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「試合を動かしたビルドアップの成否」20-21 PL 第27節 バーンリー×アーセナル レビュー

前節レスター戦で快勝を収めたアーセナル。今節の対戦相手はバーンリー。前回対戦時はジャカの退場、オーバメヤンのオウンゴールで敗戦となった苦い思い出のある対戦相手。アーセナルは前節から中5日、バーンリーは中2日とコンディション面ではアーセナルが有利な試合。アーセナルとしては、前回対戦時の雪辱を果たしたいところ。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・バーンリー(監督:ショーン・ダイシ)
フォーメーション:4-4-2
【AWAY】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1

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ホームのバーンリーは、バーンズ、ジャック・コークと主力選手が怪我の影響で欠場。アーセナルは、ELを見据えてかターンオーバー気味のスターティングメンバーに。中でも注目はチェンバース。今シーズンはプレミアリーグで初スタメンとなった。

■ 前半①:ビルドアップからの疑似カウンター

互いに相手の出方を伺うような立ち上がり。バーンリーはフィジカルに長ける2トップを活かしロングフィードを軸としたダイレクトプレーがメイン。ロングフィードからのセカンドボール回収で前進を図る。それに対しアーセナルは、ウーデゴールが積極的にCB(主にベン・ミー)へプレスを仕掛け、精度の高いロングフィードを蹴らせないように守備。

攻守共に4-4-2のシステムで挑むバーンリー。2トップに対してトーマスのCB間落ち、またはジャカのCB左落ちで数的優位を確保し、CB2枚+CH2枚でビルドアップを実行するアーセナル。ビルドアップの出口は、主に左側がウィリアン、右側がウーデゴール。バーンリーが前プレ時に奪えるチャンスと判断した際には、右SHのグズムンドソンが高いポジションを取り3枚で数を合わせてボール奪取を狙う。バーンリーのインテンシティ高いプレッシングにビルドアップで苦戦したアーセナルは、DF裏へのロングフィードを織り交ぜつつ前進を試みる。

バーンリーのプレッシングに苦戦していたアーセナルだったが、ビルドアップからの疑似カウンターで流れるような攻撃を見せる。GKレノからトーマスへボールが渡り、トーマスはジャカとのワンツーパスで軽々とバーンリーのファーストDFラインを突破。そこからMFラインの裏にポジショニングしていたウィリアンへ狭いスペースを通す精度の高いパス。トーマスを中心としたビルドアップにより、FW、MFと2つのラインを突破したアーセナル。残りはDFラインのみ。ウィリアンは一気にスピードアップし、バイタルエリアで左サイドのオーバメヤンへ展開。左45度。得意の角度でドリブルを仕掛けてシュート。ボールはGKポープの手を弾いてゴールへ。開始早々の6分にアーセナルが美しい疑似カウンターで先制に成功した。

■ 前半②:疑似カウンターはハイリスク

アーセナルの先制後も展開は大きく変わらない。18分には先制点の時と同じような展開からアーセナルが前進。今度はバイタルエリア付近で何度かパス交換を行い、トーマスからオーバメヤンへDFライン裏へ浮き玉のスルーパス。DFが一旦はパスカットするもボールはオーバメヤンの足元へ。しかしオーバメヤンはこの決定機を決めきれず。

21分にもアーセナルに決定機。ダビド・ルイスのロングフィードからセカンドボールをチェンバースが回収。そこからハーフスペースのサカへパス。サカは簡単にターンし、中央のオーバメヤンとのワンツーパスからペナルティエリアへ侵入。突破からGKと1対1になるが、シュートは枠の左に逸れてしまいゴールならず。アーセナルは立て続けの決定機を逃してしまうこととなった。

バーンリーの前に圧力をかけるハイライン守備に対して、カウンターから追加点を奪うチャンスを伺うアーセナル。しかし決定機を決めきれないと流れは当然ながら悪くなる。38分、ショートパスでのビルドアップでGKレノからボールを受けに下がってきたジャカへパス。これをジャカはトラップしてから利き足とは逆の右足でダビド・ルイスへ展開。このキックがコースを遮っていたクリス・ウッドに当たってしまいボールはゴールへ吸い込まれてしまうことに。ビルドアップから先制点を奪うことに成功したものの、今度はビルドアップのミスにより同点ゴールを許してしまうこととなった。

■ 後半①:精度を上げたバーンリーの守備

前半からアーセナルのビルドアップを制限し、うまく機能していたバーンリーの前線からのプレッシング。後半はより強度を上げてアーセナルに襲いかかる。前半と後半の違いは主に2点。

・ビルドアップの出処をケア
・ビルドアップの出口をケア

ビルドアップの開始点となっていたトーマスをメインに前線から強度の高いプレッシングを実行。トーマスに自由を与えない。
また、前線のハイラインに合わせてDFラインも高く設定し、DF-MFのライン間もスペースを圧縮。ビルドアップの出口となっていたウィリアン、ウーデゴールがボールを受けられないように守備を整備してきた。

バーンリーの守備に手を焼きうまくビルドアップからチャンスを作ることができなくなってきたアーセナルは、63分にウーデゴールを下げてラカゼットを、69分にはウィリアンを下げてペペを投入。左SHにサカ、右SHにペペが入り左右からドリブルを中心に仕掛けてバーンリーディフェンスの打開を図る。

■ 後半②:相手の土俵で勝負

丁寧にボールを繋いでの打開が難しくなってきたアーセナルは、徐々にトランジション勝負を強いられることになり、試合はオープンな展開に。

73分には右サイドからペペがペナルティエリアへ侵入。ドリブル突破の際にボールがバーンリーDFピーテルスの腕に当たったものの、故意ではないとの判断でPKとはならず。逆に79分には浮き玉の処理でダビド・ルイスが相手選手へプッシングへ行ったところをウッドとヴィドラのワンツーパスでかわされて決定機に。しかしGKレノがこれをビッグセーブ。最大のピンチを守護神が防いだ。

80分にはトーマスを下げてセバージョスを投入。トーマスは足元で受けてパスを捌きながらゲームを作るのに対して、セバージョスはドリブルを交えながらゲームを作る。この違いが功を奏しアーセナルはバーンリーを押し込むことに成功する。交代から早々にセバージョスがDFラインからドリブルで前進し、左ハーフスペースのサカへ。そこから左大外レーンのティアニーへ展開し、そこからワンタッチで中央へグラウンダーのクロス。中央でペペがフリーでシュートするもボールが足にミートせず、ここでも決定機を決めきれず。

83分にはバーンリーを押し込んだ状態でペナルティエリアの角からサカがラカゼットとのワンツーパスでニアゾーンへ侵入。中央へのクロスを合わせたのは再度ペペ。今度はしっかりと合わせたもののバーンリーDFピーテルスがこれをブロック。一度は手でブロックしたと判定され、PKのジャッジが下されるもVARにより判定は覆る。ただ、ボールはたしかに肩にあたっており、この判定は正しいように見えた。

ただ、試合の勢いはアーセナルに傾いたまま。ロスタイムにも怒涛の攻撃を展開。しかし、オーバメヤンの決定機はシュートブロックされ、セバージョスのシュートはポストに阻まれる。結局そのままゴールを奪うことは出来ず、1-1で試合終了となった。

■ 試合結果

Burnley 1 × 1 Arsenal

■ 得点
6分:オーバメヤン(アシスト:ウィリアン)
39分:クリス・ウッド

■ 交代
63分:ウーデゴール → ラカゼット
63分:テイラー → ピーテルス
68分:グズムンドソン → ブレディ
69分:ウィリアン → ペペ
80分:トーマス → セバージョス
86分:ヴィドラ → ジェイ・ロドリゲス

■ 試合ハイライト

■ あとがき

マンチェスター・シティ戦、レスター戦と、立ち上がりに不安のあったアーセナルだったが、この試合では逆に立ち上がりに良い形から先制点を奪った。が、またミス絡みで失点してしまい、結局ドローに終わってしまった。

失点シーンのミスに関して言えば、ジャカはあの展開でボールを受けたのであればトラップせずにワンタッチでダビド・ルイスへ展開するべきだったし、レノはジャカにマークがついていることを確認できていたはずだったので、無理にジャカに出さず大きく展開する選択肢も持っておくべきだったと思う。ただ、ショートパスで丁寧につないでビルドアップを実行するのであれば、こういったリスクも含めて考える必要がある。それだけ高いリスクがあるから先制点のようにチャンスも生まれる。ハイリスク・ハイリターンな戦術を採用しているからこその得点だったし、失点だった。

個人的にはミスによって勝ちを逃したというよりも、決定機で決めきれなかった事の方が勝ちを逃したという点に於いては影響が大きかったように思う。上位へ上がるためには、やはり決めるべきところで決めきり勝ち点を積み上げていくしかない。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista