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ストリートフォトに対する一つの試み 明日へのおもざし~就活生100人×一度きりのシャッターで

 この前、
「小川修司写真展 女学生日和 その6」を見て、ストリートフォトを考えた
 という記事を書き、ストリートフォト・スナップについて問題提起をしましたが、これに関する一つの試みとして進行中のプロジェクトを紹介します。
明日へのおもざし
~就活生100人×一度きりのシャッターで
です。
 これは、
・声掛けし、写真展の趣旨を説明・了解してもらった就活生の写真100枚を展示。
・シャッターは1度だけ、の条件で2014年から撮影。
・一期一会を大切に、フルマニュアルのアナログカメラを使用。

 というプロジェクト。100人分の作品ができた2020年に展示を行いましたが、その時のステートメントはこんなふうでした。この内容にすべてが詰まっています。

明日へのおもざし
~就活生100人×一度きりのシャッターで
 なんで仕事してるんだろう、会社に行きたくないな……ブルーな気持ちの時、就活生を見て色々な思いが交錯しました。将来と真剣に向き合う―そんな表情=おもざしを撮りたいと考えました。
 その恰好から、「画一的」「没個性的」などと言う人もいる彼女たちのことを“見つける”のは難しいことではありません。しかし、プライバシーや個人情報の保護が叫ばれる昨今、スナップ写真は撮りづらくなっています。ならば、直接声をかけ、了解を得た上で撮ることにしよう。
 撮影にあたり、展示の目的とともに次の約束事を説明しました。
・シャッターは一度きりにすること。
・インターネットには絶対上げないこと。
 さらに、一度断られたら潔く引き下がることを厳守し、機材もライカM3、エクサクタと、フルマニュアルのフィルムカメラにしました。
 撮影は2014年から。当然、声をかけても―私だってそうするでしょう―たいていは断られます。応じてくれたのは、2、30人に1人ぐらい。自分自身の人間性が問われる気がして、落ち込むことも。予想外にOKがもらえて、驚いた痕跡なども写真に表れているかもしれません。
 そんな中、笑顔が撮れると嬉しい。「さっき内定が出たところなのでいいですよ」「今から大阪に帰るので、時間がかからないならいいですよ」など、彼女たちの状況が聞けることも。2017年ごろからは、海外からの就活生も被写体となりました。撮影に応じてくれた皆さんありがとう。
 この写真展もコロナ禍で延期を余儀なくされました。この間、社会は大きく変化し、人々の顔にはマスク。おもざしを撮るのが難しくなっています。リモート面接など、就活のスタイルも変わりつつあります。あの頃のようにおもざしが撮れる日々が戻りますように。

 上記のコンセプトを守るため、DMなども上に挙げたとおり、個人が特定できないように工夫をしています。

 このプロジェクトは、フィルムカメラの「限界」をある意味で逆利用したもの。フィルムカメラを使えば、電子的なデータがオンライン上に上がるリスクはほぼなくなる。シャッターは一度だけ、という理屈もより明確になる。
 プロジェクトは継続中です。この記事を書いたのも、趣旨を理解し、撮影を了解してくださる就活生の皆さんが今でもいるから。あらためて撮影に協力してくださった方々に感謝です。
 前回はコロナ禍での開催となりましたが、プロジェクトはまた、次の開催に向けて進んでいます。

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