公募戦士たちに捧ぐ記録:その5 模擬授業は自己アピールの場

いよいよ当日実施する模擬授業の準備をする段階に至ったあなた,ぜひ頑張ってください。模擬授業には各大学の指定,領域ごとの違い,等々の各種固有性も関係しますので,そこについては本記事では扱いません。

模擬授業は面接とは異なり,唯一こちらから好き勝手になんでも喋ることができる時間です。ある意味,面接よりもアピールしやすい時間ですので,自分の強みがしっかり伝わるような模擬授業を設計しましょう。
この連載で何度か言いましたが,模擬授業&面接(特に模擬授業)の時間であなたの研究力はあまりみられていません。それは,書類の段階で十分に伝わっています。そこを勘違いしていると,さして工夫のない,いわば「よくありそうな」授業をやって,ますます通知をもらうという憂い目にあうのです。

(工夫のない)チョーク&トークは落ちに行くようなもの

俗にいう「チョーク&トーク」,つまり立て板に水を流すように教員が一方的にダラダラと喋る授業は,自らアピールのチャンスを潰すようなものです。あなたはその授業科目をやることが可能な人物であると(ほとんどの場合)見なされているわけですから,「私は何の工夫もなくダラダラ喋る,教育とかやる気のない人ですよ」と宣言するようなものです。
アピールしやすいのは,アクティブラーニング(AL)をやることです。ALがいいとは言いませんが(特にクソ文科省が言うものはクソです),その精神に見習うべきものはあります。そもそも,ALとは,アメリカで「大学生の学生が増えて,教員が喋るだけじゃ理解できないレベルの低い学生が増えちゃった・・・・しゃーないから講義を工夫したろ!」という経緯で誕生したものです(溝上, 2014, pp.25-41)。

(ノーアフェリエイトのはずです)
近所の図書館に1冊くらいあると思いますので,上記の本の25〜41ページくらいは暇つぶしに眺めてみるといいと思います。どうしてALが必要とされたか,という背景がわかると思います。
ALをやらないまでも,上記のような必要性は理解し,その対策を模擬授業に組み込む(そして採用後の授業に組み込む)ことは,非常に大切です。「金払って聞いてる講義を勝手に聞かない(理解しようとしない)アホな学生は知ったこっちゃない」というのはある意味正論ではありますが,それにしたところである程度学生を飽きさせない工夫をするべき(わざわざ飽きやすい講義をする必要もないでしょう)ですし,模擬授業で見せるべきはそうした工夫の数々です。
非常勤や現任校で授業をしている人は,普段の講義からこうした工夫を色々と試しておくといいでしょう。付け焼き刃はバレてしまいます。

最近だとALは(ブームも過ぎたので)以前ほど注目されず,ICTツールの利用度合いですとか,学生との双方向性なんかも見られています。やむを得ずチョーク&トークをする場合でも,こうしたツールの利用などで,「この授業は教員が喋るチョーク&トークでやらざるを得ないんだけど,工夫はしていますよ!」というアピールをしましょう。

余談:サンデル氏のALは実際には不可能

ALの典型例として見なされるのが,マイケル・サンデル教授の「白熱教室」的なアレです。

氏の講義は,賛否はあるとしても凄いとは思いますが,その舞台裏は意外と知られていません。あれは,少なくともかなり数多くのTAが,事前に予習・復習をきっちりやらせていて,しかも米国のハーバード大学という場所だからこそ成立する授業なのです。色々と参考資料はありますが,以下なんかは詳しいでしょう。

幸か不幸か,当該ページはGoogle Booksで垂れ流しになっているので,眺めてみるといいでしょう。読めばわかるように,少なくとも通常の日本の大学でサンデル氏のようなALをやることは不可能です。
(加えて,氏のご専門がALに適しているという面もあるでしょう)

ただし,大学の,特に上層部(私立に多い印象です)はサンデル氏のようなALをやることが正しい!サイコー!と思っているから,困ったものです。とはいえ,私たちは採用されるためにはその「困った」人たちにもアピールできるようにしなければなりません。

模擬授業に持っていくものはアピールのチャンス

稀に「何も持ち込むな」というケースもあります(私が最初に採用された時はそうでした)が,多くの場合模擬授業に必要なレジュメなどを持ち込むことは許容されています。場合によっては,向こうから要求されます。
これはチャンスです。最低でもその時間のレジュメは全て作成していくべきですし,場合によってはシラバス,その時間に使用するスライド,等々を(極端にならない程度に)しっかり用意しておきましょう。
模擬授業では,どう頑張っても授業の一部しか見せられませんが,授業全体として何を考えているかといったことを,より詳細にアピールすることができます。特に,チョーク&トークを選んだ(選ばざるを得なかった)人は,ここが工夫を見せやすいポイントになりますので,頑張りたい所です。

雰囲気は明るい方がいい

人間は印象に左右される生き物ですし,当たり前ですが審査する側も人間です。明るい声と顔,質問しやすそうな雰囲気を作ることは,面接官の心象をよくすることにつながります。特に,全く専門が異なる面接官にとっては,この「雰囲気」も非常に重要な要素です。
意外と忘れがちなのは,きちんと間をとることでしょうか。どうしても,用意してきたものをアピールしたいがあまり,詰め込んだような講義になってしまうことがあります。コミュニケーションを成立させるためには,間もかなり重要ですよ。

ただし,明るくするといっても「(学生に)馴れ馴れしい」とか,「口調が砕けすぎていてパワハラ味がある」などはNGです。この辺の匙加減は,経験あるのみです。非常勤をしている人は,一度自分の講義をビデオで撮影(または録音)して見返してみましょう。存外,講義の雰囲気というのは講義者が思っている通りになっていないものです。

模擬授業のどこをやるか?

模擬授業の指定では,多くの場合講義のどの時間をやるかは指定されていません。設計した模擬授業で最もアピールできる箇所を選んで実施しましょう。また,特定の場所をやるよう指示されていた場合は,そこにアピールできるポイントを詰め込みましょう。

一般的には,授業の冒頭がおすすめです。授業の目標・全体像・具体的な内容などを喋りやすく,あなたの教育に対する姿勢が表れやすいからです。間違っても「出席確認」などはせず(すっ飛ばして結構),あなたの強みを詰め込んだ模擬授業を展開していきましょう。その際は一言,「授業全体の冒頭,XXXを意図した箇所をやります」のような説明を入れると親切です。

時間制限を厳守することも大切です。面接官が声をかけてくれる(ことを予告する)ケースもありますが,面接官に止められるのはあまり褒められたものではありません。
事前の練習も大事ですが,本番だと大体思った通りにはならないので,時計をしっかり睨んでおきましょう。筆者はApple Watchの利用で(タイマー機能があり,アラームが音ではなく振動なので)模擬授業を乗り切りました。この辺りは各自の好みでいいと思います。

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