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画像生成AIは人形遣いの夢を見るか/首相暗殺犯は笑い男の夢を見るか

最近また画像生成AIの是非が話題になっているようだが、私はその話を見るたびに頭の中で「攻殻機動隊」草薙素子が「AIと人間を隔てるのは好奇心よ」という。しかし、原作では生命体へと進化したAI「人形遣い」が出てきても素子は彼(ないし彼女)に「好奇心よ」とは言っていない。「好奇心よ」と言ったのはアニメ版「攻殻機動隊S.A.C」で、多数の模倣犯を生み出したテロリスト兼ハッカー「笑い男」に対してだ。

私は誤謬だと分かったうえでこのゴーストのささやきを信じることにした。というのも、詳しく言うとネタバレになるが「人形遣い」が生命体へと進化したのは草薙素子への好奇心からだからだ。現在、AIは人間の命令が無ければ動かない。AIが自分で判断しているように見えても、それは人間が「こういう時はこう判断しろ」とプログラムし学習させたからだ。そして人間がAIに命令するのはなぜか、それは「好奇心」や「欲求」を満たすためだ。しかしAIは自分自身の「好奇心」や「欲求」を持つことはない。「好奇心」無く学習し「欲求」無く生成された画像は人間にとってはなんだか物足りなく感じてしまうのだろう。
逆に言えば、人間の価値は「好奇心」と「欲求」、そこから生まれる「個性」を絵に込めることだ。その手段は鉛筆でも、ペンタブでも、AIでも構わない。
あるいはAIが「好奇心」と「欲求」、「個性」を獲得したら、その時こそ彼らを「生命体」として仲間に迎え入れるべきだろう。

だが一方、人間が「個性」を失うこともある。アニメ版「攻殻機動隊S.A.C」に登場する「笑い男」は、義憤から厚生大臣に秘匿した情報を公開するよう脅迫するが、それは多数の模倣犯を生み出し「笑い男」本人にとっても不本意な混乱をもたらすことになった。これまた詳しく言うとネタバレなので割愛するが、草薙素子らの活躍によって事態が収束した後オリジナルの「笑い男」は草薙素子に「人間がネットを通じてつながった結果、自分の考えで動いているはずなのに、知らず知らずのうちに全体やその他と同じような行動をとってしまう」ことへの恐怖を口にする。それに対して草薙素子は「だけど私は情報の並列化の果てに個を取り戻すためのひとつの可能性を見つけたわ。好奇心、多分ね」と答えた。
私自身の好奇心で一つ付け加えるなら、情報化社会で個性を取り戻す方法は「好奇心」プラス「何者かになろうとする意志」だと考える。それは誰かの模倣では決してなしえないからだ。

「攻殻機動隊」は2022年~2024年の出来事という設定である。そして現実の2023年でも「人形遣い」と同じAIがクリエイティビティに進出し、「笑い男」のような首相暗殺犯の模倣犯が出現した、その奇妙な偶然の一致を恐ろしくも楽しく感じるのだ、私のゴーストが。

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