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「課題は仕上げのアイデア」20-21 PL 第33節 アーセナル×エヴァートン レビュー

前節のフラム戦、VARの厳しい判定に泣かされたアーセナル。上位陣との勝ち点差を縮められず暫定順位は9位。プレミアリーグからヨーロッパ大会への出場権獲得は非常に厳しくなったと言わざるを得ない。
今節の対戦相手はエヴァートン。アーセナルよりも消化試合が1試合少ないながら勝ち点差3で暫定順位は8位。ここ5試合で勝利が無く3試合続けて引き分け中と、アーセナル同様調子はイマイチ。そろそろ勝利が欲しいのは両チーム同じだ。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1
【AWAY】
・エヴァートン(監督:カルロ・アンチェロッティ)
フォーメーション:4-2-3-1

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アーセナルは大黒柱のラカゼットが前節で負傷離脱。オーバメヤンもマラリア感染から完全復帰しておらず、攻撃陣の主力を欠く陣容。ティアニーも引き続き長期離脱中となっており、万全の状態からは程遠い。
対するエヴァートンは主軸のカルバート=ルーウィンがスタメンに復帰。ハメス・ロドリゲス、シグルズソン、リシャルリソンと、豪華なメンバーが揃った状態で今節に挑む。

■ 前半①:主力を欠く中で

ここしばらくの間チームを牽引してきたラカゼットが不在となり、今まで作り上げてきた構造が崩れてしまうのではないかと懸念したが、代わりにワントップに起用されたエンケティアはラカゼットと同じタスクを卒なくこなせていた。特に2列目を活かすポストプレーはビルドアップを助けていたし、上手く起点を作れていたように思う。

アーセナルはジャカを左SB起用しており、ここ数試合と同様に今節もDFラインを右にスライドさせてCHのトーマスと3-1の菱形を軸にビルドアップを行う狙い。

前節と異なって見えたのは、セバージョスのポジショニング。ジャカを今シーズン初めて左SB起用した試合では、ビルドアップの際にセバージョスがサイドに張って幅取りを行っていたものの、前節はやや中寄りに変わり、今節はハーフスペースを軸にプレーしていた。

これは、左SHにぺぺが起用された影響もあるだろう。サイドに張ってプレーする事が得意なぺぺ。彼の武器はドリブル。単騎での突破も可能なので、ある程度孤立してしまっても相手と勝負ができる。ミドルサードからファイナルサードにかけて彼のところにボールが収まり勝負を仕掛けられるようになっていた。

■ 前半②:エヴァートンの対策

アーセナルの3-1ビルドアップに対して、エヴァートンは右SHのリシャルリソンとトップ下のハメス・ロドリゲスを高く上げて3トップ化してプレッシング。4-3-3の形でアーセナルのビルドアップを牽制する。ただ、ハメス・ロドリゲスを筆頭に前線の守備は甘く、あまりアーセナルのビルドアップは制限できていなかった。

厄介だったのはエヴァートンの撤退守備。割り切って自陣深い位置まで下がり4-5-1に近い形でゴール前に分厚い壁を作ってアーセナルの攻撃を跳ね返す。

ある程度狙い通りにビルドアップ出来たことで試合の立ち上がりから良い入り方をしたアーセナルだったが、エヴァートンの撤退守備の前になかなか良い形でフィニッシュまでは持っていけない。ファイナルサードのサイド深い位置までは侵入出来るものの、そこからの1つ2つ崩しきるプレーが足りず決定機を作れない。

前半も半分を過ぎたあたりから、エヴァートンも逆襲に転じる。ボール保持からなかなかビルドアップがままならなかったエヴァートンは、ハメス・ロドリゲスがポジションを下げてビルドアップに参加。所々ボールロストする場面もあったが、彼が下がったことでビルドアップでパスが循環するようになり、次第にエヴァートンが巻き返し始める。ただ、エヴァートンも決定的なフィニッシュの場面はそこまで多く作れず。

前半はこのままスコアレスで終了。互いにチームの不調を感じさせる展開となった。

■ 後半①:今節も泣かされたVAR

後半立ち上がり、早々にエヴァートンにチャンスが訪れる。アーセナルの左サイドを3人の連携で綺麗に崩し決定機を作る。しかし、ホールディングが体を張って守ったことで何とか失点は免れる。エヴァートンは主にアーセナルの左サイド、ジャカのサイドを狙っているように見受けられた。

51分、今度はアーセナルがボール保持からチャンスを生み出す。左右に揺さぶりながら時折見せるトーマスの鋭い縦パスを交えながらエヴァートン陣地の深い位置まで侵入。右サイド、チェンバースのクロスが相手に当たりこぼれ球がペナルティエリア内にいたセバージョスの元へ。セバージョスがリシャルリソンをドリブルで交わした際に足がかかりPKの判定に。

ようやく先制のチャンスが訪れたと思いきや、 手前のプレーでセバージョスからぺぺへのパスがオフサイドという事でVARで検証されることに。VARで見てもライン上ギリギリ。しかし、ほんの僅かにぺぺが前へ出ていたということでオフサイド判定に。アーセナルは、前節に続きまたしても厳しいVARの判定に泣かされることとなった。

■ 後半②:試合を決定づけた2つのミス

後半も深い位置までは攻め込めるアーセナル。ぺぺの良いタイミングで蹴られたクロスや、サカのドリブル突破からペナルティエリア内でマイナスへの折り返しなど、決定機の1歩手前までは崩せているものの、それに合わせられずチャンスを活かせない。

なかなか決定機まで至らないアーセナルは、74分に2枚替え。ぺぺとエンケティアを下げてマルティネッリと怪我から復帰したウーデゴールを投入し得点を狙いに行く。

交代からすぐの75分。アーセナルの効果的なプレスに対し、なかなか前へボールを運べないエヴァートンは、中盤のアランから右サイド奥のリシャルリソンへDFラインの裏をつくロングフィード。対応するのはジャカ。リシャルリソンは上手く体をジャカに当ててボールをキープ。そのままジャカをドリブルであっさり交わしてペナルティエリア内のポケットへ侵入。リシャルリソンは、そこから中央へのクロスを選択するが、これをGKレノがセーブ。と思いきや、レノがまさかのトンネル。エヴァートンが先制に成功することに。

アランのパス、リシャルリソンのボールの受け方など相手に良いプレーがあったものの、失点の原因はジャカのリシャルリソンに対する軽い対応、そしてレノのキャッチミスと、2つのミスで許してはならない先制ゴールをエヴァートンへ与えてしまう。

アルテタはその後、83分にチェンバースを下げてウィリアンを投入し3バック気味の攻撃へ全振りする采配を見せる。しかし、エヴァートンは86分に守備に難のあるハメス・ロドリゲスを下げ、89分にはCBを追加して5バック化。きっちりと守りに入る。

アーセナルは最後まで猛攻を仕掛けるも最後までエヴァートンのゴールは割れず。0-1で敗戦となった。

■ 試合結果

Arsenal 0 × 1 Everton

■ 得点
76分:レノ(オウンゴール)

■ 交代
66分:アンドレ・ゴメス → デルフ
74分:ペペ → ウーデゴール
74分:エンケティア → マルティネッリ
83分:チェンバース → ウィリアン
86分:ハメス・ロドリゲス → デイヴィス
89分:リシャルリソン→ ミナ

■ 試合ハイライト

■ あとがき

内容はそこまで悪くないものの、VARの厳しい判定やミス絡みの失点など、コントロール出来ないところで勝ち点を取りこぼしているアルテタ。つくづく不運だなぁと思う。

ビルドアップからファイナルサードまではボールを運べるようになってきたアーセナル。ただ、ファイナルサードでの最後の1手2手のアイデアに欠けている。

ビルドアップからボールを進めることは出来ているものの、縦へのスピードやサイドチェンジが遅く、スペースを埋められてしまっている事もファイナルサードで崩しきれない1つの要因に見える。

得点が奪えなければ試合には勝つ事は出来ない。得点を奪うためにも、次の課題はファイナルサードでの崩しの部分。仕上げの部分にアイデアが欲しい。選手の個の力に頼るのか、再現性のある連携を組み込むのか。個人的にアルテタには是非、後者を期待したい。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista