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心優しいたい焼きおじさんとの話【ハイエース暮らしの旅日記】

この生活を始めたばかりの頃。
寝るスペースも収納スペースもなかった私達はホームセンターでベッドキットの代用品を探していた。
丈夫であること、適切なサイズであること、工具も時間もないので作業工程が極力少ないこと、自分たちの手持ちに見合ったかわいい金額であること。
これらを考慮した結果「そうだ、ラックを倒して板を上にのせよう」となった。普通はならない。

我が家は、というかレオさんは思い立ったら吉日タイプ。やりたい事が見つかった時、無理だを無理じゃないにするための努力ができる。
今回もそうだ。
家にあるものだけでなんとかようとしていた私達は旅に必要なものを一切持っていなかった。
そしてそれを揃えるための十分な資金があった訳でもない。
また仕事についてもぼんやりとしか決まっていなかった。
レオさんと対極思考の私は内心ひやひやしていたが一緒になって我武者羅に行動した。※文句を言いながら。

そうこうしているうちふと思った。
「あれ、なんとかなってるもしない...」
案ずるより産むがよしとはこのことである。
今後は何においても諦める前に一旦やってみようと思った。教訓。

どこでどんな暮らしをしていたとしても理想を求めたらきりがなく、常に何かしらの不満はあったようなか気がする。
だったら家で退屈な日々を過ごすより毎日ワクワクできるこの暮らしも悪くない。※代償は大きい。

初めはお風呂に入れないとか、公衆トイレは嫌だとか、化粧はどこで落とすのかなど、不満は沢山あった。
しかしいつしか私の脳はそれら全ての不満を「通常運転です」に変換できるようになっていた。人間の適応能力侮るべからず。

物に関しては代用品を探せばいいし、理想に近づけるための地道な努力は案外楽しい。

出来るか出来ないかで諦めるより「どうしたいか」が1番大切だということに気づけた29歳。
30歳を目前に私の小さな器は少し成長した。嬉しい( 'ω' و(و

話は戻るがベッドキット代わりのラックと大きな板を手に入れた私たち。

大変迷惑な話だがホームセンターの駐車場が空いていたので隅でラックを組み立てることにした。

警備員さんが私たち目掛けて向かってくる。
無理もない。
ホームセンターの駐車場で組み立て作業する家族などなど聞いたことがない。
誰もが注意されるんだろうなと思った。

しかし警備員さんは作業している私達の前までやって来ると「車で旅か、いいね」といってなにやら紙袋を手渡した。
中を開けるとほかほかのたい焼きが4つ入っている。
小雨が降る寒い日だった。
手は悴み、嫌気がさし始めていた所に現れた突然のほかほか。
悴んだ手は勿論、心も温まった。

人の気持ちに寄り添った行動ができる人、困っているときに助けられる人は素敵だ。
警備員さんは正にそれができる優しい人なんだろうなぁと思う。尊敬。

お陰で我が家に寝るスペースと収納スペースが出来た。
ホームセンターを出る前にもう一度お礼とお別れのご挨拶に行こうとしたが、その警備員さんは既に退社済み。素敵かよ....。

こうして何かに向かって頑張っているとそれに賛同してくれる方や応援して下さる方が少なからず居る。
案ずるより産むが易しの精神はこんな根暗な私にも素敵暮しと素敵人との出会いで強引にハッピーをねじ込んでくる。
まだまだなりきれてはいないが私もその人達のように人の気持ちに寄り添い、困っている人がいたら手をさしのべられる優しい人間でありたい。

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