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お節介



家族がインフルエンザにかかっている人のツイートを見て、私が居ても立っても居られない様子に相方がくすりと笑っていた。

いらぬ世話を焼いてしまう私の性格はそうそう変われるものではない。
それでもかなり押さえているのである。
大抵の人はびっくりしてしまい、有難迷惑であるとわかっているので、なるべくやらないよう言わないよう関わらないようにと自制している。

そういう情報を見たとき、
「お大事に」「一日も早く快復しますように」
そうそう。このくらいにしておくのが人付き合いの中で大事なところ。
わかっちゃいるんだが!!!

「どうしよう。きっと感染して大変になるよ」
「そうだね。吸入剤を先に飲めれば発症しないよね」
「今だよね? 今がチャンスだよね? 今なら悪化しないで済むよね?」

相方の反応を見ながら、連絡取っていいかどうか判断をする。

「うーん。そうだね…」

大変な時に一方的な不躾なお節介で嫌われるかもしれない。
それでも、以前、私がインフルエンザに罹った時、相方がホームドクターのところで訊いたことを伝えることにした。

私のお節介は相方が一番身に染みている。

相方と出会った頃、私自身が最も大変な時期だった。
だから、横目で見ながらも「ここはスルーだ、ここはスルーだ」と自分を戒めていた。しかし、

……このままだとこの人死んじゃうかもしれない……。

そう思ったらついつい口と手が出てしまったのだった。

体重は40キロ台でガリガリに痩せていて、アトピーで皮膚や髪はボロボロ、顔色が悪いのを顔半分生やしたもじゃもじゃの髭で護摩化していて、タバコはヘビースモーカー、酒は毎日浴びるほど飲み、肉ばかりを食べ、スポーツは全くやってなく、病んでいる風貌だった。
そういう状態の相方をずっと見てきた人たちには、さほどおかしいものではなかっただろうが、私には病人に見えたのだった。
案の定、検査を受けさせてみれば、ガンはなかったが、あちこち異常値だらけだった。

今考えると、自分が立ち直るために最大級のお節介をやけるよう、相方は目の前に現れたのかもしれない。
それをすることで、私は救われたのではないかと思う。

だが、生活習慣を見直すということは並大抵のことではない。
意識改革から必要だった。
相方には、生きる気力そのものがなく、生きる姿勢がないと言っても過言ではなかった。だから、そんな状態であったのだ。
そこに踏み込むとなると、こちらも命がけである。
だから、その覚悟を決めて、私は火の中に飛び込んでいったのだった。

とにかく健康を意識させるためにはスポーツをさせて気持ち良く汗を流させることで、一緒にテニスができるようテニススクールに放り込んだが、指を骨折してしまい、ピアノを弾けなくなるような危険にさらすわけにはいかなく断念した。
軟弱すぎる身体に衝撃を受けたが踏ん張るしかなかった。
歌のレッスンでの腹筋と喉のトレーニングと、禁煙成功で、体重が増え始めた。
それより、皮下脂肪がつき、内臓脂肪が落ち、中性脂肪値の異常はすっかり正常値におさまり、血圧も正常になり、はらはらしていた動脈硬化や脳梗塞の心配は解消、貧血症状も改善された。

それで、随分と健康的になったのだが、それでも最近がっくり来たことは、尿酸値が再び異常値になってしまったことだ。
痛風発作からアルカリ性にする薬等を飲み続けていて、安定していた。
だから、尿酸値が上がったことは、食生活の再度見直しが必要ということだった。

尿酸が作られないようにする薬を飲むこととなり、強い薬を飲み続ければ、肝臓に負担がかかる。だから、なるべく食事で改善できるようにしていかなければならない。

一番抜けていたことは、牛乳である。
ヨーグルトとナチュラルチーズを毎朝食べているので、乳製品の摂取はそれで賄っていると思っていたが、足りていなかった。

「……おなか下っちゃうから……」

子供みたいなことをいう相方をじろりと睨み、飲ませる。
酒類の摂取ももっと控えなくていけない。
禁酒はストレスがかかるので、薄くして飲める方法で乗り切るしかない。

「とても六十過ぎには見えない!」

と相方が言われるたびに、肩の荷が下りたような気がする。
むくんでいた顔はすっきりとし、目の下のクマはなくなり、頬もふっくらとして、血色も良くなり、乾燥していた皮膚の状態もよくなった。
まあまあ、見映えはよくなってきたかな? とも思える。
だが、まだやり遂げたわけではなく、お節介を続けていくということだろう。

インフルエンザに罹ってしまった家族は、快復に向かっているようである。

よかったよかった、と思いつつも、次からは見て見ぬふりをするようにしなくてはと反省する。
人に迷惑をかけることになるのだから。

そして、このお節介癖を何か役立てる方法はないだろうか…。
と、ネットでボランティアの検索をするが、仕事との両立ができそうになく、悶々とする。
それよりも、今は創作時間を確保する方が先決である。

マズローでいうところの自己実現欲求なのだろうと思う。

どうしようもない。


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