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「いちゃもん」感想②

「いちゃもん」感想①  はこちらから


実体験の時はもちろんのこと、
映画の後でも読書の後でも、
何か面白いものを見たり、感動したりした時は
頭の中で、見た映像と
その時の自分の感覚を再上映しながら、
細部を観察したり、
違う視点から眺めたりしてみる癖が私にはある。
この、「上映モード」の時は、途中で邪魔をされたくないので、
一人で集中できる場所に篭りたくなる。

劇場を出て、少し歩き、頭を空っぽにしてから
じわじわと、
鏡が現れてからの
あの、最後の数分間の、再上映を始めた。

最後の数分間は、観れば観るほど見どころがあって面白かった。
普段は、
客席から役者を見る視点、の一つしかなくて、
それぞれの「役」の視点からの考察はあるものの、
「私」が分裂することなどほとんどない。
しかし、
あの瞬間、何かがフリーズし、いろんなものが乱反射した。

客席に座っている自分から鏡を見る視点。
鏡に映っている自分から客席を見る視点。
役者を見る自分。
自分を見る役者。
そしてそれらを俯瞰した視点。

第四の壁が壊れて、
「舞台」と「観客席」の
区切りがなくなっただけで、
こんなにも視点が分岐するなんて。
自分の心の琴線に触れる痛みにチクチクしながら、
考察の糸口を探してカメラアングルを夢中でぐるぐる動かした。

でも、色々と視点を変えたところで、
結局は自分だ。自分でしかない。
自分の中の自分を色々な階層から眺めているだけ。
それは自分にとってはとても興味深いけれど、
とっても個人的なエピソードで、個人的な体験だ。
はてさて、ただそれだけなんだろうか。
最後の瞬間に意識が向いてしまっているけれど、
本当のメッセージは本編にあるのでは?

「さぁ?どうだったんでしょう?」
「椅子に座って1時間、何もしないで見ているだけなんて」
「ひまわり!」
「だけど、お見せできないのです」
「私、死んでいるの」
「誰にでも貸す、というわけではないんです」

衝撃のラストシーンから、
フィルムを巻き戻すように、
印象的なセリフがフラッシュバックしてゆく。

「1時間、座って見ているだけなんて」
「つまんないんじゃないですか?」

繰り返されるキーワード。

「どうでしょう?」

「一つじゃ、つまんないですよね。」

「展、って、なんだかたくさんある感じ。」

「広げて、並べる。」


ドヤ顔で手を広げる役者たち。
ジャーン!!!!



「演劇展。としようと思うんです。」



その瞬間に、カチッとパズルがはまったような感じがして、
思わず声に出して笑ってしまった。


そうか。「演劇展」か。


そういえば、舞台は画廊か何か、ギャラリーだった。
あの巨大な鏡は、見ようとすれば、
壁にかけられた絵のようにも見えなくもない。

あの瞬間、
あそこに映し出されたのは
紛れもなく、
「1時間、何もしないで見ているだけ」をした姿。
そして、一人ひとりが
それまでの人生経験に基づく、
超個人的な感情に縛られる、という
究極の体験の真っ只中の姿。
それが、
これでもか!と、こちらを向いて並んでいるのだ。
まるで展示されているように。
一人ひとりが違う物語。
でもそれは、それぞれの心の中に繰り広げられている物語。
だからお見せできないのです。

そうかー。「”演劇”展」かー。

1時間、ただ、じっと座って見ているだけ。
それが演劇。
違和感を味わうもの。
それが演劇。

これまでの人生に、あんな違和感、あっただろうか?
強烈に意識してしまう。
なのに目を逸らしてしまう。
自分の姿なんて、普段見慣れているはずなのに
何か、普段は光が当たらないところに、
サッと光が当てられてしまった。

そこに見えたものは
自分だろうか?
それとも、
それを見ている自分
の方が自分なのだろうか?

1時間、じっと見ていただきましたが。
どうでしたか?つまらなかったですか?
あなたがつまらないと思って見ていたものは
この、鏡に映ったものと、何か違いはありますか?

そんな風に、問いかけられたのかもしれない。

どうだろう、
解釈は色々、考え方も色々あるけど
意地悪に解釈するなら、そんな捉え方もありだろう。

そう、考えた瞬間に、
このお芝居に対して抱いていたモヤモヤが
スーッと晴れたような気がした。

勝手なものだ。
見えない、わからないと不快になって
わかった気がするとそれで満足する。
それが真実かどうかはわからないのに。

それでもとにかく、
霧が晴れたように、
そこからやっと、記憶の中のキャラクターたちが
命を持って喋り始めた。

********** ③ へつづく
「いちゃもん」感想③


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