若草色の便箋、シルクのリボン。

拝啓、春光うららかな季節となりました。
巡り巡って、幾度目でしょう。
あの時から、随分が経ちました。
貴方は私を覚えているでしょうか。
貴方が私を覚えていても、
私は貴方を忘れるつもりです。
時間が解決するなんて何を馬鹿なことを、と以前は
思いましたが、それは決して虚構や欺瞞ではなかった。
ようやく恋を忘れられそうです。


『拝啓、春光うららかな季節となりました』から始まる手紙は若草色の便箋に9行、細々と綴られています。『ようやく恋を忘れられそうです』と締めくくられ、シルクのリボンが同封されていました。

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