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キエフバレエ・ガラ

キエフバレエ・ガラ、京都公演は特別な公演だった。京都は日本で唯一のキーウの姉妹都市である。

特別にウクライナ駐日大使のご挨拶があった。
今日は祇園祭の後祭であり、祇園祭が開催された事を寿がれ、京都のキーウへの支援に謝辞を述べられた。

「おおきに」と。

それを受けて京都市長の挨拶。温和に謝辞を述べられた大使に対し、紋付袴姿の市長は京都とキーウの縁のお話をされた。キーウにある立派な枯山水庭園のある「京都公園」2kmに及ぶ桜並木。

そして京都市出身でキーウにバレエ留学なさり、キエフバレエ副芸術監督の寺田宜弘先生のご紹介、そして50年間キーウと京都の交流を進めて来られた寺田バレエアートスクールの高尾美智子先生のご紹介。コロナ禍の中においても、キーウ市長とのネット対談や交流を深められたお話があった。

そしてキッパリ「ロシア軍の即時撤退、キーウに穏やかな日が戻ることを願う。」と毅然と述べられた。

京都はキーウと言う素敵な姉妹都市を持っている。
どうかこれからも末永い友好と支援を、とおもうとが熱くなってしまう。

肝心の公演の話だが。
一面のひまわり畑を背景に舞われる「ゴパック」は花冠の民族衣装がとても愛らしい。明るく優しい舞踊である。

「ラ・シルフィード」のパ・ド・ドゥはシルフィードが可憐かつロマンティック。軽やかな妖精の仕草が足先から爪先まで満ち満ちている。

海賊第二幕より「花園の場」は、馥郁と薫る花園の中、どこまでも可愛く、とても綺麗。群舞の美しさをこれでもかと見せつける。

この公演の白眉は「瀕死の白鳥」であろう。
登場した時からどう見ても白鳥の美しい舞姿である。
白鳥の羽の儚さ、手折られたかのように傷ついた翼の有様を表現する、その腕は超絶技巧である。悲痛な美しさ。その倒れ伏す姿は国難を受け危機的状況であるウクライナ、キーウの芸術文化、誇り高き歴史の姿のようで、その姿には戦禍に傷ついたキーウの人々の姿が重なってしまう。どこまでも繊細で美しく、悲しい。

キエフバレエを言い表すとしたら、典雅、心優しい美しさ、だと感じた。

歴史に裏打ちされた、誇り高く品格のあるバレエ。
古き都の典雅なバレエである。


祇園祭の鷹山の196年振りに、眠りから覚めて飛翔する鷹のように、戦火から復活し後祭の殿で凱旋を告げる大船鉾のように。芸術は、それを護り継ごうと懸命な人々は、戦火や厄災に打ち勝つのだと祇園祭は証明している。
キーウの人々、ウクライナの芸術もきっとそうである。

キーウが美しく穏やかな日々を取り戻せるよう。
苦難を乗り越え舞台に立つダンサー、芸術家たちに祝福が訪れるように。

祈るように姉妹都市の舞台の幕は降りた。

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