Nanashi_Dr

どこかの国立大学の准教授です。

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奨学金の返済免除申請書に見るJASSO(日本学生支援機構)の底意地の悪さ

珍しく大学公募関係ではない投稿ですが,余りの酷さに辟易としたので書き殴ってみます。 とある大学院生(Aさん)は事故によって障害を負ってしまいました。 Aさんは学部自体から奨学金を借りていたので,障害による返済免除の申請を行うことにしました。しかし,身動きが自由ではない上に本人の身寄りがないことから,(遠慮がちに)私にいくつかの申請の補助を頼んで来ました。 JASSOによる奨学金といえば実質の学費ローンだとか何だとか色々言われて問題の多い制度です。が,多くの学生にとってはこ

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    • 公募戦線:業績が高ければいいわけではない

      そろそろ来年度の公募が見え始めましたね。 多くの若い方にも,是非将来を切り開いて頂きたいところです。 とある若い方に,「業績は同世代と比べて十分過ぎるほどあるのに,面接にも呼ばれないんです」という悩みを相談されました。確かに業績は十分で,外部資金もしっかり取っている優秀な方です。それでも,私の大学にこの方が応募してきたら面接には呼ばないだろうな・・・と思いました。 この悩みは割とよく相談を受けますし,多くの方々がnoteに記載しておられます。が,ここで新年度を前に改めて書

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      • 査読システムは生き残るか?

        https://www.mext.go.jp/content/20231114-mxt_kibanken01-000004257_01.pdf 上記リンクのような通達が文部科学省から出て,早速各大学で通知されています。要約すると「査読はきっちりやろうね」ということです。念頭にあるのは,福井大学の事例だと思われます。こちらでは,要するに自作自演の査読をしていた,ということです。 こうした自作自演の査読がダメなのは当然ですが,一方で完全に防ぐことは難しいです。福井大学のケース

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        • 大学教員のお財布事情:ホテル代で家計が死ぬ

          大学教員が研究をするに際しては,学会などの用事であちこちに出張(業界用語では旅行)する必要があります。最近はオンライン学会も見られるようになりましたが,ぶっちゃけ学会は学会発表以外の人的交流が目的で行く場なので,オンラインで参加する意味はそれほどないと思っています(だって,研究成果についてはみんな論文で発表しますからね)。じゃあそのお金ってどこからでるの?という疑問が沸くと思いますが, ①大学から支給される研究費 ②科研費 ③科研費以外の研究助成金 ④自腹 のいずれかから

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          公募戦士に捧げる給与+収入の実態と注意点

          ずいぶんと間が空いてしまいました。 最近,研究者界隈の給与の話が話題になっています。 本noteでも次のような記事を書きました。 夢をぶち壊すようで申し訳ありませんが,特に国立大学の研究者の給与は安いです。 いえ,額面だけ見れば決して悪くはありません(上記記事では35歳で地方大学は600万円程度,都市部では650万円程度が想定されていると書きましたし,筆者の体感と概ね合致します)。しかし,最初のYahooの記事でも指摘しているように 1)基本的に就職が遅い(40歳で初め

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          公募戦士への海外就職のススメ(給与編)

          本noteは特にテーマが決まっているわけではないのですが,若い研究者を目指す人に向けて書くように努めております。「公募」と言った場合,ほとんどの場合日本の大学を指すわけですが,(内部にいる人間としては非常に言いにくいですが)昨今の我が国の国立大学事情はあまりよいものとは言えません。その理由はいろいろありますが,今回は「懐事情」に絞ってみようと思います。 国立大学30代後半准教授の懐事情 そもそも,明治・大正あたりの本を読んでいると「学者は貧乏」というイメージで描かれること

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          公募戦士への海外就職のススメ(給与編)

          「東京科学大学」の名に見る日本の科学研究は当面二流のままである理由

          東京工業大学と東京医科歯科大学が合併する、という話が昨今の国立大学界隈ではホットトピックスです。どちらも、我が国を代表する大学の一つですから、「あのクラスの大学でも合併するのか(つまり、より小さな国立大学は・・・)」と取るか、「素晴らしい大学が出来る(大学の大規模化)」と取るかは、人によるんじゃないかとおもいます。 今回話題にするのは、こうした合併そのものの是非等ではなく、新大学の名称(仮)です。東京科学大学とする方針のようです。大学名に「東京」がつくのは地理的にいいとして

          「東京科学大学」の名に見る日本の科学研究は当面二流のままである理由

          公募戦士たちに捧ぐ記録:その6 面接次第でコネさえも覆せる

          コネを覆す唯一の可能性,それが面接 みんなが気になっている「コネ採用はあるのか?」問題。結論から言えば ありまぁす() ・・・これだけではあまりにも味気ないですが,あるかないかで言えばあります。 ただし,コネと言っても多くの方がイメージするのは,特定の(主に有力者の)先生に「ボクのお世話になった○○先生のお弟子さんがポストを探しているんだ,一つよろしく頼むよ・・・」と頼まれて採用する。あるいは,「(面接官の)教え子に職を用意してやろう・・・そうだな,あいつの経歴と資格

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          公募戦士たちに捧ぐ記録:その5 模擬授業は自己アピールの場

          いよいよ当日実施する模擬授業の準備をする段階に至ったあなた,ぜひ頑張ってください。模擬授業には各大学の指定,領域ごとの違い,等々の各種固有性も関係しますので,そこについては本記事では扱いません。 模擬授業は面接とは異なり,唯一こちらから好き勝手になんでも喋ることができる時間です。ある意味,面接よりもアピールしやすい時間ですので,自分の強みがしっかり伝わるような模擬授業を設計しましょう。 この連載で何度か言いましたが,模擬授業&面接(特に模擬授業)の時間であなたの研究力はあま

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          公募戦士たちに捧ぐ閑話:なぜ,A氏は採用されたか?

          閑話として,ある公募の話をしましょう,今から数年前の出来事です。 その公募で面接に呼ばれたA氏は,業績的にはその業界の並程度の方でした。人格的な問題はありませんでした(ここでは社会常識が決定的にないとか,そういうレベルではないという程度の意味です)が,模擬授業は最低に近いレベルでしたし,面接官全員の心証は決して良くありませんでした。私自身,面接していて「この人,本当に真面目に準備したのか????」と何度考えたかわかりません。また,人事委員会でもそのような懸念が繰り返し表明さ

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          公募戦士たちに捧ぐ閑話:なぜ,A氏は採用されたか?

          公募戦士たちに捧ぐ記録:その4 模擬授業の案内は熟読せよ

          この記事に興味があるあなたは,無事に書類審査を突破した(しそうな)人でしょう。おめでとうございます。ほとんどのケースで,面接+模擬授業に呼ばれたあなたは「採用してもいい」と思われていると理解してください。採用されるまでは,後一歩です。 近年の公募では,多くの場合(筆者の知る範囲では100%)模擬授業を課すことが多いです。多くの公募戦士を悩ますのがこの「模擬授業」ではないでしょうか。 正直,模擬授業に関しては上のお2つで十分と言えば十分すぎるくらいに書いてくださっています。敢

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          公募戦士たちに捧ぐ記録:その3 本当のことは書かなくてもよい

          前回の続きで,書類の書き方のポイントです。 繰り返していることにつながりますが,概ね「嘘をつくのはアウトだが,本当のことは書かなくてもよい」ということと,「門外漢にもわかるように書く」という2点が重要になってきます。 そしてその背後にあるのは「あなたの書類は誰が何のために読むのか考えよ」という,文章の基本のキなのです。 嘘をついてはいけない 当然のことですが,公募書類に嘘を書くのは倫理的にも,場合によっては法的にもアウトです。 上記は最も極端なケースで,博士号を偽造して

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          公募戦士たちに捧ぐ記録:その2 書類書きは「意中の人をデートに誘う」つもりで

          書類の「書き方」は意外と大切 大学教員公募への応募に際して,様々な書類を提出する必要があります。 書類の「中身」,より具体的に言えば研究業績,教育歴,etcが大切だというのはあちこちで見かけますし,実際に一面では正しいです。 一方で,少なくとも面接に呼ばれる or 呼ばれそうという応募者の「中身」は,概ね実力伯仲の状態になってきます。こうなってくると,「中身」をどう「見せる」かという,公募書類の書き方も非常に重要になってきます。 上記のリンクはまさに「やってはいけない」こ

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          公募戦士たちに捧ぐ記録:その1 優秀な人が面接に呼ばれるとは限らない

          はじめに博士をとった人間にとって,大学教員のポストをゲットするためのプロセス・・・いわゆる「公募」と言うのは,非常に重みのある重要な問題でしょう。私自身,某国立大学でいわゆるテニュア持ち(任期無し雇用)で教員をやっていますが,獲得までには紆余曲折がありました。 おまんまが食えるかどうかの瀬戸際ですから,公募に際しては一喜一憂。ついついあれやこれやとググってしまいます。 しかし,世の中には公募の情報は溢れているようで意外と少ないものです。それは,大学が色々な意味で世間の常識か

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