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抜け殻のような君。

伝えられたのは、抜け殻のような言葉だった。つまらなさそうな景色に、君は見惚れている。

言葉だけ「愛してるよ」と、簡単に伝えてくれるけど。本当のところはどうなの?って聞きたくなったのは、それほど愛されてはいないように感じるからだ。でも、そんなことは気のせいで、「愛してるよ」なんて簡単な言葉が本当だったとすれば僕は、それを嬉しく思う。

何気なく君が見ていた視線の先に、僕も同じように視線を重ねてみて。でもそこに、なにも興味惹かれるようなモノが見えてこなくて。僕はずっと、つまらなさを感じてしまう。

行く宛もなさそうな君の視線は、いったい何処に向けられているのか。楽しいのかな?それを知ることができたら、君が何を思っているのかが、分かってあげられる気がした。

「ねぇ、なにを見てるの?」って、そう言った僕の言葉に。ようやく、気がついた君はこちらに視線を向けて「別に、なにも」と、一言だけ返してくる。

なにも。そう言われたって、何もない景色を眺めていて、何か思うことはあったのだろうかと疑問に思うんだ。君の放った、"なにもない"と、どうでもいい景色を表現した言葉は、なぜか僕にさえ当てはめる言葉に思えるんだ。君は、ここにいて。僕を前にして「どうでもいい」って思って。なにも感じてないのだろうかな、って。

僕は考えすぎなのかもしれないが、君は何も気にしてはいない。もしかすると、こんな些細なことさえ、君の言った"なにもなく"気にもしないまま済ませられたのなら、僕にとっての幸せって続けられたのだろうか。

妙に、そうした君の態度から想像を膨らませて僕は、変に落ち込んでしまう。表情に出やすい僕は、こんな些細な事で不機嫌は顔に出してしまうのだけど。そうして不機嫌を表すと、何も分からない君がいつも機嫌を取ってくれようとする。何を間違えたか分からないのに謝って、いつもの通りの風景に戻そうとしてくれる。

そうして謝られると、僕が悪いみたいじゃないかと思って。でも、その謝罪の言葉にさえも、思いなんて籠められていなかった言葉のように僕は受け取っていて。

どこかにあるかも不明な君の気持ちは掴めず、自分にはもどかしく分からない。でもいつも、大事なタイミングでの言葉だけは間違えないようしてくれて、響きのいい言葉だけは薄っぺらく伝ってくる感覚。僕は、君の純粋な言葉の中に、嫌な本音が雑音として聞こえてしまう癖がある。

何もない景色を眺めていた、どうでもよさそうに浮かべていた君の無関心な表情は、僕にも向けられていたように感じてしまう。

君の見ていた、その景色には、何かがあったんだろうか。その景色を表すような、僕らの恋人の形に、何か思うことはあってくれたんだろうか。

恋人と、表現できる形だけど。君は形だけを整えるみたいに、崩さない。崩れそうになったら、何故か君は元に戻そうとはして。嫌われてはいないけど、好きでもなさそう、見栄えだけを整えた。人間関係を支えるよう維持する君は、ほんとは僕のこと好きでもなんでもないでしょ。そうした君の態度を察してしまうと、僕達の関係なんて、形だけのある中身はない二人のように。

幸せってなんなのだろうか。君にとっての幸せって一体、何?本当はこの場から、居なくなりたいだとか、思ってそうな君が、僕を手放さないのはなんでだ。何かを気にしているからだろうか。ここにいたところで、君は幸せになることはないんだろう。

この関係が終わったら、君は悲しむのだろうか。いや、きっと悲しみはしないように思えてくるのは何故だろうか。

一緒に居ても楽しくはないけど、手放したくなるほどのものではない。それが君にとって、僕に対するの感想で、それが君にとっての幸せなのだろうか。

それか、僕は君にに気を遣われてでもいたのだろうか。もしかすると、僕に気を遣って、ずっとこの関係を、続けていてくれていたのだとすると。僕は、なんて傲慢で無関心な奴なんだろうと思ってしまう。

君の本音はわからない。分からないから、物凄く頭の中では考え過ぎてしまう。

この恋人だという関係は、君の配慮の上で成り立たされているように思う。恋人だとか、なんだとか、そういう気持ちだとか、こんな関係は、僕が求めていた在り方ではなくて。僕にとっては、つまらない景色を眺めるようなもので。

視線を変えるように、僕が君に「さようなら」と言った時。君は当然のように引き留める事もなく、何も言わなかったけど。

それが、君の本当の言葉だったんだろうね。

君は、本当にどっちでも良かったのかも。

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