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心停止から大切な人を救うために(胸骨圧迫編)

ある日突然、目の前で大切な人が倒れたら、あなたは自信をもって救命処置を行えますか?

心停止の原因の約6割は心臓疾患によるもので、そのため動脈硬化の進んだ高齢者に多いことが指摘されています。しかし、心停止は若い世代や心臓病ではない人でも、誰にでも突然起こる可能性があります。

前回のAED(自動体外式除細動器)に続き、今回は救命率を上げるのに欠かせないもう一つの鍵、「胸骨圧迫(心臓マッサージ)」についてのお話です。

AED編はこちら


救命の鍵 「脳へ酸素を送り続ける」

突然の心停止の多くは、「心室細動」という不整脈によって引き起こされます。心室細動とは、心臓の血液を全身に送り出す場所(心室)がブルブルと細かく震えて(細動)、血液を送り出すポンプの役目を果たせなくなった状態​​、つまり心停止状態です。

心停止となり血流が止まると、全身への酸素や栄養の供給も止まってしまいます。中でも特にダメージを受けやすいのが脳です。脳の細胞が酸素なしで生きられるのはわずか3~4分と言われており、心停止が5分を超えて続くと脳に障害が残る可能性が高くなり、8分を超えると死亡する可能性が高まります。そのため、心停止の際は1秒でも早く「胸骨圧迫」を開始し、血液を循環させて、体に残った酸素を脳へ送り続けることが必要不可欠となります。

必要なのは「脳へ酸素を送り続ける」こと

胸骨圧迫とそのやり方

胸骨圧迫は、止まってしまった心臓に代わって、体内の血液を循環させ、特に脳が酸素不足で働かなくなってしまうのを防ぐ重要な救命方法です。大事なポイントは「強く、速く、絶え間なく」押すことです。(※下記の内容は傷病者が成人の場合。)

  • 速さ:1分間に少なくとも100〜120回のリズムで圧迫し続けます。とはいえ、それがどのくらいの速さなのか、想像するのは難しいですよね。消防庁が開催している救命講習では、心の中で歌を歌う事をお勧めしています。胸骨圧迫のリズムに使える曲は「アンパンマンのマーチ」「ドラえもんのうた」「うさぎとかめ」「TUNAMI」「世界に一つだけの花」など。なじみのある音楽を思い出すとリズムよく行えそうですね。平常心を保つ効果もあるそうです。また、119番通報をするとメトロノームの音を聞かせてくれたりします。スピーカー機能に切り替えれば、救急隊員の指示を受けながら蘇生を行えます。

心肺蘇生は「胸骨圧迫を30回続けたら、人工呼吸を2回行う」、この組み合わせを絶え間なく続けます。ひとりで圧迫を続けていると力が弱まってくるため、5サイクル(2分間)を終えたら他の救助者と交代することで、質の高い心肺蘇生を保てます。

胸骨圧迫、手の位置
「強く、速く、絶え間なく」

迷ったときは、胸骨圧迫

「脈や呼吸の確認が不十分でも胸骨圧迫をしていいですか?」という質問に対し、日本蘇生協議会の代表理事を務める野々木宏医師はこう答えています。「脈がある人や呼吸がある人に胸骨圧迫をしても、そのせいで心臓が止まるなどの支障を来すことはありません。判断に迷っても、とにかく胸骨圧迫を始めてください。」

実際に倒れている人を前にしたら、救命処置はプロに任せるべきと考えたり、失敗して状態を悪化させてしまったら……と躊躇してしまうかもしれません。しかし、蘇生は1秒を争う時間との闘いです。心停止ではない人に胸骨圧迫やAEDを試してみても、大きな問題は起こりません。胸を押されて嫌がって動くようなら、心臓は動いていると確認できますし、心室細動でなければ、AEDをつけても電気ショックは流れません。「何もやらない」ということ以上の大きな問題はないのです。

出血している場合、肋骨が折れた場合や、ペースメーカーが埋め込まれている場合などで心肺蘇生を躊躇してしまう場合があるかもしれませんが、これらが存在しようとなかろうと、生命を維持するために行う蘇生術は欠かすことができないものですので、ほかの何よりも優先されます。死に瀕しているときの蘇生術という行為は、その結果のいかんを問わず、推奨されるべきものであり、決して非難されるものではありません。

AEDの知識

もし心臓が止まっていれば、その人は数分で死に至ります。命より大切なものはありません。迷ったときは胸骨圧迫を始めましょう。

人工呼吸の新常識

胸骨圧迫と合わせて行う人工呼吸。傷病者の肺に酸素を含んだ空気を送り、換気を補助するのが人工呼吸の役割です。JRC(日本蘇生協議会)蘇生ガイドライン2020によると、救助者が人工呼吸の訓練を受けており、それを行う技術と意志がある場合は胸骨圧迫と人工呼吸を30:2の比で行うことが推奨されています。

しかし、近年では人工呼吸を省略した「胸骨圧迫のみの心肺蘇生」が普及しています。理由は、「人工呼吸はある程度の訓練が必要で、実施がなかなか難しいこと」「見ず知らずの人に口をつけることへの抵抗感で、胸骨圧迫すら行わなくなることを防止するため」「倒れた瞬間を目撃している心臓が原因の心停止(心原性心停止)であれば、血中に酸素があるため、胸骨圧迫のみでも傷病者を救うことができる」などがあります。

人工呼吸ができなくても大丈夫です。そんな時は、胸骨圧迫だけでも行うことで、命を救える可能性はぐんとあがります。(ただしこれは傷病者が成人の場合で、小児の心停止は窒息などの呼吸原性心停止が多いため、気道確保と異物除去、人工呼吸が救命の重要な鍵となります。)

「誰かがやる」ではなく「自分がやる」

周りに居合わせた人たちが迅速な救命処置を行えば、倒れた方が社会復帰できる可能性は、何もせずに救急車を待った場合に比べて大きく向上します。日本AED財団によると​​119番通報をして救急隊の到着を待っていた場合の救命率は7%。でも胸骨圧迫をすることで2倍近く、さらにAEDを用いた電気ショックが行われることで、突然の心停止の約半数の人を救えると指摘しています。

「親切のつもりがもし助けられ なかったら……」とためらってしまうかもしれません。もし倒れた人があなたのご両親だったら、お子さんだったら、大切な誰かだったらどうでしょう? あなたは躊躇なく、持ちうる限りの知識を使って何とかしようとするのではないでしょうか。

心停止で倒れている人があなたにとっては他人でも、その人もまた、誰かにとっての大切な人です。救命処置を行うのに資格はいりません。

いざという時に知識があるのとないのとでは、ある方がより確実に、より自信を持って心肺蘇生に臨めるではずです。日本赤十字社や消防庁などが、一般市民向けに救命講習を開催しています。とっさの事態にできる限りの対応ができるよう、みなさんもこの機会に心肺蘇生法を習得してみませんか?

文・廣浦百合子
コンテンツクリエイター/認定整体師
Sunbears マーケティングチーム

【参考文献】
急変対応の基本! 心肺蘇生ガイドライン(BLS)のポイント(ABCからCABに)
あなたは心肺蘇生ができますか?ためらわないためのQ&A
AEDを使った救命の仕方
応急手当WEB
JRC蘇生ガイドライン2020
「人工呼吸は不要」ではない!~人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の必要性~ 

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