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アパレル・環境負荷が高いと言われる理由②

(2021年5月13日の記事)

アパレル産業がなぜ環境負荷が高いのか?
それをもたらした市場環境とは何なのか?などについて考えます。

・アパレル・環境負荷の原因② … 環境負荷が高い製造工程

大きく分けて2つあります。
① 大量生産・大量廃棄
② 環境負荷が高い製造工程
この回では②環境負荷が高い製造工程にフォーカスします。

・ 環境負荷が高い製造工程

大きく分けてアパレルで使用される原料には2種類あります。
一つは、天然繊維。
もう一つは、合成繊維。
「合成繊維は地球に良くなさそう」
「天然繊維は安心だよね」
という声が聞こえてきそうですが…。

事例1 コットン

コットンは、インド・中国・アメリカなど、世界中で栽培されている植物から綿花を採取し、糸を生成します。
かつては日本でも栽培されていましたが、今日本のコットン農場はほぼゼロです。
綿花、栽培にはとても手間がかかります。
主な工程は以下の通り。
①タネを蒔く
  ↓
②肥料をあげる
  ↓
③収穫する

意外とシンプルなように感じますが、主に②と③の工程に面倒なポイントがあり、それを効率化するためにすることが、環境負荷を上げているのです。

コットンボール・綿花

②肥料
オーガニックコットンの場合は、化学肥料を使いません。
主に鶏糞などの有機肥料が使われます。
微生物などに土壌環境が左右されやすい、効果を出すのに時間がかかる、など、手間がかかります。
そこで登場するのが化学肥料。化学的に配合した化学肥料は、即効性があり、どんな土壌でも均一な環境を作りやすく、手間も少なくてすみます。
しかしと…

化学肥料を使い過ぎると、土中の微生物が失われ、微生物によって成り立っていた土中の生態系が崩れて、土の保水力や保肥力を失います。
また、施肥し過ぎた化学肥料は、植物が吸収しきれずに、地下水に流れて環境を汚染します。(東陽株式会社ウェブサイトより)

③収穫
花が枯れた後にできる綿のような部分を収穫します。
通常手で一つ一つ摘みます。
綿は雨に濡れると硬くなってしまうので、雨に当たらないようにタイミングを見計らうのが重要です。
しかし綿ができるのは、農場の枝が一斉に綿になるわけではなく、木によってタイミングが異なります。
そこで使用されたのが、「枯葉剤」です。
一斉に花を枯れさせ、収穫の効率をあげるのが目的です。
しかし「枯葉剤」には、がんの発症や奇形をもたらす毒性があり、それが地下水や河川に流れ出る可能性があります。
そんな環境下では、過酷な労働を強いる人権問題もクローズアップされました。

このような土壌汚染と人体への被害が問題になり、これら土にも人体にも影響を及ぼしやすい剤を使わない栽培プロセスを経た「オーガニックコットン」が注目されるようになったわけです。
天然繊維だからといって、環境負荷がないかというと、決してそうではない…ということです。

事例2 ポリエステル

ポリエステルは石油が原料です。
石油は様々な目的のために形を変えることができる素晴らしい原料です。
主にプラスチックやビニールなどの商品は、私たちの生活を便利にするものとして暮らしに欠かせないアイテムとなっています。
しかし石油由来の製品は一般的に土に還りません。
一見環境に悪そう…と思う理由はこれかもしれません。
使っている間は良いのですが、使わなくなったモノは土に埋めても分解されないため、半永久的にそのままの形を維持します。
今話題になっているマイクロプラスチックなどの海洋ゴミもその一環です。
焼却する際も、ポリエステルは高温焼却が必要であるため、天然繊維に比べて二酸化炭素排出量が多くなります。
製造過程でも、ポリエステルを染色するときには高温・高圧が必要であるため、ここでも他の繊維に比べて二酸化炭素排出量は多くなります。

アパレル全体の75%を占める合成繊維の使用率。
製造工程もさることながら、それらの衣服を使わなくなったときにどう処理するかが、大きな課題になっています。

・全ての原因は「効率化」と「コストダウン」

2000年以前、市場にむけて大量に商品を供給する必要があった時代。
そこでは誰もが「効率化」と「コストダウン」が最良の目標と信じて設定していました。
しかしそこには、地球環境への負荷を意識することはありませんでした。

「効率化」が既に必要ない時代。
それぞれの企業やブランドの存在価値が問われています。
-地球に優しい環境を作ろうとしているか?
-生産者の生活を守ろうとしているか?
-製品が安心・安全なものであることが示せているか?
こうした情報を「透明化」すること。世の中にちゃんと知らしめること。
今市場からは、このことが痛切に求められています。

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