見出し画像

留年制度と移籍文化 スペインの教育制度から考えるサッカーのこと 【その2】

サッカーコーチの砂川太希です。
日本でサッカー指導歴11年目。
7/1(土)からスペイン・バルセロナへ移住しました。

前回の記事の続きとなります。
良かったら前回記事も合わせてご覧ください!

今回の記事はスペインの留年制度について。

日本では留年と聞いてイメージすることは
大学で単位を取り損ねるパターンかと思います。
稀に高校でも留年があると思いますが、令和元年のデータでは全国で約0.2%の割合だそうです。
日本は義務教育の小中学校では留年はありません。

一方、スペインは
義務教育期間中から留年があります。

しかもその割合は
2019年のデータで
8.7%(中学校のみ)
100人に8〜9人は留年。
25人学級が基本みたいなので、その場合、
一クラスに2〜3人が留年となります。

これは2019年当時でOECD諸国内で1位。

社会的問題として取り上げられることもあるそうで、
本記事内でもう少し詳しくまとめていきつつ、
サッカー文化に与える影響についても考えていきたいと思います。



語学学校への通学路。外国人しかいない環境での学びは新たな発見の連続。

スペインの留年制度

スペインの留年率の高さは
先ほど記述した通りですが、
近年スペイン国内でも留年制度反対の動きがあるらしく、
その主張としては
「留年率の高さとニート率の高さにも関係がある」
「留年は格差を拡大し、生徒の自尊心にも悪影響を及ぼす可能性がある」
「一部の科目で留年となっても全課程を繰り返させるのは時間の無駄」
など。

留年や学力格差などの問題により、
義務教育終了資格を取得できずに終える生徒の割合が約30%なんていうデータもあるそうです。


逆にメリットととしては
「自分のレベルに適した教育が受けられる」
「学校側としては同質の集団に教育することでより効率的に効果を最大化できる」

といったところでしょうか。

例えば、
カタルーニャ州の学校の授業は
カタラン(カタルーニャ語)で行われるそうです。
しかし授業以外での学校生活ではカステジャーノ(スペイン語)を使用する。
これを移民の子がすぐに対応できるかと言われると、非常に難しいと思います。
言語が分からないまま、授業内容がレベルアップしていくのは地獄ですね。

実際のところ、
留年制度が施行されている正式な背景は分からないのですが、
とりあえずスペインの教育や社会をざっくりと理解するために押さえておきたいことは
「留年が珍しいことではない」
ということです。


留年制度ほどの割合ではないかと思いますが、スペインには飛び級制度もあります。
成績の良い生徒に対して、保護者の同意や本人の意思を考慮し適用されるみたいです。
この制度も自分のレベルに適した教育を受けるというメリットを生み出しています。

留年や飛び級制度以外の方法論でも
同様のメリットを生み出せそうですが、
ここで重要なことは
スペインの社会において

「留年が珍しいことではない」

ということです。


エンカンツの蚤の市。様々な国籍の人々が集うマーケット。


サッカーに置き換えると。


学校からサッカーに置き換えてみましょう。

留年制度のメリットの2つ。

「自分のレベルに適した教育が受けられる」
「学校側としては同質の集団に教育することでより効率的に効果を最大化できる」

サッカーに置き換えると、

「自分のレベルに適した試合やトレーニングができる」
「クラブや指導者としては同質の集団で試合やトレーニングすることでより効率的に効果を最大化できる」


先ほどの言語と授業内容の話題をサッカーに置き換えたら、分かるかと思いますが
レベルの合わない環境でトレーニングや試合を行うことは
本人にとっても仲間にとってもクラブにとっても不利益です。

スペインサッカーは育成年代でも
日本のプロと同じように
毎年契約を更新できるかどうかの篩(ふるい)にかけられます。

上位クラブにステップアップできるのか
同じクラブと契約を結べるのか
他のクラブへ出場機会を求めて移籍するのか。

この移籍文化は
留年や飛び級といった教育制度と
同質のメリットを与えていると考えます。


日本の教育制度は
横一線の集団教育、一方向的な講義スタイル、順位をつけない運動会など。
あくまでも一部の切り取りですが
教育に対してこのようなイメージのある国で
移籍文化が醸成されるとは
ちょっと思えません。

徐々に個別最適化や双方向性授業など
日本の教育も変化してきているかと思いますので、
今後、日本サッカーの育成年代でも移籍文化が醸成されることも
無きにしも非ずかなと思います。

日本の移籍文化については、もっと掘り下げて記事にしたいです。(いつか。。)


UEコルネジャのプレシーズンの練習見学。フベニールAです。

※記事内の情報で間違いや時代遅れなことがあれば修正したいのでDMにてお知らせください。。

記事を気に入って頂けましたからぜひサポートお願いします😊バルセロナでの活動費に活用させて頂き、さらに質の高い記事を投稿できるようにしたいと思います‼️