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漫画みたいな毎日。「おせち料理と私。(後編)」

料理の基礎は、辰巳芳子さんと有元葉子さんのレシピ本から教わったといっても過言ではない。

そんな私にとって、おせち料理に対する、私のハードルは富士山よりも遥かに高かった。

どうして、そんなにもハードルが高かったのかは、こちらに書かせていただいた。

おせち料理へのハードルをなんとか、少しつづでも超えるために、はじめは、黒豆と紅白なますの二品だけ。

当時はマクロビオティックを学び始めていたので、黒豆の甘味にメープルシロップ、紅白なますには、干し柿を使った記憶がある。

たったの二品だったけれど、夫も喜んでくれた。私も、市販のものではない、優しい味わいになったことに満足し、「来年は、こうしたらいいかもしれない、あれも作ってみようかな。」と、おせち料理に対してイメージが変わってきていた。翌年には、たたき牛蒡や、柚子の蜂蜜漬けが加わった。

段取り不足で、下準備が間に合わない、材料が足りない、ということもよく起きたので、毎年、やることは同じなのだからと、〈おせちノート〉を作り、必要な材料、仕込み始める時期、保存方法などを書き記した。

長男が産まれ、二男、末娘が産まれ、授乳の合間、「お母さん!来て!」「お母さん、見て!」と言われる頻度は増え、子どもの人数が増えることと比例して、手を止める回数も増えた。

スムーズにおせち料理を作ることは、どんどん困難に思えた。

それでも、作ることを止めることはなかった。夫に手伝ってもらいながら、その年、できることを、無理ない範囲で、少しづつ、少しづつ、作り続けた。そうして品数を増やし、今は18〜19品になった。

私の手を止める存在であった子どもたちはどんどん大きくなり、おせち作りに興味をもって、一緒にやってくれるようになった。年々、子どもたちのおせち部隊は、とても頼れるようになり、今年などは、大変スムーズで、「あれ?こんなに大変じゃなく、できるんだったけ?」となんとなく拍子抜けしてしまった。来年はもっとおせち部隊が活躍するのだろう。

こうして、子どもたちも、私も、一年として、同じではない。そして、毎日、同じではないのだ。おせち料理を作ることがそれを感じさせてくれる。
 
 
 おせちの内容は、家族にアレルギー傾向もあるので、使えない食品もあり、レシピ本から逸れ、違う食品や調味料を代替えとして使い、その時々に手に入る食材、家族の体調に合わせて作るので、毎年、変化し続けている。

毎年、おせちを作るのは、〈記憶の上書き作業〉だと書いた。

料理に興味のないの家庭環境で育ったという記憶。

市販のおせち料理しか口にしたことがなく、おせち料理を美味しいもの、嬉しいものと感じられなかった記憶。

母親から満足に料理を教わることなく育ち、それをどこかコンプレックスに感じていた記憶。

食べることの楽しさを、料理することの面白さを、丁寧に暮らすことを知らなかった子ども時代の記憶を上書きしたい。

私の根底にはそんな想いがあるんだ。

おせち料理に使う野菜を刻みながら、昆布巻きをくるくる巻きながら、そう思った。


 この数年、大晦日に、友人とおせち交換している。

元旦には、我が家のおせちだけでなく、友人宅のおせちもいただくことができ、何倍も美味しい食卓となる。

ある時、私の作ったおせち料理を食べた友人が、この様に話をしてくれた。

「けいこちゃんのおせちをいただきながら、こんな風に美味しいおせち料理をつくるようになるまでの道程を想像したら、おせちが、とても尊いものに思えて、泣きそうになったよ。」

彼女には、料理が好きではない母の元で育った事を話したことがあった。

それを知っていたので、私が作ったおせち料理を食べた時は、とても驚いたとのことだった。自力でここまでやるのは、大変だっただろうし、物凄く努力したのだろう、と。

誰かに美味しい、と言ってもらえることは、たまらなく幸せだ。

でも、私は、それだけの為に料理をしているのではないようだ。

根底の原動力は、

自分の育ちを乗り越えたい、

様々な記憶を上書きしながら、

周りに助けられながら、

力を付けて少しづつ新たな自分に成りたい。 

そんな気持ちなのかもしれない。

そして、好きな人たちと食卓を囲み、 「美味しいね!」と、笑い合いたい。

新たな自分に出逢うために、
ささやかな様々な変化を感じ取りながら、
私は、今年もおせち料理を作るのだ。

そして、また来年も、きっと。

おせち料理の段取り表。現在は、PCで管理。
毎年、書き加え、更新しています。
友人と交換するおせちを詰めました。これから届けてきます♪


ドキドキしながら、始めたnote。
私の拙い文章を、読んでくださる方がいること、
とても励みになっております。ありがとうございます。
少しでも、読んだ方の暮らしの彩りが増えたら嬉しいです。

新しい年も、笑ったり、泣いたりしながら、
子どもたちとの漫画みたいな毎日を書き綴っていきたいと思います。
こからも、引き続きよろしくお願い致します。

まだまだ大変な世情もありますが、
できるかぎり、皆様がしあわせな気持ちで日々を過ごせますように。

皆様、どうぞ佳いお年をお迎えください!!!!!

学校に行かない選択をしたこどもたちのさらなる選択肢のため&サポートしてくれた方も私たちも、めぐりめぐって、お互いが幸せになる遣い方したいと思います!