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138億年の時間の中で なかせい☆第31話☆「光の差す方へ②」          

2023年8月。学校が大好きすぎる長男にとって近隣の事業所を見学したり体験実習するチャンスの夏やすみ。自立訓練事業所へ3日間の体験、2か所のB型作業所にそれぞれ1日づつの体験と、もう一か所、B型作業所を見学した1か月。本当にがんばりました。
 
B型作業所は市内だけでも沢山あって、本人に一番合う場所がみつかればいいとは思うけど、それはすべてじゃない。仕事は生活の一部分。自立心が強い彼にとっていつまでも私の付き添いを必要することの方が良くない気がする。学校が遠いことで地元との縁が薄くなってしまったことも気になっていたし、できるなら徒歩とバスで通勤できるところがいい。一人でも安心して通える範囲内と決めていました。
 
絞られた候補の一つ、自立支援訓練事業所は開設して年数が浅い。スタッフもお若く笑顔が多い。年齢の近い利用者さんと横の繋がりもできそうです。早くも体験2日目には事業所へスタスタと歩いて向かい、やる気を見せてくれました。「ここで僕は楽しい時間を過ごすんだ」と理解している様子です。クレープ作り、三宮へお買い物、お盆ってなあに?と作業あり、お出かけあり、学びありと暑い中がんばりました。最終日には進路担当と担任の先生も同席くださって、一緒に帰りの会を見守ります。
長男は自ら立ち上がって教室の前に歩きだしました。みんなの方を向いて「三日間、楽しかったです。ありがとうございました。」とまさかの満点の挨拶。
これには驚き。進路担当の先生と顔を見合わせて(見た?今のすごくないですか?)(見ましたよ!あんなにしっかり挨拶ができるなんて!)と無言の会話が繰り広げられていたことは長男は知らない。
 
先生が保護者と同じ目線で子ども成長を感じ喜ぶことができるなんて。なんてありがたいことか。なんと勇気づけられることか。この時の私は甲子園でサヨナラ逆転ホームランを見届けた応援団と同じ顔をしていたに違いない。
 
子育てが楽しいとか辛いとかって、障害有無に関係なくって、悩みも喜びも一緒になって分け合える人がどれだけいるかどうかなんだな。
 
嬉しい予想外がもう一つ。
あるB型作業所のワークショップに参加した際に、アフリカンドラムの演奏を聴く機会に恵まれました。
会場を突き抜けるような鋭い音と圧倒的なリズムの繰り返し。耳よりも身体を刺激するような激しくもそれでいて心地よい音楽にすっかり魅了された長男は、演奏終了後にドラム奏者に声かけたいのかウロチョロ歩きまわり、ちょっと挙動不審。思い切って話しかけてみると、その見た目に反して何とも優しい語り口で長男と話してくださいました。あ、足取りが軽くなってる。嬉しかったんだな(笑)。
ドラマーさん、私が通学の付き添いに片道1時間かけて送迎している事を聞いても「大変ですね」じゃなくて、「でも楽しいでしょ」と。はい、その通りです。お話したのは初めてだったけど、ここにも理解者はいたのです。そっか。私は楽しんでいるように見られたのか。ついつい顔がニヤニヤしちゃう。
 
しかし山があれば谷もあるのが常。
前述の自立訓練事業所と同じ建屋内にあるB型での1日体験は、3つの異なる単純作業に取り組みました。お迎えの私を確認しても動じることなくマジメに机に向かっています。投げ出すこともなく、スタッフのアドバイスもよく聞いて、優等生。でも振り返り時には真意のわからないネガティブな言葉が出てきました。う~ん、彼のこの発言をどう捉えたらよいのか?と頭を悩ませます。単純作業以外にもマンションの清掃や生産活動もあるんだよ?と言ってはみたけど、いまいち伝わった手ごたえなし。そりゃそうだよね、目の前に無いし、体験していないもんね。とりあえず、判断は保留。
 
長男の心の灯は灯ったり、消えてしまったり。
炎天下、前を歩く背中を見ていると、本当に長男に障害あるんだっけ?って錯覚することがあります。または、暑さに溶けていく私の身体は半透明になって実は存在していないのかも?そんなふうに。長男はもう私を必要としていないのかな?なんて思っちゃうんだけど、それは悲しいことじゃない。
卒業までまだ半年以上。あせらず、楽しく、前を向いて進むだけ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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