夜に鳴く鳥
東京に来てから一番お世話になっている先輩の、初ワンマンライブにお邪魔した。
賑やかな商店街を抜けてお店のドアを開けると、いつも私が見ている彼女とはまるで別人みたいな彼女がそこにいた。
触れたら壊れてしまいそうなくらい繊細なのに、真っ直ぐに私の心に刺さってくる強い歌。全身にぐっと力をいれていないと涙が溢れそうだった。色々な出来事を経験した彼女が、あの時、あの場所だから歌える歌。
名残惜しさから帰り道に音源を聴いたけれど、そこにはさっきまでの彼女はいなかった。
歌を聴いていた時に感じた気持ちを言葉にしようとしているけれど、どうしても上手くいかない。
夢中になれる音楽を見つけた時はいつもそう。
好き、素敵、かっこいい、エモい、良い、これ以外の言葉が私の中から消えてしまう。間違ってはいないけれど、軽い。それに浅くて、ちゃんと伝わっている気がしない。
かといって、言葉にしようとするとありきたりで陳腐な言葉しか出て来ない。本人によかったと伝えたいけど、気持ちを上手く形に出来なくてもどかしい。次々と溢れ出てきた感情達が行き場を失って大渋滞を起こしている。
彼女と話していると悩んでいることとか、考え方が自分と似ていると思う事が多い。彼女の歌が刺さるのは、私が言葉に出来ていない事をちゃんと形にしてくれるからかもしれない。
自分の思いを言葉で紡ぎ、誰かにちゃんと伝えられるようになりたくて私は文章を書き始めた。もし、彼女に刺さるような言葉を生み出せるようになったら、物書きとして成長したと胸を張れるかな。
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