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東京事変、再生。

 私が彼等に出逢ったのは高校生の時。周りの音楽好きな友達がこぞって「良い」とおすすめしてくれていた。最初は、「椎名林檎がいるバンド」という認識しかなかった。彼女のバックを演奏する固定メンバーのようなものだろうと。でも、聴き始めて一瞬でその認識が間違っていたことを知った。
今でもはっきり覚えている、最初に聴いたのは「今夜はから騒ぎ」。YouTubeでMVをみた。


 なんだこの格好良い集団は。私の心は撃ち抜かれた。あんなにバラバラな衣装を着てるのになぜあれほどまとまっているのか。あれは東京事変という存在そのものを表しているように感じられた。強烈な個性を持つ5人がそれぞれの個性を殺すことなく、一つのものとしてまとまっている。もう奇跡じゃんこんなの。ずるい。ずるすぎる。
から騒ぎから東京事変という存在に出会った私は、見れる限りのすべてのMVを見た。見終わった時にはもうどうしようもなく東京事変の虜になっていた。

師匠のベース。ものすごく安定していて、「僕は何もしていないよ」みたいな顔をしているのにごりごりに主張してくる。最高。なんでそんなに動くのに安定するんですか。
はたさんのドラム。一見シンプルなリズムパターンなのに、簡単に再現できない。どうがんばってもあなたのようなグルーヴ感が出せない。
わっちの鍵盤。色気がすごい。彼が低音でコーラスに入ってる時は毎回意識が飛びそうになる。耳が幸せ。
浮雲のギター。本名でギターを引いている時のあなたとはまるで別人。尖りに尖った「浮雲」というキャラクターで奏でる音は甘く深く、脳内を侵していく。
林檎さま。可愛い、格好良い、純粋無垢、お茶目、アダルト。あなたはこの世にいる全ての女の子の感情を理解して、それを体現できるのですか?曲ごとにもう同じ人とは思えない。

 多分並大抵の人が林檎さんと一緒に演奏すると、彼女に食われてしまうと思う。それを彼等は軽い調子で彼女の歌を丸め込み、自分たちの音に混ぜ合わせる。林檎withメンズという感覚は秒で無くなった。むしろ自由奔放に演奏している彼等をまとめる唯一の方法が林檎嬢の歌だと認識するようになった。

 高校生の私にとって、彼等は少しアダルトすぎた。札幌に住む私からしたら物語の中にしか存在しない「東京」という街を生きる彼等。世界の酸いも甘いも知り尽くしたようなフレーズ、前衛的なMV、色んな経験が入り混じったサウンド。その大人っぽさがまた魅力だった。ただの田舎の高校生も彼らの曲を聴いている時は自分が世界から認められているような気がしていた。起きているとき、音楽聴ける時はずっと事変を聞いていた時期があった。楽しい時も落ち込んでいるときも、彼らは私の生活に直接干渉してこようとはしない。生活の事を歌っている歌詞も、直接は生活のことを歌わない。押し付けがましくない。

 だけど、夢中になったときにはもういなかった。脳天をマシンガンで打たれたくらい衝撃だった。なんでもう見れないんだ…この気持ちはどこにぶつければいいんだ…。そう思って色々調べてるうちに見つけた解散表明。

「我々はもう使命を果たした。さらばだ。」

 何それ。格好よすぎる。解散まで完璧にプロデュースしてるなんてもう何も言えないよ。分かった。解散は認める…。でも!私は諦めないぞ。ただならぬ関係のMVに2016年の紅白、あらゆるところに散りばめられた復活の伏線。これは…もしかしてもしかするともう一度「東京事変」が見れるかもしれない…!可能性があるとしたら閏年。もっと言えば東京オリンピックの開催される2020年。もし、再結成しなくても、生で(伝説の紅白は留学中で見れず。話を聞いて爆死するかと思った。)、自分の目で、5人が一緒に演奏している所を観れるならば!彼等の音楽を全身で浴びれるならば!私の人生に悔い無し!その日が私の命日になってもいい!そう思って生きてきた。

 そして、2020年1月1日00:09「2020年は閏年です。」の一言とともに彼等は再生した。同時に解禁された新曲「選ばれざる国民」。それぞれのソロの音楽とは明らか違う、東京事変が確かにある。こんなに興奮して寝れるわけがないでしょう。

 新曲を聴きながら勢いで、ここまで書いた。現在01:30。まだまだ寝れそうにない。ああ幸せだ。まさか本当に再生するとは。ファンクラブにはさっき入った。CDも絶対買うんだ。これからライブも発表されるだろう。私の死ぬ日は近いかもしれない。

   2020年1月1日 布団の中より

ーーーーーー

追記(2020年3月5日)


イベント等の開催自粛要請が出てたくさんのライブが中止になっている中、東京事変はライブを決行して、再生した。

彼等がライブをしてくれて、再生してくれて、本当の本当に嬉しい。ライブのチケットは全滅だったけど、東京事変というバンドの時計が再び動きだしたことがたまらなく幸せ。

でも、だからこそ、本当に彼等に申し訳なく思う。

今の状況でライブをすれば世間から批判されることは痛いほど分かっているはず。だけど、全国にいる私みたいな東京事変ファンは、復活した日から、もっといえば2012年2月29日の解散した日からこの日をずっとずっと待ち望んでいた。ライブのチケットが外れた私でさえ浮き足立つくらい心待ちにしている再生の日。それを、2・3日前に「やりません」なんて言われたら多分私は発狂していたと思う。
ライブが無ければ発狂するファンが少なくない。こういうやらざるを得ない空気を作ってしまってごめんなさい。

ライブ会場はサーモグラフィーや、消毒液、スタッフのマスク等、出来る限りの対策がされていたと聞きました。この短期間で、さらに品薄の中、準備するのは本当に大変だったと思います。

何より、ライブを決行させてしまったせいで東京事変を悪くいう人がたくさん出てきてしまった。非国民、犯罪者、テロリスト。私達の事を思ってライブしてくれたあなた達が心無い人達だと思われている。悔しくて悲しい。

「なんで東京事変がそんな風にいわれなきゃいけないんだ!」

そして、悔しさが転じて怒りがうまれた。強い言葉で責められた私達ファンは同じくらい強い言葉で相手を叩き返してしまった。攻撃されたら負の感情は大きくなる。強い言葉は誰かを不快にさせてまた別の火種をうむ。

今誰よりも悩んで、苦しんで、苦労して、傷を負っているのは、間違いなく東京事変のメンバー。
そんな状況で「こちら」側で起こっている無用な争いは、さらに彼等の負担になる。考えなきゃいけない問題を増やし、謝罪させ、マスコミの好奇にさらさせ、さらなる批判をうける。

本当にごめんなさい。謝っても謝りきれないです。

東京事変は2003年に結成。確かその時は林檎さんの音楽のスランプをどうにかするため、そしてCDの売れ行きが落ち込みはじめた音楽業界で何か面白いことがしたい。という風に、東京事変はやるべきことをはっきり自覚しているバンドだと思っている。実際に2010年代頃から音楽シーンの風向きは変わり、動き始めたタイミングで「やるべきことはやった」と解散。
なので、今回の再生にも絶対に理由があるはず。彼等には今やるべきことがあるのだ。それが今回のごたごたのせいで出来なくなる、難しくなることがなによりも辛い。

どうか、世間のノイズになびかれず、あなた達の思うように音を奏でてください。

(ファンとしてそのためのお金はいくらでも落とすので、私にお金を落とすチャンスを下さい。)

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