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2020年ベスト本5選



 2020年も残すところあとわずかとなりましたが、今回はここで2020年に読んだ本で個人的にすごくすごく好きな本たちを5つの賞に沿って紹介します。今年は自粛期間もあり年間で24冊(たぶん)読んでおりましたので、その中からセレクトしました。

 そして、今回ご紹介する5つの賞は、【タイトル回収秀悦で賞】、【作者の才能が光ったで賞】、【後味悪いがそれが最高で賞】、【THE・正統派で賞】、【こんな恋がしたいで賞】の5つになります。絶妙なネーミングの賞になりましたが、お時間ある際に軽く見ていただければ幸いです。



【タイトル回収秀悦で賞】

 クジラは歌をうたう / 持地祐季子


【あらすじ】

結婚を控えた拓海は、12年前に死んだ転校生・睦月のブログが更新されていることに気付きます。周囲の人々は誰かのいたずらだと言いますが、拓海は睦月からのメッセージではないかと疑います。拓海は睦月の死後も、ずっと睦月のことを思っていたのです。

ブログの謎を解くために、拓海の婚約者や幼馴染たちを巻き込んだ、夏の冒険が始まります。

 


 タイトル回収がすごい…!!って本になかなか出会わないですし、タイトル回収すごいから見たい!ってなかなかならないんですけど、このタイトル回収された時の鳥肌凄かったです。声出ました。

 作者の方が映画の脚本家されてる方らしく、脚本家の人の作品読んだことないな~と思ってたんですけど、脚本って文字が映像になる前提で書かれるものなので、この本もそのまま映像が頭に出て来る感じですごく読みやすかったです。そして、舞台が沖縄で、晴れた空、夏の海!って感じなので爽やかな情景と切ないストーリーのマッチが最高でした。普段あんまり読書しないけどせっかくだから読んでみたい…な方にめちゃめちゃおすすめです。

ストーリー自体は割と王道な雰囲気はあるのですが、タイトル回収でぜーんぶ持ってかれたそんな小説でした。



【作者の才能が光ったで賞】

 ベルリンは晴れているか / 深緑野分


【あらすじ】

総統の自死、戦勝国による侵略、敗戦。何もかもが傷ついた街で少女と泥棒は何を見るのか。1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。



 2019年のミステリー賞総ナメにした作品です。本屋さんでずっと見て気になってて、でもハードカバーか…とずっと葛藤しておりましたが読みたすぎて購入。本当に買ってよかったですこれは…

舞台が第二次世界大戦後のドイツ。海外を舞台にした作品全然読んだことなくて割と抵抗あったんですが、そのスケールの大きさに逆に感動というか、それが好きだというかなんというか。ミステリー小説であるのは確かなんだけど、ミステリーの一言で表せない何かがありました。

 第二次世界大戦後、ドイツも日本と同じく敗戦国の一つなので苦しい生活をしている市民の様子とか敗戦後の国の情勢とか細かく描かれていて、とにかくとにかく作者の才能が輝いていました。丁寧な情景とか優しい表現とか細かな描写がこのストーリーをもっと面白いものに仕上げていました。これを読む前と読んだ後じゃ見える景色が全然違いますが、割と早読な私で5時間かかったのでお時間ある方是非手に取ってください。



【後味が悪いがそれが最高で賞】

 殺人鬼フジコの衝動 / 真梨幸子


【あらすじ】

十数人を殺害した罪で死刑になった伝説の女、通称“殺人鬼フジコ”。彼女は、11歳のときに起こった一家惨殺事件のただ1人の生き残りだった。悲劇を乗り越え新しい人生を歩もうとしていた少女は、なぜ稀代の殺人鬼と恐れられる悪女へ変貌したのか。フジコを知るある人物の遺した記録小説という形で、謎と悲劇に満ちたフジコの一生を描いていく。



 私的今年のイヤミス大賞堂々の第一位でした。もともと後味の悪い、"嫌なミステリー"と呼ばれるイヤミスが大好物な私ですが、イヤミス女王の湊かなえの既刊をほぼ読み終えてしまったのを受けて、そろそろ新しい作家さんに手を出したいなと思っていた頃でした。この作品との出会いは突然で、本屋さんで毒々しい表紙とタイトルに惹かれて、手に取りました。

 ストーリーは明るく楽しいシーンなんて全くないと言ってもいいほど、重くつらいシーンが続くものですが、言葉のパワーがすごくてそこに引っ張られ、久々にイッキ読みした作品でした。不安な気持ち、嫌な気持ち、人を殺す気持ち全部表現されてて、本が私を離さなかった。それくらい強い力がありました。

ミステリー初心者にはおすすめ!なんて決して言えないですが、イヤミスがちょっとでも好きな方なら絶対虜になる作品です。



【THE・正統派で賞】

 推し、燃ゆ / 宇佐見りん


【あらすじ】

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し——。



 2020年芥川賞候補作品の一つです。この作品つい一昨日くらいに知ったばかりなのですが、私の行動力も相まって昨日購入。そしてすぐ読破でした。

 「推し、燃ゆ」という語感と、表紙とサイズ感がなんとも可愛くて衝動買いしたのですが、 芥川賞候補作ともあって、少し感じてはいたのですがやはり不思議な作品でした。ですが正統派!!

 フツウが難しい主人公と、フツウであって欲しい大人たち。そして燃える推しと、辛い日々。辛い日々は続くけど推しがいないと推しを背骨とする"私"もいなくなる。こんなタイトルでこんなあらすじだけれども、正統派な純文学で少しずつではあるがちゃんと前に進んでいるいい作品だなと感じました。推しを推す"やばい、好き"の気持ちの言語化がされていて、21歳とは思えないほど繊細な表現でした。是非推しを推すみなさんに読んで欲しいです。



【こんな恋がしたいで賞】

 流浪の月 / 凪良ゆう


【あらすじ】

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。
再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。



2020年本屋大賞受賞作。この物語を恋と表していいのかすごくすごく迷いましたが、辞書で調べると、「特定の人に強くひかれること。また、切ないまでに深く思いを寄せること。」と記述がされていたので、恋ということで一旦は落ち着きました。

 でもこの作品に登場する2人は、それぞれにとって恋とか愛とか男だから女だから、小さい頃一緒に過ごしたから、その時間が幸せだったからということでは表せない存在であり、だけどここに残っていたものは、確実に沢山ある愛の形の中の一つだと感じました。

 はじめの色の描写がとても綺麗で、子供の頃はなんでもどんなものでもキラキラして見えていたなと思い出しました。作中、こんなに言葉を丁寧に扱っていることに驚いたし、一つ一つの言葉が胸に刺さる大きな力を持った言葉が多くあり、そして、大切な人と過ごす時間ってこんなにも優しくて尊いものだったのだな、と表現や主人公の描写から伝わってくる綺麗で切ない作品でした。

 生きるのはつらいし、人生は思うようにならないし、周りの人は型に沿えと言うし、楽しいこともあまりないけれど、でも自由を探して、求めてもう少しだけ生きていようと思えました。自由になりたい人とか、大切な人の意味を今一度考えたい人に是非見ていただきたいです。





まとめ

 いかがでしたでしょうか。普段ミステリばっかり読んでいるので偏りがあったかなとは思いますが、どの作品も共通して綺麗な表現だったりとか、ストーリーとしてすごく深かったりだとか読んで絶対後悔しない5選にはなりますので、お時間ある際、年末年始の間でも是非手に取っていただけたら嬉しいです。

 未読本たくさんあるので2021年もしっかり読書に励みます。今年もありがとうございました。



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