泥濘の夜
濃紺の天鵞絨が如き天蓋を睨み付け、息を吐く。
まだ夜は明けない。暗い天蓋は当たり前の顔をしてそこにいる。重苦しい濃紺と、少しの綺羅星。太陽の気配は何処にもない。息を吸う。噎せ返るようなような夜のにおいに嫌気が差す。
夜は苦しい時間だ。そう思う。暗く、何処までも深く、果てがない。そして、恐ろしいくらいに静かだ。
その暗闇に救いを見出す人もいるだろう。だが、自分は逆だった。
静寂は自分の中の声を大きくする。自責を、ありもしない被害妄想を、夜の静けさはそっと育て上げる。そうして、育った黒々としたそれらは、眠りを何処かへ放逐してしまう。
その果てにあるのは疲弊と、申し訳程度の泥のような僅かな眠りだ。
夜は、苦しい。
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