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「大切なのは集中力」20-21 PL 第29節 ウエストハム・ユナイテッド×アーセナル レビュー

ロンドンスタジアムに乗り込んでハマーズに挑むアウェイのロンドンダービー。ハマーズは暫定順位が5位。CL出場権も狙える位置につけている。対するアーセナルは、引き続き中位に留まっており10位と厳しい状況。ただ、互いの勝ち点差は7。残りのシーズンでひっくり返せない数字ではない。アーセナルとしては、勝ち点3必須の試合である。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・ウェストハム(監督:デイヴィッド・モイーズ)
フォーメーション:5-4-1
【AWAY】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1

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モイーズ率いるハマーズは、絶好調のリンガードをトップ下に起用して4-2-3-1でスタート。アーセナルもここ数試合と同じ4-2-3-1。前回遅刻でスターティングメンバーから外されたオーバメヤンも無事に復帰。ラカゼットと同時起用となった。

■ 前半①:主導権はハマーズ

試合開始早々から主導権を握ったのは、ホームのハマーズだった。アーセナルのショートパスを軸にしたビルドアップに対して前線から積極的にプレッシングを実行。最近のアーセナルはビルドアップでミスが散見される。モイーズはそこを突いてきたのだろう。ハマーズのプレッシングを攻略できず、アーセナルはショートパスでのビルドアップを諦めてロングフィードでの陣地回復を図る。が、押し込まれている状態でのロングフィードということで、前線に枚数が足りずセカンドボールはハマーズが回収。試合の主導権はハマーズが握った。

ハマーズは2CB+CHのライスの3枚を軸にビルドアップ。SBを高い位置へ上げ、トップ下のリンガードや左SHのベンラーマなどがDF-MFのライン間ハーフスペースでビルドアップの出口となる。ミドルサードからファイナルサードにかけての主な狙いは左サイド。アントニオが左サイドに流れてボールを受ける。そこを起点にSBのオーバーラップ、SHのインナーラップなどで深い位置へ侵入。アントニオがサイドに流れることで出来た中央のスペースには、右SHのボーウェンやCHのソウチェクなどが飛び込む狙い。アントニオの起点になりつつスペースを空ける動きが非常に有効的だった。

■ 前半②:崩壊したアーセナルの守備

試合の主導権を握ったハマーズは、15分に狙い通りの形から先制に成功。アントニオが左サイドに流れてボールを引き出し、ベンラーマとのワンツーで縦に突破。深い位置までドリブルで運びアーセナルディフェンスを引きつけた後、マイナスのポジションでフリーになったリンガードへ。これをリンガードはトラップで浮かせてハーフボレー。調子の良さを感じさせるリンガードのスーパーゴールだった。

更にその直後、ゲームを落ち着かせることの出来ないアーセナルは、ゴール前でファール。この判定に講義している間を突かれ、ハマーズが素早いリスタートから簡単にサイドを突破しボーウェンが追加点。先制点からの2分後、あっという間にハマーズが2点のリードを奪うことに成功した。アーセナルの集中力の欠如が非常にもったいないシーンだった。

反撃に転じたいアーセナルは、このタイミングで右にオーバメヤン、左にサカと順足で起用していた両サイドを入れ替え、逆足になるように変更した。ビルドアップに苦戦していたアーセナルだったが、ウーデゴール、ラカゼットが積極的に降りてきてパスコースに顔を出すことで徐々にボールを前進させられるようになる。ハマーズが2点をリードしたことでプレスを弱めたことも起因しているだろうと思う。しかし、ミドルサードからはハマーズははっきりと撤退守備に切り替えアーセナルにスペースを与えない。

32分、アーセナルのビルドアップ。ハマーズのプレッシングを回避するため、GKレノからSBのティアニーへ浮き玉のパス。これをティアニーがコントロールミスしてボールロストからショートカウンターに。一度はクロスボールをブロックしたものの、こぼれ球は再度ハマーズへ。二度目のクロスをアントニオが頭で合わせ、最後はソウチェクの足に当たってゴール。これで3点差に。アーセナルは、またビルドアップでのミスを誘発されて失点することとなった。

■ 前半③:反撃の狼煙

3点のリードから徐々にプレッシングが弱くなるハマーズ。ここから徐々にアーセナルは縦にパスが通るようになり、深い位置まで攻め込めるようになる。特にトーマスからDF-MFのライン間にポジショニングしたラカゼットへのパスは攻撃を加速させる上で有効的だった。

ようやく攻撃にリズムが生まれだしたアーセナル。ボールを保持できる時間も長くなり、ハマーズを攻め込む。そして38分、右ハーフスペースで起点になったウーデゴールから大外をオーバーラップしたチェンバースへ。チェンバースが蹴った鋭い軌道のクロスをラカゼットがトラップからハーフボレー(記録はソウチェクのオウンゴール)。ようやくアーセナルが1点を取り返す。

その後もトーマスの縦パスからラカゼット、サカへとつないでGKとの1対1のシーンが訪れるもハマーズのGKファビアンスキがこれを阻止。1点を取り返してからアーセナルが猛攻を仕掛けるも追加点は奪えず。3-1で前半を終えた。

■ 後半①:集中力を取り戻したアーセナル

1点を取り返したものの2点のビハインドのアーセナル。後半開始早々には、チェンバースの浮き球スルーパスからラカゼットがループシュート。ゴールとはならなかったものの良い形で後半に入れたアーセナル。前半終盤の勢いそのままにアクセル全開でハマーズ陣地へ攻め込んでいく。

61分、微妙なファールの判定でアーセナルボールに。これをアーセナルが素早くリスタート。右ハーフスペースのサカからウーデゴールへ。ウーデゴールは中央へのパスを匂わせつつ大外チェンバースがオーバーラップできる時間を作り絶妙なタイミングでチェンバースへパス。チェンバースは低く早いクロスを選択。これがドーソンに当たってオウンゴールとなりアーセナルが2点目。前半とは反対に今度はハマーズの集中が切れ、アーセナルが集中力を取り戻した形に。

■ 後半②:3点差をひっくり返すために

74分、アーセナルはサカを下げてペペを、ジャカを下げてスミス=ロウを投入。普段はトップ下、またはSHで起用することが多いスミス=ロウだが、ジャカと交代させることでCHに起用。この狙いとしては、アーセナルが押し込む時間帯が多くハマーズの前線プレスが弱いため、ビルドアップに人数を割く必要がなくなったからではないかと思う。これにより更にミドルサードからファイナルサードにかけて枚数を割けるようになった。

82分、オーバメヤンを下げてマルティネッリを投入した直後、ここでも右ハーフスペースのウーデゴールがチャンスを創出。ペペを走らせて深い位置からクロス。これをラカゼットが頭で合わせてゴール。遂に3点差から同点に追いつく。ハマーズの守備のゆるさからトーマスが前を向くことが出来、ウーデゴールのポジショニングからペペの右足でのクロスまで完璧に崩したゴールだった。

その後も試合はアーセナルペース。しかし、ペペに2度ほどシュートチャンスが訪れるも、ボールをうまくコントロール出来ず。チャンスを活かしきれずに最終的に3-3で試合は終了。3点差はひっくり返せなかった。

■ 試合結果

West Ham United 3 × 3 Arsenal

■ 得点
15分:リンガード(アシスト:アントニオ)
17分:ボーウェン(アシスト:リンガード)
32分:ソウチェク(アシスト:アントニオ)
38分:ソウチェク(オウンゴール)
61分:ドーソン(オウンゴール)
82分:ラカゼット(アシスト:ペペ)

■ 交代
74分:サカ → ペペ
74分:ジャカ → スミス=ロウ
74分:ボーウェン → ノーブル
79分:ベンラーマ → フレドリックス
81分:オーバメヤン → マルティネッリ

■ 試合ハイライト

■ あとがき

相変わらずだがミス絡みの失点が非常にもったいなかった試合だった。特に2失点目は試合に集中できていれば防げた失点だったし、チーム全員で猛省すべきだ。

失点は猛省すべきだが、3点取り返せたのは収穫。トーマスの縦パス、ラカゼットの起点となる動き、ウーデゴールのファイナルサードでのゲームメイクは秀逸だった。そして何より収穫だったのが右SBのチェンバース。低くて早い鋭いクロスは、ベジェリン、セドリックと比較すると一番得点の匂いを感じさせるプレーだった。実際にこの試合でも2得点を演出していたし、効果的だった。今後も是非、起用してほしいと感じさせる活躍だった。

3点差に追いついたものの、結局獲得できた勝ち点は1。来シーズンのCL出場、EL出場を狙う上で必要な勝ち点は3だったので、結果は褒められたものではない。

ただ、3失点から崩れずにチームを立て直したことは評価できると思う。チームとしての方向性、積み上げの成果は感じられる。次節の相手はリヴァプール。ここで勝ち点3を獲得できれば上位進出も可能性はあるだろう。負ければCL出場権は諦めざるを得ない試合となる。正念場だ。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista