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「両チームで異なるマンツーマンの打開策」20-21 PL 第24節 アーセナル×リーズ・ユナイテッド レビュー

内容は上向きつつあるものの、ここ2試合で連敗中のアーセナル。中7日と休養たっぷりで挑む今節の対戦相手は、エルロコことビエルサ率いるリーズ・ユナイテッド。前回対戦時はスコアレスドローに終わっており、ぺぺの頭突きによる一発レッドのあったあの試合。アーセナルは暫定11位、リーズは暫定10位と中位に位置する両チームの対戦となった。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1
【AWAY】
・リーズ(監督:マルセロ・ビエルサ)
フォーメーション:4-1-4-1

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アーセナルはレノとダビドルイスがサスペンションから復帰しスターティングメンバーに名を連ねた。トーマスは前節の負傷から回復せず今節は欠場に。ティアニーも離脱中で今節は間に合わず。好調のぺぺ、ラカゼットを温存し、ウーデゴールをトップ下、サイドにスミス=ロウ、オーバメヤンをワントップ起用。アルテタはメンバー選考をいじってきた。
対するリーズは、SBが本職のエイリングがCBに。またアンカーでチームの中核を担うフィリップスが前節で負傷しており今節は欠場。後ろのメンバーに不安を抱える陣容になった。

■ 前半①:攻撃的なアーセナルの守備

マルセロ・ビエルサ率いるリーズの特徴は、インテンシティの高いマンマークディフェンスからボールを奪い、縦に早く展開する攻撃的なフットボール。今節のフォーメーションは4-1-4-1でお馴染みのシステム。対するアーセナルのフォーメーションは4-2-3-1ということで、奇しくもマンツーマンにふさわしいガッチリと各ポジションが噛み合うシステムでの戦いとなった。

序盤から試合の主導権を握ったのはアーセナル。その鍵となったのは、リーズの十八番を奪うかのような前線からのマンマークディフェンス。リーズのビルドアップに対して、右CBのエイリングにはオーバメヤンがSBへのパスコースを切りつつプレス。左CBのクーパーにはサカが同じようにSBへのパスコースを切りながらプレッシング。SBへボールが渡った際には、左はスミス=ロウ、右はベジェリンがプレスに行って自由にさせない。更にアンカーのストライクにはウーデゴールが、CHの2枚クリヒとダラスには同じくCHのジャカとセバージョスがマンマークにつく。

このマークだと、リーズのSH(特に左SHのハリソン)が浮き気味になるが、ベジェリンやスミス=ロウあたりがSHをケアしつつSBへのプレスにいける絶妙なポジショニングでリーズのビルドアップの出口を封じ込めることに成功していた。ただ各所でマンマークにつくだけではなく、パスコースを限定しながらの強度の高いプレスでリーズから考える時間を奪う。パスコースのないリーズは、ショートパスを引っ掛けてしまうか、ロングボールで逃げるしかない状況になっていた。

■ 前半②:マンツーマンに対する打開策

こういった攻撃的な守備で主導権を握ったアーセナル。アルテタは守備だけでなく、攻撃面でもリーズ対策を準備していた。

リーズのマンツーマンディフェンスに対する打開策は主に2つ。
・細かいタッチ数でのパス交換
・個の強さ(ドリブル)

リーズのマンツーマンディフェンスは、インテンシティが高くボールが奪えると判断すれば一気に2枚3枚と人数を増やして圧縮して奪いに来る。アーセナルはそれを逆手に取り、ワンタッチツータッチの少ないタッチ数でパス交換を行いリーズのプレッシングをいなしていく。ただパス交換をするのではなく、各選手のサポートの位置関係(角度や距離)がうまく設計されており、前後左右に動かすことでプレスを無効化していた。

また、ドリブルで1枚はがすことが出来れば、リーズに対してスライドを強いることが出来るのでマンマークディフェンスに歪みが生じてくる。特にサカあたりはドリブルを一つの武器としており、調子が良ければ1枚や2枚DFをかわせてしまう。この試合のサカはまさに絶好調。ドリブルでチームを優位な状況に導いていた。

■ 前半③:主導権を握って3得点

守備から主導権を握り、攻撃でもリズム良く攻められるようになったアーセナルは、13分に待望の先制点を奪うことに成功。前線のプレッシングからボールを蹴らせて回収。その後パス回しでボールを保持し、マガリャンイスからスミス=ロウへ楔のパスをジャカへレイオフし、ジャカからオーバメヤンへ。流れるような少ないタッチ数でのパスでオーバメヤンがエイリングと1対1に。オーバメヤンはキレのあるドリブルで相手をかわしてシュート。これがきれいに決まりアーセナルが先制に成功する。

32分にはサカのドリブルからPKのジャッジが下されるもVARによって判定が覆される。しかし、38分に正真正銘のPKを獲得。サカのプレッシングからGKのミスを誘いボール奪取。たまらずGKがファールを冒してしまいPKに。サカのプレッシングはもちろんのこと、ウーデゴールの連動したアンカーへのマンマークもGKの判断ミスを誘発した良いプレーだった。このPKをオーバメヤンが難なく決めて2点差に。

更に前半のアディショナルタイム。またもやサカがチャンスメイク。ドリブルで相手DFをかわしながらペナルティエリアを横断。DFを翻弄する。その後のクロスのこぼれ球をセバージョスが拾ってベジェリンへ相手DFの股を抜くパス。これをベジェリンが豪快にニアサイドへ打ち抜きゴール。
アーセナルが試合を完全に支配し、3点のリードで前半を終えることに。

■ 後半①:決定的な追加点

3点のビハインドを背負ってしまったリーズは、後半スタートから2枚替え。ジャック・ハリソンとクリヒを下げて、タイラー・ロバーツをCHに、エウデル・コスタを右SHに。右SHだったラフィーニャを左SHに持っていった。

しかし後半開始早々にアーセナルは追加点を奪う。ダビド・ルイスの素晴らしい楔のパスをオーバメヤンがサカへレイオフ。サカはドリブルで運んでシュート。これがブロックされるもののセカンドボールを圧縮プレスですぐに回収。ボールを奪ったスミス=ロウがペナルティエリアに侵入し中央へパス。これをオーバメヤンが頭で押し込みハットトリック達成。スミス=ロウのラストパスはシュートのようにも見えたが、それに至るまでのパス交換、ボール奪取が見事だった。

■ 後半②:ポジションチェンジによる猛攻

4点差になっても諦めないのがビエルサのリーズ。53分にはアリオスキを下げてプレミアリーグ初出場となるヒギンズを投入。ダラスが左SBに下がり、ヒギンズはCHに入る。

アーセナルの守備に苦戦し、ビルドアップがうまくいかなかったリーズは後半、ショートパス主体のビルドアップを諦め、ロングフィードを織り交ぜながら陣地回復を狙う。特にセドリック裏のスペースに蹴り込むことが多く、そこにバンフォードが入って競り合い、セカンドボールをエウデル・コスタが回収してドリブル勝負またはクロスを狙う形。

徐々にアーセナル陣地でプレーできる時間が増えてきたリーズは、58分にCKからストライクが打点の高いヘディングを決めて1点追い上げる。さらに69分には、左サイドのラフィーニャからタイラー・ロバーツへ素晴らしいスルーパスを通され、マイナスに折り返したクロスから最後はエウデル・コスタが決めて2点差。ここまで良い守備を見せてきたベジェリンだったが、ちょっとしたスキを突かれ裏を取られてしまった。

後半、リーズはボール保持の際に目まぐるしくポジションチェンジを実行。アーセナルのマンマーク守備を混乱に陥れる。アルテタとはまた異なったマンツーマンディフェンスに対しての打開策を講じてきたビエルサ。ここは非常に面白かった。

マークを捕まえきれなくなってきたアーセナルは、ウーデゴールを下げてエルネニーを投入し守備強度のアップを図る。後半、リーズの複雑なポジションチェンジに苦戦したアーセナルだったが、最後はホールディングを投入した3バックでなんとかリーズの猛攻を凌ぎきり、4-2で勝利を収めた。

■ 試合結果

Arsenal 4 × 2 Leeds United

■ 得点
13分:オーバメヤン(アシスト:ジャカ)
41分:オーバメヤン(PK)
45分:ベジェリン(アシスト:セバージョス)
47分:オーバメヤン(アシスト:スミス=ロウ)
58分:ストライク(アシスト:ラフィーニャ)
69分:エウデル・コスタ(アシスト:タイラー・ロバーツ)

■ 交代
45分:ジャック・ハリソン → エウデル・コスタ
45分:クリヒ → タイラー・ロバーツ
53分:アリオスキ → ヒギンズ
62分:スミス=ロウ → ウィリアン
78分:ウーデゴール → エルネニー
89分:セバージョス → ホールディング

■ 試合ハイライト

■ あとがき

前半、最高の45分間を戦ったアーセナルだったが、後半はリーズに見事に巻き返されてしまった。あと1点でもリーズが奪っていれば、またはアーセナルが3点しか取れていなかったら、試合はひっくり返っていた可能性もある。そう考えると4点取れた事は非常に大きかった。

リーズとしては、攻守にわたってチームの主軸となっていたフィリップスの不在は影響が大きかったように思う。彼がいればアーセナルの前線の守備に対しても何かしらの対策を打ってきたかもしれない。

最後は巻き返されたことでヒヤヒヤさせられたゲームだったが、内容は上々だと感じた。現アーセナルの良さは連動性。守備時のスライド、攻撃時のサポートなど、個々で戦うのではなくチームとして連動した戦いを見せることが出来ている。

次節はELベスト32のベンフィカ戦ファーストレグを挟んで首位マンチェスター・シティ戦。アルテタが1年かけて築き上げてきた今のアーセナルと首位のチームにどれだけの差があるのか試金石にもなる試合。師弟対決の面でも注目の試合になる。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista