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審判についてー日本とスペインの現場から考えるー

サッカー、フットボールでは
多少のローカルルールは存在するものの
FIFAの存在により世界中で基本的に統一されたルールで実施されています。

正確に言えば、
国際サッカー評議会(IFAB )が
サッカー競技規則を決定しFIFAが加盟国、協会に対して適用している
という建て付けになっています。


曲がりなりにも
日本で11年、ジュニア年代からトップ年代まで様々な立場で
サッカーに携わってきたので
試合の運営主体として審判手配をすることもあれば
自分が公式戦で審判をすることもあったし
新中学1年生にオフサイドとは何ぞやということを仕込んで
副審ができるように指導したりなど
してきましたので
最低限の日本の審判事情は把握した上で
現在スペインで指導者をしながら見える審判について
様々考えていきたいと思います。



誰が審判をやるのか。

日本の場合

中学1年生に入るとフルコートの11人制となり3審制となり
主審、副審×2人がマストであると思います。
また、大会レベルによっては第4審も設けられる。
そこにレフェリーアセッサーもやってくる。
という体制になるかと思います。

3審制をまず担保しましょうという考えのもと、
審判を確保、用意するという行動に移りますが
毎週末、日本各地で実施される公式戦に審判を3人用意できるほど
審判の数は多くないかと思います。

JFAより抜粋

そこで日本では、
育成年代の指導者が審判を兼務するということが通常です。
もっと言えば、ジュニアユース・ユース・大学年代では控え選手やメンバー外選手が副審をするということも通常です。

上記の画像の審判員数268.045人の中には、
そのような育成年代の指導者や選手も含まれています。


スペイン(カタルーニャ州バルセロナ)の場合

スペインと一括りに言っても、地域により違いが多いそうです。
自分は現在、カタルーニャ州バルセロナにて指導者として活動しておりますので、
この地域での話となります。

※本記事内の以下の「スペイン」はカタルーニャ州バルセロナでの事例となります。

リーグレベルによりますが、
Cadete(U-16)年代でも1審制で公式戦が行われています。

Infantil(U-14)年代ではトップカテゴリー(バルサやジローナ、エスパニョールも属する)でも1審制で公式戦が行われています。


おそらく、
サッカーのクオリティの話をすれば
3審制の方がより高まると考えられます。
さらにそこに第4審がいれば、よりスムーズに試合を進められ
レフェリーアセッサーがいれば審判の質も高まります。


ですが、いません。
そこにいるのは、主審1名のみ。

そのことがサッカーにどう影響するかは
話が長くなってしまいますので
また別記事にします。

また、Juvenil(U-17〜U-19)年代では
主審と副審2名が用意されますが
第4審判は、いません。
交代の際はホームチームの役員が手続きを行い、
ベンチ側の副審がハーフラインまで走ってきて用具チェックを行います。

もしかしたら、トップ年代のカテゴリーが下がる場合も同様かもしれません。


そして、
自分が見ている限り、今のところ
指導者や選手が審判を行うことは一切ありません。

自チームの試合前に副審を行い、ハーフタイムに審判登録番号とサインを公式記録に殴り書きして、手短に自チームのMTGをすることはありません。

前後の試合で審判を行う必要があるためか、審判着を着ながら試合の指揮を取る指導者を見かけることもありません。

メンバー外の選手に申し訳ない気持ちを抑えながら副審をお願いすることもありません。

全ての公式戦、プレシーズンマッチ(練習試合)において
審判は派遣されます。

その代わり、1審制です。
その代わり、第4審はいません。


審判は審判。
指導者は指導者。
選手は選手。

明確な線引きが存在します。


レフェリングの基準

スローイン


スペインに来てから最も違いを感じる判定は「スローイン」

こちらの動画はJFA審判委員会制作の正しいスローイン方法。


スペインでは
ファールスローはほぼ取られません。

ラインを跨いで投げても
両足が宙に浮いていても
プレー続行されます。
(もちろん審判による)

日本でもジュニア年代において、
スローインのやり直しの時間がよりもプレーする時間を確保したいから見逃す。
などあるかと思いますが
スペインではどの年代でもスローイン時のエラーに対する判定は非常に緩いです。

理由は分かりません。

ただファールスローが取られる場面が時々ありますが
その時に審判から指摘されていることは
「ボールを頭の後ろから投げろ」ということで。
両足が宙に浮いていることはスルーされていました。笑


イエローカードとレッドカード

スペインでは
とにかく連発します。

選手に対してもそうですが
ベンチにいるスタッフに対してもカードが提示されます。

毎週末、様々なカテゴリーの試合を6〜8試合見ますが、
スタッフに対してカードが提示される試合を週末に見ないことはないです。

日本では、あまり起きないことですね。

非常に残念は光景を目にしたことがあります。


ジュニア年代の試合にて。

判定に不服な様子の監督が抗議

主審がすかさず2枚目のイエローを提示しレッドカード退場

そのチームは有資格の指導者が監督しかおらず、ベンチに誰も指導者がいない状況に

没収試合でそのまま終了。

うーーんという瞬間でした。
指導者と審判が何のために存在しているのか、考えさせられます。



取り巻く環境

上記のような基準の違いはあれど
自分は日本とスペインの審判レベルにそこまで違いはないと感じます。

大きく違う点があるとすれば、
審判を取り巻く環境にあります。

国民性の違いとも言えるのかもしれませんが、
スペインでは
観客席から審判に対してのヤジや文句が非常に多いです。

これは年代やレベルを問わず、
応援しているチームが不利益を昂じた場面では
審判に対しての抗議やカード提示の要求などが多く発せられ、
審判に対してプレッシャーが掛けられます。

もちろん、全員ではなく、
「今のは審判が正しかった」という会話も耳にします。
それに、保護者を含めて応援している人たちの熱量が高いということも
その要因かと思うので
全てがネガティブな訳ではありません。

しかしながら
日本と比べると観客席からの抗議の声は圧倒的に多いです。
(叫んでいます)

そして言わずもがな、
ピッチ内の選手やベンチのスタッフからも
そういった声は発せられます。

それに対して主審1人で対応しなくてはならないので
コントロールするために
カードの提示が増えることは、ごく自然なのかもしれません。


一方、日本の場合は
教育的観点から、競技規則やルールは守りましょうということを
サッカーを始める段階から徹底されていることでしょう。

※しかしながら、何故か社会人年代に入ると突然、審判に対しての抗議が増えます。
これはおそらく、教育的観点による指導の範囲外となることが要因の一つです。
非常に寂しい現象で、育成指導者としてはフェアプレーやリスペクトの精神の本質をもっと伝えなくてはならないなと振り返ります。。

また、観客席からの審判への抗議も限りなく少ないかと思います。

育成年代においては教育の場としての認識。
指導者に任せている。
人目を気にする。
抗議するほどの知識量ではない。
抗議するまでの熱量ではない。
(※一切の他意はございません。)

自信を持って非常に素晴らしい文化だと思っています。


こういった取り巻く環境の違いも
「誰が審判をやるのか」
というところに繋がっているなと考えています。

このスペインの環境において
「審判が足りないから指導者や選手でやりましょう」
という発想にはならないことが分かります。


ただ一方で
カテゴリーやレベルに応じて
1審制、3審制、第4審判の有無
をもっと柔軟にしてもできると
「もしかしたら
指導者や選手が審判をやらなくていい環境も作れるのでは?」

とも思ってしまいます。


視点や角度を変えれば
まだまだ日本サッカーの発展の余地はあるなと感じます。

中学生年代でも1審制。試合前の黙祷。リスペクトの精神。




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