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ガラスの棺の中身はどこへ?  英語のジョークを AI翻訳してみた

言語ビッグバン講座が始まって数日後、別のジョークを DeepL 翻訳にかけてみた。

DeepL で英語のジョークをもう一つ訳してみました。

原文はこれ→ 
Glass coffins... will they be popular?  Remains to be seen.

このジョークは remains に「ご遺体」という意味があることと、「今後の展開が待たれる」という意味合いでよく使われる It remains to be seen という慣用フレーズの知識があることが前提になっている言葉遊びです。

英語で pun と言います。

これを DeepL で日本語訳してみたのですが、左側の英語のウィンドウに単語を1つ1つ手で入力していくと、その都度、右側の日本語訳が変化していく様子が面白かったので、ご紹介したいと思います。

DeepL の左側のウィンドウに英語の単語を入れるたびに右側の日本語が変化する様子がわかるよう、変化があったらそこで投稿を改める形で紹介していった。

Glass coffins ... will they be popular?

ここまで入力した時の DeepLの日本語訳は→

ガラスの棺……人気が出るか?

でした。

2つめのセンテンスの Remains to be seen. の最初の単語 Remains を1つだけ入れ、少し待ってみると、DeepL はそこまでの情報だけで考え、日本語訳を表示する。

Glass coffins ... will they be popular?  Remains

Remains という単語1語を入力した時の DeepL の日本語訳は→  

ガラスの棺……人気が出るか? 遺品

AI は、前の文脈から Remains を「遺品」と認識して訳したことがわかります。

左側のウィンドウには前半の Glass coffins ... will they be popular? というセンテンスを残したまま、その後に Remains を1語入力しただけで、右側のウィンドウに「遺品」という日本語訳が表示されたのだ。

英語のウィンドウへの入力を続け、Remains の後に2語めの to を入れます。

Glass coffins ... will they be popular?   Remains to

すると、右側の日本語訳が変わり、このようになります→ 

ガラスの棺……人気が出るか? 遺体を

AIが、Remains to の to を頻度の高い「〜(の方角)へ」と認識し、Remains を棺の中に入れる「遺品」ではなく棺に入った「遺体」と認識を変え、そのご遺体をどこかへ移動させるという結末を予想して訳しているのがわかります。

前置詞の to は〈どこかの方へ〉〈どこかの場所へ〉という文脈で使われることがとても多い。だから DeepL は当たる確率の高い日本語訳を考えて「遺品」から「遺体を」へ訳を変えたのだろう。

英語の入力を続け、3つめの単語 be までタイプします。

Glass coffins ... will they be popular?  Remains to be

すると、ここで右側の日本語訳は→ 
ガラスの棺……人気が出るか? まだまだこれから

と変わりました。

この段階で AI は Remains が「遺品」や「遺体」ではなく、It remains to be seen の一部であると認識したことがわかります。

DeepL は It remains to be ... というフレーズの知識があり、その知識をもとに Remains to be という不完全なフレーズをその一部として認識している

私は、DeepL の仕組みのテクニカルな説明はできないので擬人化して「考えている」「予想している」「知識があり」「認識している」と書いた。

コンピューターが頭脳のロボットが考えているイメージだ。

英語原文の最後の単語 seen をタイプし、ピリオドを打ちます。

Glass coffins ... will they be popular?  Remains to be seen.

日本語訳はこのようになりました→ 
ガラスの棺……人気が出るか? まだまだ、これからですね。

It remains to be seen という慣用フレーズとして確信したということですね、DeepLさんは。

表現はこなれていますが、remains を二重の意味に認識してジョークとして理解できる人間の知能にはまだ及びません。

擬人化したついでに「DeepLさん」と思わず「さん付け」までしたが、ここまでよく頑張った、という敬意のような感情が湧いていたからだと思う。人間には及ばないが。

ちなみに、この言葉遊びは、It remains to be seen の it が無いからこそ、成立しています。

また、Remains to be seen を「(棺がガラスだから)ご遺体が目で見えます」という意味合いで認識する人間の知能は、Remains are to be seen の are を無意識に補って処理しています。

そこで、元のジョークには(当然)無いのですが、左側の英語のウィンドウの Remains to be seen の Remains の後に are を補ってタイプしてみると、

Glass coffins ... will they be popular?  Remains are to be seen.

DeepL の日本語訳はこうなりました。→ 
ガラスの棺……人気が出るか? 遺品は見てのお楽しみ。

Remains の認識が「遺品」に戻り、DeepLさん、これが製品・商品のプロモーションであることも理解して、いっしょうけんめいに訳していますが、物が物だけにちょっと不謹慎な感じになってしまいました。

最後にわたしは、次のような「おまけ」を付けた。

おまけです。人間の頭でこのジョークを翻訳したものをご紹介します。

「新製品、ガラスの棺桶の試作品です。いかがでしょう?」
「おお、今後ブレイクするかね?」
「いや、ガラスだけにブレイクはまずいですね〜」
「うーむ。シースルー棺桶といっても、お客さんにスルーされるのも困るぞ。売り上げの見透しは?」
「不透明です。あ、いえ、透明ですけど…」

私という人間の頭で翻訳したものだ。

ジョークは笑ってもらってなんぼ。語数は原文から大幅に超過したが、翻訳でもジョークになっていることが最優先だ。

すると、田原真人さんから返信があった。

いやー、いろんな知識が次々と結晶化してくる様子がすごいです。あ、ガラスだからアモルファスか。

さすが物理学専攻だった田原さん。ちゃんとオチを付けて返してくれた。
文系にはもしかして通じないかな…って思われたかもしれないが、私は「アモルファス」という語を知っている。 Certified Technical English Writer (技術英検プロフェッショナル)だから。

私は田原さんにこう返信した。

コメントありがとうございます。無定形結晶ですね。

*記事中に引用した DeepL の翻訳は 2021年8月当時のものです。DeepL は日々進化中のため、現在は結果が異なる訳が表示される場合もあります。

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