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治るということ

新緑のいい季節です。

鍼灸師は法律の規定で「治る」とか「治療する」という言葉を使ってはいけないことになっています。広告宣伝にも使って良い言葉と使用禁止されている言葉があります。
表現に制約があって、鍼灸はどういう症状に効果があるかといった事は載せてはいけないのです。

「治る」というワードが使えないので必然的に、「治る」を使わない表現はなんだろう
という問いを自分で考えるようになります。
結果的に体のツラい症状や悩みに対して「治る」。や「治す」「治るってどういうことなんだろう」と、常に考えてます。

今回は、「治る」について普段から考えている事をまとめてみたいと思い、noteに書いてみようと思います。



鍼灸師の資格をとって仕事を始めた頃。ある勉強会で講師の先生が
『治療家は自分が《治したい病》を自覚しないといけない』と仰っていました。

それって、口にして言わないけど施術者みんな必ず強く心に持ってる病気です。
私たちの仕事は、何処かで「自分がこの人を治したい」という気持ちがあります。

「お客さまにとって何が大切なのか」よりも施術者がしたい事を押し付けてしまうことは百害あるだけだと気をつけなさいと言う教えだと思います。

「私が治す」
そこには「治る」働きは無いのです。

鍼灸師を何年もやっていて思うのですが、人間には人を治す力は持っていないのです。
あらゆる病気に対して治す能力を与えてほしいと神さまに祈ったこともあります。
正直なところゴットハンドが欲しいと願いました。

でも、ゴットバンドの癒しの手は与えられませんでした。施術者は相手と関わりながら手当てやケアして相手の変化に対処するよりほか、人間は何も出来ないのです。

鍼灸は自然治癒力を引き出すっていうけど、「じゃあそれってなんだ」となります。

「私が治す」という賢しらなはからいを捨てたところに、自然治癒力を引き出せるだと思う。
技術というか、関わり方で、人は癒されて回復すると思います。

人間も自然の一部分なので、生物として動物として、自然の営みからから離れるほど体や心が辛くなったり、病気になっていくように思います。
病気になるのは、病原菌ばかりが原因ではなくて、普段の暮らし方にも注意が大事です。暴飲暴食、夜更かしして生活のリズムが崩れたり、気温差や気圧の影響でも体調が悪くなったりもします。

お腹が痛い、肩が痛い、腰が痛いという方に「どうしてその状態になったのですか?」と私から訊ねると、みなさん大体の方は「早食いして」「動画見過ぎで」「慣れない事を始めて」なんて、痛くなった理由を教えてくれます。
そこから解決の糸口を探して、負荷をかけ過ぎたところ、力任せにいじめたところを手当てしていくと、体は素直だから治る方向に向くんです。そこをいじり過ぎない。

施術者にできることは、治る方向への働きかけなんです。良くても6割やったらあとは施術者の力ではどうにもならない、あとは神さまにお任せ。そこに治癒の力が働いて回復するのだと信じています。

なんて良い加減な!

と思われるかもしれませんが、なんでも思い通りに運ばないのが自然ですよね。
人間も自然と同じ。不調やつらさを感じるたびに、体の中や外の環境を自分の感覚を使いながら、自分がちょうど良いところを見つけていくのが、治るという事だと思います。

自分に優しく、心地よく整えると治癒は後からついてきます。

「治る」をお手伝いできる鍼灸師でありたい。


長くて拙い文章でした。最後まで読んで頂き、ありがとうございます。



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