを今回の記事での「やりがい」「適性」を言語化してみます。
そしてそれはあくまで、『すま』というフィルターと、私自身が身を置いた医療機関、施設の中でのお話しとなります。

コメントして下さった方の目にもこの記事が届いたら嬉しいです。



❶病院(地域連携室・医療相談)のケースワーカーのやりがい

「病院の代表である」というやりがい

 病院の事業の中心は当然ながら「治療」です。医療や看護を患者さんや家族、地域は求めている場所であり、その中ではケースワーカーは脇役かもしれません。
 ですが、実際に病院に行く前に、病院へ連絡することが多いと思います。
その時に、最初に出会うのはケースワーカーである精神保健福祉士になる病院が多いと思います(厳密には、医事課の方が最初ですが)
 アポなしで来た場合も、中には外来の看護師さんが対応するところもあるかもしれませんが、最初に話を聞くのはケースワーカーの場合が多いと思います。わたしの病院はそうでした。
 依頼を受けるのも私たちですが、依頼を受け入れられるかどうかの可否を伝えるのも私たちです。(可否はあくまで病院内での調整の結果であり、ケースワーカーの独断ではありません)可否に関わらず私たちの振る舞いが『この病院がどんな病院なのか?』知らない人たちにとっては物語るものとなります。
 そういう意味で、ケースワーカーは組織を代表、地域と病院をつなぐ窓口でもあると思っています。それは自分の意識次第ですがプレッシャーもありますがやりがいに繋がる部分でもあります。
”地域にとって相談しやすい病院として思ってもらえるように。”
”精神科への偏見も減らすことができるんじゃないか”
”病院から安心して暮らせる地域づくりに貢献しているだ”
と。

医療への入口だけではありません。
外来で通院している患者さんのことでもご本人や、ご家族、友人、関係機関の方から相談があります。
その時に病院自体ができることは限られています。時に私たちは電話をとっても治療を提供できるわけでもありません。それでも、病院というリソースを使って何が支援できるのかを考えます。
何もできない時もあります。でも、相手の立場に立って、何とかしようとする姿勢は自分次第で示すことができる。
実際にそれをどのように相手が受け取っていたかは知るよしもありませんが、「代表である」という思いは、頑張れる原動力の一つであったかもしれません。

「長期入院を減らしていくというmissionと、退院後の生活にも関われる職種

 日本の精神科医療において、長年問題となっている入院の長期化。
理由は様々ですが、問題なのは治療としてはひと段落しているが、社会的な要因で退院が躊躇される長期入院。
 子供の頃、社会というのは完成された世界だと思っていましたが、そんなことは全然ない未熟な世界だということを痛感します。その中で、治療を終えた患者さんがいかに早く退院できる環境を調整できるのか。住む場所に関する課題も生じやすいですが、人間関係の問題も根深いものがあります。また、退院できればいいというものではありません。患者さんの人生は退院後も続いていきます。
 少しでも患者さんが納得できる、希望が尊重された環境を調整すること。
永遠のテーマです。そういう大きなmissionを持っていることは大きなやりがいです。
 また、退院後の患者さんの生活においても、時々ネットワークを通じて情報が入ってくることがあります。病棟の看護師さんなどは退院後の患者さんの生活について中々情報が入ってきません。リカバリーしている患者さんの存在は大きなやりがいと言えるでしょう。
 もう一つ、医療機関において、唯一の福祉職として配達されているのが精神保健福祉士をはじめとしたケースワーカーです。医療機関という組織として果たすべき役割と、福祉職として立つべき視点は時に交わらない局面があります。そうしたジレンマを抱えると同時に、その唯一無二の仕事をしていると思うことができれば、やりがいにも繋がるかもしれません。

チームをつくって治療、退院後も含めたリカバリーを目指していく

 病院という場所は、実に多くの職員が働いています。職種も多職種が混在した場所です。
 立場も違う、入院している患者さんの接する面も異なる人たちが一つのチームとなり、1人の患者さんの退院を考えていく。現実は苦しいことも多い。(もちろん、1番苦しいのは患者さんです)だからこそ、患者さん本人も含めて、一緒に考えていく仲間と進めるケースがあるととてもやりがいがあります。
 立場が違うので時、それぞれが抱える責任も異なります。互いの領域に無知な部分もあります。そういうプロセスも含めてチーム作りをしていく過程もまた、大変ですがやりがいのある部分です。

家族支援の機会も多くある

 家族教室などを通じて、担当以外の患者さんのご家族と出逢う機会がありました。
抱えている問題や心の葛藤は、患者さんだけではなくご家族も一緒なのです。
それぞれ表出のされ方は異なりますが、初めてこういう場所に来て、普段話せない思いを口にできたという安堵感を言葉にしてくださることがあります。
 そんな場所をたとえ、一時だとしても提供できたことは大きなやりがいですし、ここへの参加をきっかけに、先生や看護師さんの雰囲気を知っていただき、治療に対しての理解や相談しやすいと思ってもらえるようになったらそれは患者さんにとっても回り回って良い作用が生まれてくるのではないかと思います。
 緊張もしますが、とてもエネルギーをいただける場所です。

❷生活訓練の施設のやりがい

”患者ではない” その人に出逢える 

 すまが生活訓練の施設に異動をして最初にインパクトに残っていたことの一つとして、これがありました。同じ人であっても、「病院」という環境では、どれだけオープンな関係になっていたと思っても、「患者」として過ごしていたんだなということを実感します。
 人が場面によって見せる顔が違うというのはすまも含めて、多くの人にとっても共通すると思います。家の中でのあなた。会社でのあなた。趣味のコミュニティでのあなた。1人の時のあなた。
 『そんなの当たり前じゃないのさ』というお叱りのツッコミが来そうですが、その当たり前をすまは分かっていませんでした。そのことを痛感したのです。

 わたしが以前担当させていただいていた患者さん(Aさんとします)を法人内の生活訓練の施設を利用できるように調整を行い、退院後はその方に利用してもらっていました。時々、施設の担当者さんから、その方について相談をいただくのですが、話の中で聞くAさんと、すまが病院で出逢っていたAさんは人物像に乖離があるのです。ずっと違和感を感じていました。
 その後に、Aさんがまだ利用されている時期にすまが異動し、生活訓練の施設の職員となるのですが、実際にAさんと接点が増える中でようやく、施設担当者さんの言っていた人物像とのギャップが埋まってきたのです。

 そういう意味では、本来地域で生活をする時に見せるご本人と出逢えるというのは、生活訓練の施設に限ったことではありませんが、病院以外の場所だからこそ出逢えるその人かもしれません。これは時に戸惑うところでもありますがやりがいでもあるところです。

「生活」という誰にとっても共通だけれど共通ではないテーマを仕事にできる難しさの中にある面白さ。

 生活訓練。言葉通りに言えば「生活」できるように「訓練」していくという場所になるのでしょう。生活は一人一人違います。あなたとすま。あなたと友達でも違います。こんなに正解がないものを訓練する場所です。
 なんと烏滸がましいのでしょうか苦笑
そんな中で、生活訓練とは有期限のサービスであり、利用者さんは「自立したい」「一人暮らしをこれからはしていきたい」等の明確な利用目的を持っています。
一人一人の正解があると思います。この方にとっての生活とは何だろうか。大切にしたいことは何だろうかということにも思いを寄せる。
 それが継続可能なものであれば良いのですが、生活とは続けていくものでもあります。また、生活は本人だけではなく、社会という環境の中で個々の生活が存在しているわけなので、切り離すことはできないものでもあります。
 どれも大事なことです。利用者の思いを尊重しつつも社会と切り離せない部分があることや、続けていく上では利用者さんにも体験してもらったり知ってもらったりする必要があることもあります。これらを擦り合わせていく作業は容易ではありませんが、面白いところです。
 また、支援者という衣を剥げば、地域で生活する人であります。わたし達自身が生活している中で経験してきたこと全てが生活訓練の内容や個別支援において素材になりえるというところも大きな魅力です。
 日々の暮らしにもヒントがあり、病院以上にそのことを活かせる場面が多いでしょう。

人のストレングスや変化していく様子を近くで感じることができる

 病院のケースワーカーは、比較的「面談」や「会議」などの話すこと聞くことを中心に添えた関わりの場面にどうしても限局されがちな仕事です。もちろん、入院中に外出を一緒にしたり、そうではない場面もあるのですが。
 生活訓練の施設では一定の期間、日常的に同じ空間で時間を過ごすことが増えてきます。訓練をする上では当然ですが、利用者さんの既に発揮できている力や、今は眠っている力、これから発掘していく力、失ってしまった力。こうしたものを言葉は適切ではないかもしれませんが様々な場面を通じて評価し、一緒に課題設定をしながら行います。その中でその利用者さんのストレングスにもふとした時に出逢います。これを見つけられた時の喜びはひと塩です。
 利用を終了する頃に、どうなっていたいかの目標を前において、定期的に利用者さんとその道筋を模索していく過程は、やりがいの一つです。

オーナーシップを発揮しやすい

 これは、生活訓練の施設に限ったことではないですが、病院はやはり大所帯です。たくさんのピースで成り立っていますし、主役は医療。
 福祉サービスの事業所は小規模です。そして、病院のようにある意味で「先生」という絶対的な存在がいません。より一人一人が責任者です。支援やサービスの質の向上、施設として何を大切にするか、経営に対して、小規模だからこそ、現場の一人一人の意見や姿勢が、ダイレクトに利用者さんや地域に現れます。
 小規模だからこそ、フレキシブルに、柔軟に施設が果たせる役割を創造しながらサービスを創り出していけるような感覚は、面白いところではないでしょうか。
 施設運営という少し離れた視点からも話してみます。誤解を恐れずにいうと、病院のケースワーカーの場合、自分たち自身が診療報酬等で算定できるような支援というのはあまりありません。診療報酬というのは別の視点で言えば、行なった行為に対して、国が定めたものではありますが価値が点数化されているものです。その中に精神保健福祉士が直接的に関与できる項目は多くありません。
 つまりどれだけ患者さんのために頑張っても、行なったことに対しての分かりやすい指標として支援に値段はつかないのです。これは、1人の労働者として自分を見た時には、切ないところがないかというとそれは嘘になります。
 福祉サービスでも同じような仕組みで行なった支援に対して単価が決められています。福祉サービスを行なっているのは、私たちのような精神保健福祉士をはじめとしたコメディカルなスタッフです。自分たちが何もしなければ算定できませんし、算定をしてもらうためには、期待されている支援を利用者さんに届けることが必要です。極端に言えば定められている支援をしなければ当たり前ですが、施設は運営できなくなります。利用してくださっている方々を路頭に迷わせることにもなってしまいかねません。上手くいかなくなった時、防御は薄いです。事業を続けていくために、一人ひとりの責任が伴いますが、労働者としてはやりがいに繋がる部分ではあると思います。


❸それぞれの適性について

 どちらも、やりがいのある仕事であることは間違いありませんし、精神保健福祉士としての理念はどこへ行っても同じです。そのことは前提として抑えたいところです。
 どんな場所に行っても大切だと思ったのは、1人で抱えすぎないこと。
そして、上手くいかなかった時に自分はダメだという考えと自分を同一視しないこと。すまはこのパターンに陥りやすいので、そういう時期はしんどかったです。
 上手くいかないこと、後悔すること、もっとこうできたんじゃないかと思うことはあります。振り返ることは大切ですが、どれだけ考えてもその患者さんや利用者さんとの時間は戻ってはきません。
 できることは、今、あるいはこれから関わる人たちへの支援にこの経験や思いを糧とすることだけです。

⚫︎病院(地域連携室や医療相談室)ケースワーカー
・良い意味で、切り替えを早くできる傾向がある人
・目まぐるしい速度感、情報の中でも止まらず行動できる傾向がある人
・院内で唯一の福祉職としてのアイデンティティを持ち続けることができる人
・担当ケースに関して個人事業主的なところがあるので、その感覚でできる人
・人見知りでも良いので、不特定多数の人との出逢いに興味がある人
・電話が苦手でも良いので、やってみたい人
・院内外の資源を有機的に捉える視点を成長させたい人
・医療の中でのケースワークに興味がある人
・医療的なことも学んでいきたい人
・地域移行を医療から支援したいという思いがある人
・部署の外でチームをつくることが面白いと思える人

⚫︎生活訓練の施設の支援員
・1人の人に丁寧に向き合っていくことに興味がある人
・プログラムを運営したりクリエイトすることに興味がある人
・利用者さんと一緒に何かをしたい人
・日々の自分の生活を支援を生かしたい人
・施設を運営していくようなオーナーシップに興味がある人
・地域移行を受け入れ側で支援すること興味がある人
・多様な「生活」について考え続けることに興味がある人
・自分の個性を支援に生かしたい人
・部署内でもチームとして動ける人


今回の話はここまでにさせていただきます。とてもエネルギーを使いました。
まとまっていないことをお詫びします。
でも、アウトプットする良い機会をいただきました。
引き続き、精進していきます。
ありがとうございます。

医療相談室での経験は、こちらの記事でも書いたことがありますので、ご興味があれば目を通してもらえると嬉しいです。


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