英語では、雪上の足跡とは、何を意味するのか。コレは、真っ白でバレる前に消失してしまう嘘の事を謂います。

雪の上では明白な足跡も、降雪後、溶けてしまう。 ありもしない事を事実と肯定して他人を騙す行為を「雪上の足跡」と言うのです。

例えば、詐欺師が自分の過去を凄く飾って話したとしても探偵でも雇わない限り、分かり得ない。コレを、雪上の足跡、後には表面から消えてしまう足跡、と言うワケである。日本語で言う、絵に描いた餅、であろうか。

この言葉は、アメリカの大ヒットドラマ、LAW & ORDER:  CRIMINAL INTENT 原語版 で、出てきた表現である。ニューヨークに実在する凶悪犯罪課メィジャークライムの刑事達の日々の犯罪との闘いだが、このドラマでピックアップするエピソードは、毎回、社会で実際に起こった事件だ。

このエピソードでは、フランスで実際に発生した事件をヒントに作られている。異常人格症候群により、家族や恋人、友人を次々殺してしまった男の話。

あらすじは、下記の通りとなる。

父親から過大評価されて普通以上に大きな希望を持たれて育ったジェイクは、学門も、仕事も、大したことが出来ない男だった。だが、嘘だけは旨かったと見えて、大学を卒業出来なかったジェイクは、気が付くと、当初は見栄張りの両親を喜ばせるだけの為に、高校以降の学歴や職歴を全て作り上げていた。親は息子を信じており、疑うことも無かった。ジェイクは、就職について、また騒ぐ父を背後に、その作り話をさらに発展させ、大学はコロンビア、イエールで国際関係を修士として学んだ、博士号は経済学エコノミクスで、今、もう国連で長い間働いている、と言う内容で周囲の人達を周到に騙していた。彼は、計算すると、過去、20数年を大嘘で固め通し、家族、周囲の人達を騙し通していたのだ。

ジェイクは、朝早くに自宅を出ると、8時ごろから日によって分別した近くの農園でベンチに座って新聞を読んでいた。家族の、そして近所の誰も、彼の周到な嘘には気付く者はいなかった。昼になると別の公園に行き、廉価で買った弁当を食べて、ベンチで新聞を拡げて読んでいたと言う。

人間は仕事をしながら家族を養うのが日々の営みである。事件後、何故今までの嘘がバレなかったか、コレは警察も後々、実際の事件後調査している。このドラマでは、ジェイクは、両親、妻、妻の両親を騙して、国連の関係でスイス銀行を関係があるので、口座を彼の名前で開き、得な利率でお金を預けてあげる、と言う提案をして皆を騙し、彼は家族から貰った貯金のお金を全て自分の給与として妻に渡していた事が、判明した。

今回、彼が家族を殺してさらに逃走を続けようとしていたのは、彼が義父から、
「客船旅行で世界を廻る旅を妻としたので、約1万ドルを考えているから、少し出金願いたい」
とジェイクの妻(つまり義父の娘)を訪問した際に、依頼された事がきっかけとなる。

義父はジェイクの嘘を事細かに全て信じ込んでおり、自分の金がジェイクの力で大きな投資になっている、と信じていた。既に10数年前に自分の嘘がバレかけた際に自分の父親を自殺に見せかけて殺していたジェイクは義父も殺そうかと思うが、義父がジェイクを信じ込んでいることから、暫し、時間を取ってどうするか考えあぐねていた。

さらに悪い事は続くもので、時を同じくして、数年前にニューヨーク州のブランド品ストアで出逢った女性レーチェルと、ジェイクは恋仲になる。

真剣なクリスチャンである、ジェイクは自分が実は虚言癖があり、病的な嘘つきである事を忘れて、真剣にプラトニックの恋に落ちてしまう。彼女とは肉体関係なしで、プラトニックながら、ずっとその関係を続けていたのだ。

レーチェルは彼に肉体関係を迫り、旨く関係が出来たら、奥さんなど棄てて私と結婚しろ、と迫るつもりだったし、実際、そう言ってプロポーズしていた。ジェイクも彼女の捨身の愛の告白に嬉しかったが、コレをすると、彼の今まで積み上げたウソがバレる、と考え、彼女のプロポーズを受け取らなかったのだ。

或る日、義父からのリクエストの数日前に、ジェイクは、レーチェルが実は昔詐欺師をしていた刑務所暮らしのピーターと組んで詐欺をしていたことを知る。

トンでもない女と恋仲だった事が家族にバレる、と思ったジェイクは、まず刑務所から復活したばかりのレーチェルの兄、ピーターを刺殺し、その死体を自分が昔よく立ち寄っていた農園に棄てる。

数日後に、レーチェルからピーターの行方不明の事と二人の結婚について強く迫られたジェイクは、レーチェルに結婚しようと持ち掛け、プロポーズ後に車の中で首を絞めて殺す。

数日後にニューヨークの凶悪犯罪課がレーチェルとピーターの殺人事件について、ジェイクに話を聴きたい、と依頼してくる。

もうこの時には義父から度重ねて出金の依頼をされており、追い詰められたジェイクは家族の殺人を計画し、まず、息子と娘を連れて色々な公園で遊んだ後、一服盛って眠らせる。

眠らせている最中に警察の追手が迫って来た…。

このあらすじのどの辺からが事実でどの辺からがフィクションか、と言うと、次の通りとなる。

●ジェイクの話は、ほぼ実際にフランスで起こった話である。順序が少し違うだけだ。実際の家族殺人を企てて連続殺人を行ったのは、医師を騙かたり、約20年、周到に嘘を吐き続けた、ジャン・クロード・ロマン元受刑者である。

彼は、1993年の連続殺人事件で、世界で有名になり、本も二冊、出版された。アメリカで刑事心理学を学ぶ脚本家により、当事件の本を読まれ、LAW & ORDER: CRIMINAL INTENT のシーズン (1) のEPISODE 16 【PHANTOM】で当該事件を元に作った。

◆事実について
フランス、ル・モンド(LE MONDE) 誌、及び英字新聞 DAILY MAIL誌によれば、実際の状況では、医科大学にも言った事がないのに、約20年、著名な医師に化け続けたジャン・クロードは、金の無心をしても金が入らないロマン元受刑者を怪しんだ義父をピストルで撃ち殺し、それを目撃した妻を殴り殺し、翌日に自分の両親と家族が飼っていた犬さえも撃ち殺した。舞台がアメリカなら、多分彼は今頃死刑受刑者だろう。フランス人でラッキーだった、と言うべきか。

最終的にジャン・クロード・ロマン元受刑者は自分の二人の子供の頭も自動小銃で撃って殺している。その後に怪しがる恋人をも殺そうと首を絞めるも、彼女は助かる。ジャン・クロードはその際に、彼女を見逃してやるがこの事を警察に謂ったら殺す、として彼女に他言無用を約束させて、自宅へ帰る。

他言無用を約束していたのに、いとも簡単に警察にその事実を話した彼女は、その後裁判でジャン・クロード・ロマンの裁判で証言もした。

ロマン元受刑者は、死んだ家族の遺体を全員自宅の居間に並べて、テレビでアニメを見てから、冷静にアルコールを撒いて自宅に火をつけ、その中で睡眠薬を多量に服用して自殺を図るが、消防署が火事を発見するのが早過ぎて、自殺に失敗し、自分だけ生き残り、後に全面自供後、逮捕される。

フランスで裁判がなされ、死刑があるアメリカと違って人生のストレス等を言い訳にしてくれるフランスの法律に従い、26年の刑になり、最近、26年の刑が明けて、某所の僧院に引取られた、との事である。

フランス政府側ではロマン被告は人格異常者症候群、と格付けされているが、思うに、彼はナルシシストではなく、病質的虚言癖症候群であり、反社会人格症候群の患者と思われる。また同時に、期限の切れた睡眠薬を多量に服用して自殺を図った事から、ナルシシストで自分は生き残りたかったのだ、とフランスでは謂われているが、当時マスコミで騒がれたころ、アメリカで心理学教室の教授がテレビに出られて、仰せになった事で、私は確かにね、と説得された。反社会人格者には有得るが、ナルシシストにないものは何か。異常とも思える自己尊厳の心だ。

「ナルシシストは自殺を図らない。自分は尊い存在だから」。