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#57 本の感想2023年11~12月

2023年11月~12月に読んだ主な本の感想をまとめて。

○『永遠の横道世之介』上下巻/吉田修一
横道世之介シリーズの第3弾にして完結編。
第1弾『横道世之介』、第2弾『おかえり横道世之介』を楽しんでから読むのがおすすめですが、ここから入っても楽しめます。
あとから第1弾、第2弾を読むのもまた良しです。
あらゆる人たちから好かれる世之介という人間がうらやましいです。
とにかく喜怒哀楽が詰まった小説です。
とにかく世之介は熱い男です。
最後に掲載されている手紙を読むと、胸に熱い思いが込み上げてきます。
具体的な感想は一切書きません。
とにかく読んでほしいです!損はさせません!

○『小さな泊まれる出版社』/真鶴出版
古書店で偶然出会った1冊。
本と目が合って購入しました。
神奈川県の真鶴町で出版業と宿泊業を行っている真鶴出版。
出版は情報が発信できても、受け取った人の行動にまで影響を及ぼせない。
宿泊はリアルな体験ができても、遠くに情報を飛ばすことができない。
バーチャル(出版)とリアル(宿泊)で合わさることで、お互いの弱みを補うことができる。
一見、関係のない2つの物事が合わさって新たな価値観が生まれるのは興味深いですよね。
出版と宿泊は人と地域をつなぐという共通点もあるのです。
真鶴町は2014年に消滅可能性都市、2017年には神奈川県初の過疎地域に指定されたそうです。
人口減少で人口を増やしたり、観光客を増やしたりする自治体は多くありますが、本書では「関係人口」というものは紹介されています。
関係人口とは、地域や地域の人々と多様に関わる人々を指すそうです。
例えば、二拠点生活や半年に1回その地を訪れるようなことですね。
私は旅行が好きでいろいろな場所に出かけていますが、同じ観光地に2回以上訪れることは少ないです。
素晴らしい絶景は1度見ると満足してしまい、リピートすることは多くないのではないでしょうか。
本書にも「その地域を好きな人を増やす」という考え方が紹介されています。
移住するのはハードル高めですが、年に1、2回訪れるならハードルは下がります。
訪れることでその土地にお金が落ちることにもなりますしね。
「関係人口」を増やすという考え方はとても共感できました。
真鶴出版に泊まりに行きたいなあ。

○『もものかんづめ』/さくらももこ
著者の代表的なエッセイといっていいでしょう。
「メルヘン翁」は安定の面白さ!
お茶っ葉が水虫に効くらしい「奇跡の水虫治療」も面白い。
どの話を読んでも面白いし、「その後の話」で理解がより深まるのも良いです。

○『ボクはやっと認知症のことがわかった』/長谷川和夫
認知症診断の物差しとして使われる長谷川式スケールの開発者である著者が、自ら認知症になった体験などを綴った本。
認知症の研究者や、認知症になった方の本はあるのかもしれませんが、研究者+自ら認知症になった方が書く本は貴重だと思います。

〇『福田村事件』/辻井弥生
関東大震災直後に千葉県で起こった事件についての本。
教科書レベルで震災直後の混乱に乗じて朝鮮人や社会主義者が殺されたという知識はありましたが、日本人が日本人を殺した事件があったことを初めて知りました。
自分も含めて人間は正義を振りかざしてしまうことがあります。
正義は一見正しいように見えて、怖いものでもあるなと思います。
事件の背景や詳細、資料などが載っていてとても貴重な本でした。
事件の被害者、加害者、見聞きした人がほとんど生存していないからこそ、広く世の中に問うことができた話題なのかもしれません。

〇『もしも日本から政治家がいなくなったら』/金子恵美
元政治家である著者が、日本から政治家がいなくなったらどうなるかをシミュレーションして書いた本。
議員の分類や、選挙でかかるお金のことなどがわかりやすく書かれていました。
日本から国会議員がいなくなったら年間2041億円が浮くそうです。
著者はこのお金を自由に配分できるとしたら、「防衛」「子育て支援」「デジタル化」に使いたいとのこと。
個人的にもこの3つにお金を使うのは賛成ですね。

〇『さるのこしかけ』/さくらももこ
『もものかんづめ』に続いて再読。
ドクダミの葉で痔を治した「痔の疑いのある尻」。
真面目だったイメージを覆すユーモアと悪ノリがあった「遠藤周作先生」。
インドに詳しい旅行代理店の大麻(おおあさ)さんが登場する「インド旅行計画」「インド駆けめぐり記」。
ぐうたら暮らすための方法を解説している「ぐうたらの極意」。
お姉ちゃんのお見合いの顛末が書かれた「お見合い騒動」。
通っていた小学校の特殊学級に来たいさお君について書かれた「いさお君がいた日々」。
朝一番のものが一番効果的らいい「飲尿をしている私」。
などなどどの話も面白い!
面白い話の合間に心が温まるエピソードや、考えさせられるものがあるのも良いです。


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