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(  )と(  )の焦点距離

夜明け前のアーケード街を、二人で歩く。
どの店も既にシャッターを下ろしているそんな昔から続く商店街の中を酔っ払いが歩いているのは別段奇妙な光景ではないだろう。
私の前を千鳥足で進む彼が面白くて、思わず携帯のカメラでパシャリとやればその画面に小さくなった彼の背中が現れる。

画面の中の小さな背中を見ていた私が、シャッター音に気付き振り返った彼のその表情に焦点を結ぶまで、あと数メートル。

( 私 )と( あなた )の焦点距離

 

久々に夜明け近くまで飲んでいた俺たちは、昔からあるアーケード街を歩く。
夜明け前ののその商店街は、昼間の喧騒とは打って変わり俺と後ろを歩く同居人――まだ恋人関係である筈の女の二人だけしか居なかった。
アーケードの天井に間隔をあけて付けられている電灯が俺たちを照らし、それがまるでスポットライトのように感じた俺は千鳥足で道の真ん中を進む。

そんな時だった。背後からカシャリと電子音が響いたのは。
「ホント、お前俺の事撮るの好きだよな」
振り返りそう口を開いた俺が、どこか楽しそうな笑みを浮かべた彼女のその表情に焦点を結ぶまで、あと数メートル。

( アイツ )と( 俺 )の焦点距離

#写真 #SS

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