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物語世界:映画ストリオティクス(3)

概 要

 語り要手と観客の間での物語テーマの議論には、ミュトスの一部、つまりトピックしか必要ではない。しかし、トピックではメストリアやエピソードが複雑に絡み合っており、矛盾や脱落(暗海)を含むため、線形の語りにそのまま用いることができない。それゆえ、語り手は、事前に、彼らの語りのターゲットとなる観客の興味と好みを予測し、その観客に適した有限で整合的な物語世界を確立しなければならない。

 物語世界は、必要充分な最小のものに絞り込まれる。このために、語り手は、ターゲットとなる観客の知的関心を引き付けるトピックジャンルを選択するが、ここでは、矛盾を解決し、暗海を補填する仮説も許容される。また、語り出しをする語り手は、トピックの選択やトーンの色付けだけでなく、オーサージャンルとして、品質保証によってもターゲットとなる観客を引き付ける。

 心理的な共感は、観客の協力を得るためにもっとも重要である。これは、観客のオネイラとのトーンの適合によって達成される。物語世界のトーンは、世界の設定であり、因果の公理システムである。オネイラの四象限と同じく、それらはドラマコードや悲劇コード、喜劇コード、不条理コードに分けられる。


もくじ

2.0. はじめに

2.1. 観客の想定
    2.1.1. 神話から物語世界へ
    2.1.2. 語り手のプレマーケティング
    2.1.3. ターゲット観客とジャンル

2.2 トピックジャンルとオーサージャンル
    2.2.1. トピックと物語世界
    2.2.2. トピックジャンル
    2.2.3. 物語世界のミステリー
    2.2.4. 著者ジャンル

2.3. トーンジャンル
    2.3.1. トーンジャンルと観客のオネイラ
    2.3.2. 世界公理システムとしてのトーンコード
    2.3.3. ドラマトーンコード
    2.3.4. 悲劇トーンコード
    2.3.5. 喜劇トーンコード
    2.3.6. 不条理トーンコード
    2.3.7. コミュニケーションの場としての物語世界

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