2023年12月21日日本における緊急避妊薬(アフターピル)の市販化に対する是非について



記事

意図しない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬(アフターピル)」について、医師の処方がなくても薬局の店頭で適正に販売できるかを調べるための試験販売が、11月28日から全国145の薬局で開始された。アフターピルは、避妊の失敗や性暴力などによる意図しない妊娠を防ぐための薬で、性行為から72時間以内に服用すれば、妊娠を一定程度防ぐことができる。試験販売において、購入できるのは、調査研究への参加に同意した16歳以上の人で、16歳以上18歳未満の人は保護者の同意が必要となる。また、この取り組みの期間は2024年3月までで、調査結果を踏まえ市販化が検討される。
今回、政府が試験販売に踏み切った背景には、昨年12月末から行われたパブリックコメントで、4万件以上の意見が寄せられ約98%が市販化に賛成だったことが挙げられる。また、アフターピルは、欧米では1970年代から使用されており、薬局ですぐに入手ができる。その一方、日本では2011年にようやく「ノルレボ」が医療用医薬品として承認され、まだ市販はされていない(現状におけるアフターピル入手までの流れは図1の通り)。こうした現状に対して、日本は世界に比べて避妊に対する考え方や取り組みが圧倒的に遅れているとの指摘もされている。
以上を踏まえ、「日本における緊急避妊薬(アフターピル)の市販化」について、立論者は「賛成(市販化すべきである)」の立場を取り、反論者は「反対(市販化すべきでない)」の立場を取ることとする。

なお、市販化する/市販化しないということについては以下のように定義する。
市販化する…医師の処方なく薬局の店頭で販売され、薬剤師から説明を受けられる。男性の購入も可能。
市販化しない…現状の維持。本人(女性)の受診が必要。未成年(18歳未満)の診療には、保護者の同伴・同意が必要となる。
どちらも服用における年齢制限はなし。

前提質問

24時間以内9割・74時間以内7割強→10%づつ避妊率が下がる
医療機関で配られているものは同じ
値段15000円は診察料が含まれない、市販化することで費用は下がるかはわからない。自己負担額が中長期的に見たら下がる。試験販売では8000円であり、購入価格が低くなる可能性がある。

Q.中学生や高校生にとっては高額、先に性教育を行うべきではないか?社会人は病院に行く心理的負担は少ない。中高生の方が問題であり、性教育に比重を置くべきだ。
A.同時併行で行うのはだめか?望まない妊娠が想定された施策であり、上記の質問との関連性はない。進んでいない場合、望まない妊娠が横行する。

Q.乳がん子宮がんはピルをあまり飲んではいけない。自覚のない症状の人が飲んでしまった場合より病気が加速する可能性があるのでは?
A.現在でも簡単に入手をすることができる。既往歴を薬剤師が患者にリスクを説明するからこそ、今の状況下でクリニックで診療を受けるから状況は変わらない。

意見・論点

➀使用者の費用的・心理的な負担の軽減につながる
市販で入手できるようになることで、病院・クリニックでかかる診察料がかからなくなり、費用面での負担を軽減することができる。また、病院で診察を受ける時間を確保できなかったり、病院へ行くこと自体のハードルの高さを感じる場合もある中で、男女問わず近い場所でいち早く入手できるようになることで、妊娠阻止率が高い時間帯での服用が可能となり、妊娠に対する懸念も軽減される。

Q.体に合う合わないがある、子供が生みにくくなる可能性がある。市販化で問診をしてくれるのか?市販化することで使用率が増加するが、体にとって悪影響では?
A.薬剤師からの説明を義務化するなどすべき。

②地域医療にとってもセーフティーネットとなる
地域によっては、気軽にアクセスできる産婦人科やクリニックが少ないケースや、都心部よりも人目に付きやすく受診ハードルが高いケースも少なくない。薬局での入手が可能となることで、薬の入手のしやすさにおける地域格差の縮小につながる。

③日本の避妊に対する取り組みの発展につながる
日本で承認されている「ノルレボ」は、重大な副作用はないといわれており、世界90か国ですでに薬局での購入が可能とされている。さらに、アフターピルの費用について、日本では保険適用外となり相場15000円程度と高価であるが、アメリカでは5000円前後、イギリス・フランスでは約900円、ドイツでは約2200円で入手することができる。米英などでは女性や若年者を対象に病院や薬局、学校で無料提供されることもある。そのため、日本での市販化は、取り組みの遅れを海外水準へ追いつかせるとともに、薬自体にかかる費用負担の低下も期待できる。

Q.梅毒の感染者が過去最大、避妊に対する取り組みが最大で、市販化することで逆に避妊への意欲が下がるのでは?買えない層も増え、そういった方も増え被害者も増加するのでは?
A.取り組みの背景は性暴力(同意のない性行為)ではない。カップル間の場合は意識が高まっていると考えられる。海外水準になっていくと救済制度が取られている国があったり、被害者側がこれから損しない社会になる。
2017年1回以上の利用率2.7% イギリス1990年2.3%→2000年3.6% 2015年20.2% インド0.4%(ピル使用率)

予想される反論・再反論

➀悪用・濫用が発生する恐れがある。
→厚労省によると、既に市販化が行われているイギリス、ドイツ、アメリカでは悪用・濫用に関する公的報告資料はない。一方、同様に市販化が行われているインドや、市販化されていない日本では緊急避妊薬に関する悪用・濫用のニュースが報告された事例がある。また、WHOは、「緊急避妊薬が手に入りやすくなっても性的リスク行動は増加しない」と示している。そのため、市販化という形態自体が悪用・濫用の増加に繋がるとは言えない。

Q.薬局で買えるようになると転売の恐れやそれに付随した乱用が考えられますが、それについてはどうですか
A.その可能性はあるが、海外事例の報告では法的資料では報告されていない。WHOの助言のようだと考える。購入できる人の層が増えるため、転売のされ方は増えると考えるが、現在オンライン受診が出来るが、本人ではない人が購入できる状況は現在でも簡単な状況であると考えられる。市販化をする際の仕組みで、どこまで確認行うべきかまだ定義がなされておらず、ここを整えていくべきだ。

Q.中学生でも購入出来てしまう場合、性教育が意味をなさないのでは?
A.性教育をさらに強化するモノだと考える。両軸で進めていかないといけない取り組みである。仮に避妊をしてしまった場合、保護者への報告義務がある。そうしたことから知識がないから安易にアフタープルに頼ることはない。必要な時に入手できない現状を変えるべきだ。

②副作用による体への負担が生じる恐れがある。
→アフターピルの副作用には大きく「眠気、下痢、出血、吐き気、めまい」の症状があるとされている。いずれも軽度の症状であり、通常24時間以内に収まることがほとんどとされている。
また、副作用の発生確率は服用した人全体の10%程度といわれており、数値を見ても全体的に副作用が起きる可能性は低く、体への負担を過度に心配する必要はないといえる。これらを踏まえると、副作用に対する懸念よりも望まない妊娠の防止を重視すべきである。

Q.72時間以内に気づくのか?性暴力で自覚のないものだったら妊娠を気遣いない可能性があるのでは?
A.気づかない場合の数値はわからないが、逆にこれ以外の避妊法が効果を持つのか?どの施策も意味をなさない。気づいた場合最も適切な方法となる。だからこそ市販化に対する反論にはならない。

【先生からのコメント】

誰が反対しているのかの視点となる。ワクチンと同じ。若者を信用していない。イギリスは信頼感がある。自立した国。反対する人がいて、話しが進まない。大前提で女性を守ることである。厚生労働行政の保守主義、アクターの問題があるように見える。

参考文献・URL

NHK「緊急避妊薬の試験販売 きょうから開始 全国145の薬局で」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231128/k10014271041000.html
日本経済新聞電子版「緊急避妊薬、処方箋なしの試験販売を11月20日開始」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA10B040Q3A011C2000000/
日本経済新聞電子版「緊急避妊薬、市販へ半歩 処方箋なく薬局で試験販売へ」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0694O0W3A900C2000000/
厚生労働省「緊急避妊薬に関する海外実態調査 結果概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000910042.pdf
プライベートクリニック高田馬場「アフターピルはどんな副作用がある?副作用を抑える方法を解説!」
https://www.private-clinic.jp/blog/1242/
ユアケア「アフターピルの副作用はいつから起こる?副作用の症状や現れる確率も紹介」
https://reala-clinic.com/yourcare/news/360#unit-headline-ebdc0bba-c0b0-43fd-b7c8-871e0f19c23a 

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