HCD-Net関西フォーラム2019「HCDのキャズムを越える」 2019.09.07

昔のものを遡って公開するキャンペーン中(これはそこまで古くなかった!)

大好きな大阪に行ってきました。松本からだと大阪はちょっと大変なんですよね。「特急しなの」の最終が19時40分、というびっくりするくらい早い時間なので、新大阪を18時半くらいに出ないと間に合わない・・・。
今回は朝から参加したかったので前泊を選んだのですが、今度は前泊&後泊のセットでフォーラムも大阪の街も存分に楽しみたいです。

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ワークショップ「オブジェクトベースUI設計」
講師:上野 学氏(株式会社ソシオメディア)

オブジェクトベースUI設計は、ユーザーの関心や手がかりを「オブジェクト」とし、それをもとにUIを設計していく方法
原則:
 ・オブジェクトが見えていて直接的に働きかけられる
 ・オブエクトは自身の性質と状態を体現する
 ・オブジェクト選択→アクション選択の操作順序 
 ・アクション実行後に即座のフィードバックがある
 ・全てのオブジェクトが互いに協調しながらUIを構成する

オブジェクトベース:
Object→Verb
オブジェクト選択→アクション選択

タスクベース:
Verb→Object
タスク(やること)選択→引数として対象物、パラメータの選択
対象オブジェクトを選択する必要がない場合、定型の入力手続きを提供する場合のみ有効
 例:Avasys申請システム
   申請する(やること)→申請種類
   申請確認(やること)→申請種類
・なぜタスクベースになるのか?
 -オブジェクトベースUI設計の設計方法が明文化されていない
 -業務分析、要求分析の結果が「やること」としてまとめられ、それをUI設計の手がかりにしてしまう
 -手続き型プログラミング言語(COBOLとか)において確立されたスタイルを引きずっている
 →タスクを手順化してウィザードにしてしまう

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今までどうしてそのUIになるのか?を割と感覚でやっている部分があり、説明に窮したこともある。手順を少なく、理解しやすくしようと考えながら、自然とやっていたことが言語化されていて、説明しやすくなってとてもうれしい!!さらに説明時に「オブジェクトベースUI設計の原則に則っています」とか言うと、「お、おう・・」って感じで納得してくれたりしてw
今でも設計側でベースとして出されるUIは、タスクベースのものが多かったりします。オブジェクテベースUI設計を手順化、明言化してもらえたおかげで、UI設計について教えていきやすくなったし、デザイナーじゃなくてもUIを設計することが可能になっていくと感じました。

講演1:行為のデザイン
ムラタチアキ氏(京都造形芸術大学 プロダクトデザイン学科客員教授、METAPHYS 代表、株式会社ハーズ実験デザイン研究所 代表取締役社長)
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バランキュラーデザイン:その国の民族、風土にあったデザイン
→行為のデザイン・・行為がどう美しく動いていくか?
 ×切り取ってしまうと、よく見える。時間を止めない。

作法まで進化した所作=行為が文化になる
例えばスマホ操作という行為。すでに文化になり、今後作法となっていく。

・人とモノの接点にあるインタフェースを大事にする
・行為の先にある目的を考える
・行為を人・時間・空間に分解する
・観察だけではなく当事者を自分に置き換えて「想像体験する」

手段ーー(インターフェース)ーー誰が?
例:ご飯ーー(はし)ーー日本人、ご飯ーー(手)ーーインド人、ご飯ーー(スプーン)ーー赤ちゃん

インターフェースの組みあわせはいろいろ
人ー人、人ーモノ、人ー情報、モノー情報、モノーモノ、情報ー情報

行為を止めるバグ
矛盾、退化、カオス、進化、精神的反逆、記憶、逆行など

モノにおきる負のスパイラル
→デザインがインテリアに合わない→リビングに置けない→物置に置く→見えないからデザインは考えない→機能と値段だけで買う→
※負のスパイラルを破ると一人勝ちできる

「行為のデザイン」とはユーザーのコンテキストの定義だと思いました。HCDでいうところの「利用状況の把握と明示」ですね。ムラタさんはここをすごく丁寧に行っていて、そこから要求定義→プロトへと進んで行く。本当にすばらしいです!(またできたものが実用的かつオシャレなんだ、これが!)
ただ、ムラタさんはHCDを取り入れていくけれど広がらない、という意味でのキャズムを前提に話されていたが、まだまだHCDを取り入れる前のキャズムが問題だったりするんです・・・。ここは自分でがんばるか・・・。

講演2:人間中心コクピット開発
佐藤 圭一氏(マツダ株式会社 車両開発本部 車両実研部 クラフトマンシップ開発グループ )
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マツダのモノ作り「人馬一体」
誰でもどんな人でも安全に安心して運転できる車、を目指す
↑ここを上層部が掲げたことで、人間中心的なモノづくりが広まっていった会社の方針⇔人間中心 この間になにかキーワードはあるはず!

マツダのキャズムは
1. HCD導入
2.量産仕様にどう織り込むか
 ・価値を実現することの意味を考える
 ・実現の前に人間の状態を定義する

ヘッドアップディスプレイ(HUD)
ADD(アクティブドライブディスプレイ):なんか透明な板とかに照射して写すみたいな感じのもの・・・
 価値:運転中に表示が見やすい・前を見たまま運転できる
 →価値はみんなわかってるのになぜやらない?コスト??技術??:ビジネスとして成立しなくなる

「どうしたら安心して運転できるのか?」に立ちかえる
→見やすい、わかりやすい、操作しやすいコックピットにしていこう
 見やすいとは??
  運転中の視野の中にある
  焦点が合わせやすい
  →人間特性に置き換えて「見やすい」を特性化させた

やったこと:提案書を1枚のペーパーにまとめる
 会社の方針
  →製品としての提供価値
   →システムとしての提供価値:価値の意味づけで順番を決める
    GUIとしての提供価値、人間の理想状態、実現手段

モノづくりの現場にいる佐藤さんの話は、HCDの導入からさらに量産への折り込み、というお話。これから私が立ち向かうところに近しくて、とても興味深かったです。
技術を実現するのではなく、実現すべきもの、解決すべきものから技術の選定と実現、といった部分がこれからの私たちがすべきことである、と強く感じました。が、それと同時にわたしがこに対してできることはなんだろう?どう進めていけばいいんだろう?と、帰り道ずっと考えていました・・・(まだ答えは出てません)

講演3:料理教室における生徒様中心設計の取り組み
水島 弘史氏(水島弘史調理・料理研究所)
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こういう料理を作りたい→これを伝える
実は、作る前に頭の中でほとんど作れている
 →逆算して、完成形になるまえにどういう手順を踏むか
 →これを実際に作る人に伝えるのが難しい
具体性を持って共有していくことの難しさがある⇔感覚の世界

作ってくれる人(教えられる人)をよく知る:それぞれの知識量、レベルを確認
料理をした時の指針(基準)を作る:曖昧さをなくす

料理ってどういうことだろう?と思っていたけれど、話を聞いて、自分の料理経験を振り返り、確かに料理プロセスはHCDプロセスだ、と思いました。
ちなみに水島さん、お話の時にシェフの衣装に着替えてくださってました。いきなりシェフが出てきて、おぉ!って思ったら、斜め前に座っていた方でした。(終わってから衣装を脱いでいたのでわかった)

今回は特に人に教える、という部分がメインとなっていたが、ここもHCDプロセスを広めるという観点とすごくよく似ているなぁ、と感じました。
>作ってくれる人(教えられる人)をよく知る:それぞれの知識量、レベルを確認
ここはよくやるところ。
>料理をした時の指針(基準)を作る:曖昧さをなくす
わたしはここが中途半端になっているかも。すごく難しいし、それでもある程度はできていると思っているけれど、まだまだできることがあるのかもしれない。
オブジェクトベースUI設計の時も思ったけれど、感覚ではなくきちんと明言化されているプロセスはやっぱり強いですね。

講演4:Disrupt, or be disrupted
葉村 真樹氏(東京都市大学総合研究所・大学院総合理工学研究科教授/パナソニック株式会社ビジネスイノベーション本部事業戦略担当)
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イノベーションに関する誤解
・先端技術さえあればイノベーションを興すことができる
・市場開発に投資をしないことが問題
  1.人間中心に考える
  2.存在価値を見極める
  3.時空を制す

テクノロジーとは、人間の機能及び拡張である
 腕、手、足ーーモビリティの拡張
 目、耳、口、鼻ーーインフォメーション技術
 消化器、肺、心臓ーーエネルギー技術
人間単体で解決できなかった問題を解決する
 「Jobs to be done」
  価値の提供→企業の誕生→業界の編成(Value chainの形成)
  →ポーターVSバーニー論争

Design Thinkingとは:優秀な人ができてたことを普通の人もできるやり方にしただけ
何をするか?:課題を見つける
ーーー電車の時間がギリギリだったので、志半ばにして帰宅ーーー

全体的にエモいプレゼンでしたー!マツダのムービーとか、車が好き!ってわけではないのですが、車に対するエナジーをびんびん感じて胸が熱くなりました。

「イノベーションに関する誤解」は、もうわかりみが深すぎる。
葉村さんは、広告業界に至り、マツダにいたり、コンサルをやっていたり・・で今はパナソニックにいる。
時代の移り変わりとともに、ご自身の取り組みを話していただけて、すごく興味深かったです。最後まで聞きたかったし、懇親会でもお話したかったー。残念。

大阪駅→新大阪駅の電車が15分くらい遅れたりして、ギリギリで新幹線駆け込みました。この15分があれば、お話を全部聞けたんじゃないか??
まぁ、551の豚まんはなんとか買えたのでよしとしましょう。

HCD-Net関西は魅力的なゲストスピーカーが多いですね。来年も今から楽しみです。

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