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「質的優位を活かすために」20-21 PL 第26節 レスター・シティ×アーセナル レビュー

徐々にではあるもののチームとしての上積みと成長を感じさせているアーセナルだったが、前節は首位マンチェスター・シティ相手に力の差を見せつけられた。今節対戦したレスター・シティもまた暫定順位が3位と上位に位置するチーム。互いにミッドウィークはヨーロッパリーグを戦い結果は対照的に。アーセナルは勝利で勝ち上がりレスター・シティは敗退。アーセナルとしてはヨーロッパリーグの勢いそのままに勝利を収めたい試合。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・レスター・シティ(監督:ブレンダン・ロジャーズ)
フォーメーション:4-4-2
【AWAY】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1

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怪我人の多いレスター。アーセナルと比較すると選手層はそう厚くはない。特に中心選手であるマディソンを怪我で欠くことになったことは辛いところだろう。アーセナルはヨーロッパリーグから中2日ということもあり適度なローテーションを採用。オーバメヤンやサカ、ウーデゴール、ベジェリンなど主力メンバーを温存した。

■ 前半①:ミス絡みの嫌な失点

レスターが2トップということもあり、アーセナルはジャカが左に落ちて3-1の形でビルドアップ。レスターの2トップはプレス強度も弱く、アーセナルは比較的余裕を持ってボールを保持することが出来ていた。ただ、中央では簡単にやらせないレスター。ミドルサードではプレス強度を高めてアーセナルの前進を阻止。くさびのパスを入れさせない固い守備で、そこからのショートカウンターを狙う形。

後ろでボールは保持できるものの、なかなか思うように前進できないアーセナル。機会を伺いなからボールを動かしていたところ、ジャカとウィリアンのパス交換でミスがあり、ティーレマンスがボールを奪取してそのままサイドからドリブルで駆け上がる。ジャカが後ろから追いかけるも、ティーレマンスのドルブルコースを遮るカバーリングがなくアーセナルの守備陣はずるずると後退。ティーレマンスは、そのままゴール前まで一人で運んでシュート。これが決まりレスターがあっさりと先制。アーセナルはまたもや開始早々の失点となった。

ジャカとウィリアンのパス交換でのミスからショートカウンターを受けたが、その後の対応が非常に問題だった。中央のカバーを中盤の選手に任せてマリがドリブルコースを遮るか、中央を戻っていたエルネニーがドリブルコースを遮りに行くかどちらかが必要だった。個人的には、ヴァーディが中へ動いていたので、そこにマリがついていき、エルネニーがティーレマンスをケアする形が良かったように思う。どちらで対応するにしても、声を掛け合うなどの対処が必要だった。ミス絡みで試合開始早々に失点してしまうという、アーセナルとしては非常に嫌な流れとなってしまった。

■ 前半②:まずはミドルサードにスペースを

ミス絡みで早々に失点してしまったものの、アーセナルの守備は機能していたように見えた。特に前線からのプレッシングからビルドアップを制限し、ロングボールを蹴らせて回収するという狙いは成功していた。ここで特に重要な役割を担っていたのがジャカ。マディソン不在のレスターの中でゲームメイクで重要な役割を担っていたのがティーレマンス。彼にジャカがぴったりとマンマークにつくことでビルドアップの出口を制限することに成功していた。

レスターのビルドアップを制限することでボールを回収することに成功すれば、あとは如何にレスター陣地の深い位置まで侵入できるかが一つのポイントとなる。しかし、レスターのミドルサードの堅い守備に手を焼き、なかなかショートパスで前進できない。ということで、アーセナルはレスターのSB裏へロングフィードを送ってセカンドボール回収から攻め込む形を狙う。

12分にはペペがラカゼットとのワンツーパスからペナルティエリアへ侵入を試みたところでファールを受ける。PKかと思われたがVARによりエリア外だったとしてフリーキックの判定。この辺りから徐々に試合はアーセナルペースに。

SB裏へのフィードもあり、レスターDFラインを下げさせたことでミドルサードに徐々にスペースが出来はじめる。これによりアーセナルは、ショートパスでのビルドアップでもミドルサードへパスを送れるように。この試合、ビルドアップの出口は主に2箇所。左のハーフスペースはウィリアン、右のハーフスペースはスミス=ロウがビルドアップからのボールを引き出す。特に左のウィリアンは低い位置まで下がってボールをピックアップしにくることでビルドアップをサポート。ゲームのリズムを作り出していた。

■ 前半③:左で作って右で勝負

左でウィリアンがビルドアップをサポートする事で左偏重気味の攻撃に。左の大外レーンはティアニーが突破。何度かクロスを中へ供給するものの、なかなかシュートまでは至らず。

しかし、前半も半分が過ぎた25分あたりからは、ミドルサードのスペースも出来始め、右サイドのスミス=ロウもボールを触れるようになる。左でウィリアンがボールをピックアップ。そこから中央、右サイドへと展開する形が多く見られるように。

右サイドでは、ペペがレスターの左SBルーク・トーマスに得意のドリブルを仕掛けて勝負。この狙いが多く見られた。ルーク・トーマスはペペのドリブルに苦戦し、ファールで止めるのがやっと。39分には、そのペペが獲得したフリーキックをウィリアンが蹴り、中央のダビド・ルイスが見事なダイビングヘッドで決めて同点に。

更に前半終了間際、左サイドのウィリアンから中央、右と繋ぐ流れから、ボールは再度ペペの元へ。ペペが蹴ったボールがレスターのCHエンディディの手にあたり、VARによりPKの判定。これをラカゼットが決めてアーセナルが逆転に成功。1-2で前半を折り返す。

■ 後半:打つ手を失うレスター

後半スタートからレスターは問題の箇所に手当を施す。ペペのドリブルに苦戦していた左SBのルーク・トーマスを下げ、オルブライトンを投入。オルブライトンは右SHに入り、右SHだったペレイラが左SBに回った。

1点ビハインドとなっているレスターは、前半とは異なり積極的に前からプレッシングを実行。ボール奪取から勢いよく攻め込みたいレスターだったが、後半開始早々にバーンズが負傷。ウンデルと交代となる。これにより今度はウンデルが右SH、オルブライトンが左SHに変わる。

前からのプレス強度が高くなれば必然的に後ろにはスペースが生まれる。52分には、ピッチ中央付近のトランジションでラカゼットが粘りジャカがボールを奪取。右サイドのペペへ展開して一気にカウンターへ。ペペから中央のウーデゴール、左のウィリアンへ繋ぎ、最後は中央ゴール前まで走り込んでいたペペの足元へボールが転がり、これを押し込んでアーセナルが3点目。

先制点に繋がるフリーキックも、2点目のペナルティキックもきっかけを作り出したのはペペだったが、ゴールもアシストもつかなかった。しかし、ここに来てペペの足元へボールが転がってきてのゴール。フットボールの神様がペペにご褒美をくれたようで、グーナーにとっては嬉しいゴールとなった。

2点のビハインドとなったレスターは更に窮地に追い込まれる。ここに来てエヴァンスが負傷。また怪我による交代カードを切らざるを得ない状況に。結局、レスターは戦術的なテコ入れが出来ないまま残りの時間を戦うことに。

75分あたりからは、互いに疲れが出てきたのか試合の展開はオープンに。レスターは人数を割いて攻め込んだが、アーセナルが最後まで何とか凌ぎきり試合終了。アーセナルがアウェイで勝ち点3を獲得した。

■ 試合結果

Leicester City 1 × 3 Arsenal

■ 得点
6分:ティーレマンス
39分:ダビド・ルイス(アシスト:ウィリアン)
45+2分:ラカゼット(ペナルティキック)
52分:ペペ

■ 交代
42分:スミス=ロウ → ウーデゴール
45分:ルーク・トーマス → オルブライトン
51分:バーンズ → ウンデル
66分:エルネニー → トーマス
69分:エヴァンス → アマーティ
83分:ラカゼット → オーバメヤン

■ 試合ハイライト

■ あとがき

最近のアーセナルは、立ち上がりの失点が多い。今節も早々に失点し、更にミス絡みとなるとそのままズルズルと引きずってしまいがちだが、チームとして崩れずに巻き返したのは非常に良かった。

内容も非常に良く、ローテーションしつつこれだけのフットボールを展開出来たことは、チームとしての強さを感じさせる。

守備での狙い(前からのプレス+ジャカのマンマーク)もハマり、ペペの質的優位を活かす狙いもレスターを苦しめていた。ここ数試合の中でもベストの出来だったように思う。

それでも順位はまだまだ中位。チャンピオンズリーグ出場権を獲得出来る4位と勝ち点差は8。近いようで遠いこの数字を埋めるためにも、アーセナルは連勝し続けるしかない。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista