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【随筆】聖地

  今月9月に入って、ずっとそわそわしてきたのがさらに決定的になったのは、9月9日土曜日。野球の優勝マジック──ようは、あといくつ勝つと優勝で、対象チームがいくつ負けるとやっぱり優勝ってやつ──は、最多でふたつ減るもんだとばかり思っていたのが、広島を下していっぺんに3減ったあたりだ。どれぐらいそわそわしてきたかというと、意味なく自室のなかをうろうろ歩くぐらいの、そわそわ。

  予定が三日空いて、甲子園は讀賣三連戦。
  ここはひとつ、甲子園まで行かないとマズイだろ、と、なにがマズイかもわからないまま、讀賣戦と新幹線のチケットを取って、聖地甲子園へ。

  もちろん、チケットを取った時点で、すでに優勝当日が絡む試合ではなかったものの、空気吸いたいじゃない。甲子園の空気、西宮の空気、大阪の空気吸いたいじゃない、今年は。
  この「聖地」って言葉だって、決して大袈裟な言葉でなく、普段、横浜スタジアムや神宮球場、後楽園で対戦相手のホームゲームとその演出、駅から球場界隈の賑わいを横目に見ている阪神ファンにとっては、やはり、聖地。

  なにより、それぞれのポジションに向かい、まっさらなグランドに散ってゆく阪神タイガースの選手たち。あの戦い直前の光景は、清らかで美しい。そんなこと在阪新のタイガースファンにはわかるまい。そう、とても、羨ましいのです。

  そんな、甲子園に響く六甲颪は神々しくすらあった。そして、その二日後、優勝をアレと呼びつづけてきた岡田彰布がその甲子園で6回宙に舞った。

書くことは、落語を演るのと同じように好きです。 高座ではおなししないようなおはなしを、したいとおもいます。もし、よろしければ、よろしくお願いします。 2000円以上サポートいただいた方には、ささやかながら、手ぬぐいをお礼にお送りいたします。ご住所を教えていただければと思います。