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冬季の馬産地の緊張感

「この時期は生産牧場がピリピリしている」
「この時期は避けてほしい」


と出産の時期に生産牧場さんが発信していますがその理由として、
ERVというウイルスが大きな要因の一つにあげられます。

ERV(馬鼻肺炎)とは人間で言うと風邪に近いものがあるのですが、
JRA様の馬の資料室から引用させて頂くと以下のような説明になります。

「馬鼻肺炎ウイルスは非妊娠馬では免疫のない(過去に感染した事がない)馬に軽い発熱を引き起こします。一方、妊娠後期(9ヶ月以降)の馬に感染すると流産を起こす場合があり、日高管内においては毎年10~20頭が報告されています。馬鼻肺炎による流産は悪露や乳房の腫脹といった前駆症状もなく突然起こるため、予知や治療は非常に困難です。 感染・発症様式  感染・発症様式は大きく2つに分けられます。1つはウイルスを含む感染馬の鼻汁や流産胎子・悪露・羊水に直接、あるいは間接的(人間の衣服や靴、鼻捻子などを介して)に接触して感染・発症するケース。もう1つは、過去に感染したウイルスが体内に潜んでいて、ストレスで免疫力が下がったときに再活性化して発症するパターンです。これはヘルペスウイルスの特徴でもあります。」

https://blog.jra.jp/shiryoushitsu/2018/12/erv-688e.html

このように、妊娠していない馬には軽い発熱を引き起こすレベルのものであるのですが、繁殖馬にとっては流産を引き起こす恐ろしいウイルスです。しかも、牧場で1頭の繁殖牝馬がこのウイルスに感染して流産をしてしまうと、他の繁殖牝馬もドミノ倒しのように流産してしまう場合があります。 更にこのウイルスの恐ろしいところは、繁殖牝馬以外の馬からも感染するということです。

例えば繁殖牝馬と当歳、1歳馬を同じ敷地内(厩舎は別)で管理されている生産牧場さんもいらっしゃいます。例えばその中で1歳馬がERVに感染した場合に、1歳馬自身は勿論流産の心配はありませんが、同じ敷地内にいる繁殖牝馬にERVが人を介して感染し流産を引き起こす可能性があります。

また、観光牧場の功労馬がERVを持っている可能性もあり、観光牧場を訪れた方がERVのウイルスを手や靴に付着させた状態で生産牧場が多く所在する地域に移動すると、生産牧場関係者にERVが移り、繁殖牝馬に移る可能性も0とは言い切ることができません。可能性としては限りなく低いと思いますが。

もしERVが管理馬に感染し、流産を引き起こしてしまった場合、牧場さんの損失は計り知れないものです。確かに種付け料に関してはフリーリターン特約などで、損失を抑えられる可能性もありますが、繁殖牝馬にかかった経費は勿論のこと、その馬が売れていた場合を考えると、数百万~数千万円の機会損失になります。

だからと言って観光牧場さんがその時期の受け入れを0にしなければならないかというとそういうわけではありません。その牧場にいる功労馬の管理費を稼ぐのも大切なことなので。私として大事なのは、人の流れをしっかりと制御することだと思います。

観光牧場で馬を触った

もしかしたらERVのウイルスが付着したかもしれない

消毒の徹底

生産、育成牧場には立ち入らない、近づかない

この流れを観光客側が守るということができるようになれば、確実に0とは言えませんが、まずリスクは減らせるのではないかと思います。

私も繁殖牝馬を所有しているので、気を付け方としては靴と上着を変えています。

先日所有している繁殖牝馬を見に、牧場さんにお邪魔したのですが、その際に違う靴を履き、上着も現地で新品の安いものを2つ買っていき、牧場さんにお邪魔するとき専用でその片方の上着を着ていました。

ただあくまでも受け入れてくださっているのは、牧場さんの多大なるご厚意であるのは変わりませんし、繁殖牝馬のオーナーという大前提があるので、皆さんにご参考にしていただく方法としては、観光牧場で触れ合う時との上着と靴、もう片方の上着と靴で生産牧場の方が立ち入る可能性のある場所(コンビニ、スーパー等)に訪れる、というのもERVの感染拡大を抑制する一つの方法になるかもしれません

2回目にはなりますが、ERVは場合によっては牧場を倒産させてしまうレベルの、惨劇を引き起こす可能性もあり、日々牧場さんは防疫に最大限の注意を払っています。そういう事情もあり、努力を水の泡にしないためにこの時期は特に牧場に来ないでくださいと発信されているのだと思います。

生産者の皆様が具体的にどのような防疫措置を取られているかは下記をご覧ください。
https://blog.jra.jp/shiryoushitsu/2020/05/erv-4ea9.html

~余談~


さて、ここまではERVの危険性と感染回避の方法を書かせて頂きましたが、Xでのポストを見て思ったのが、ERVについてどれだけの方が正しく認識されているのかなというところです。

ここからは私の自由研究レベルのこととして、読んでいただけると幸いです。間違ってたらDMで教えて頂けると幸いです。

また大前提として
ファンが生産、育成牧場に行くことはないと思いますし
アポなしで行くこと自体非常識な行為なのですが、あくまでたとえ話として
ご理解していただけると幸いです。

日本で蔓延しているERVの種類は1型、4型の2種類です。正確にはEHV-1、EHV-4にと呼ばれ、この2つを合わせてERVと呼んでいます。

この2種類のウイルスはヘルペスウイルスに分類され、この記事の上の方の引用にも書いてありますが、いわゆる潜伏感染を引き起こします。

潜伏感染とは?
(一度感染すると一生体内に潜み体調不良のタイミングで発症すること)

潜伏感染であるERVは
ストレスや体調不良が起こらない限りは発症しません。

また初感染を除き、発症していない間はウイルスの拡散もありません。
(0とは言えないと思いますが)

著作者:Harryarts</a>/出典:Freepik

なので例えばですが
(そもそも観光客を受け入れる生産牧場さんは無いですが…)
観光客が生産牧場を訪れた」

「次の日に1頭の繁殖牝馬がERVを発症し流産を起こす」

「観光客がERVを持って来たからだ」

「実はそうではなく観光客はERVを持ってきておらず
たまたまそのタイミングに発症した」

ということも十分にあると思います。

しかしそのERVがいつ感染したものか知るすべはなかなかないと思います。
となると疑われるのは観光客さんですし、矛先が向くのも観光客。

こういうことが起きないとも言えないので
馬に会いたいファン
受け入れたい観光牧場
生産育成牧場など防疫したい関係者

3者が幸せでいる為にも
「他の馬にあったら生産、育成牧場に行かない」
ファンがこれを徹底する

これ以上でもこれ以下でもないと思います。
しいて言うなら消毒の徹底でしょうか

または観光客を受け入れた場合は
受け入れ時もしくは観光客との接触時に検温の徹底や検査
その馬が繁殖牝馬と接触する可能性がある馬であれば
会うまでの間隔を空けたり、種付け時に検温と検査を行い
発症していないか確認するなどいろいろと方法はあると思います。

http://keibokyo.com/wp-content/themes/keibokyo/images/learning/pdf/39.pdf

こちらの記事に初感染時の潜伏期間は
36時間~48時間と書いているので
例えばですがAという馬が観光客と接触した場合
48時間以降に発症しない場合は初感染ではないといえるので
それ以降で繁殖牝馬と接触し繁殖牝馬がERVを発症したとしても
これはもう観光客は関係なく、それ以前に感染してタイミング悪く再発し
ERVを繁殖牝馬に感染させてしまったということになるのかなと。
(勿論48時間後に発症した原因が観光客の場合もありますが)

観光客がA馬の触った部分を消毒するのもリスク軽減に
最適かもしれませんね。

正直ERVを発症する原因にストレスなど様々な要因がありすぎて
何が発症の原因になったか特定できない可能性を考えると
ファンとしては、感染経路にならないよう
心がけて頂くしかないのかなと、ERVを調べて感じました。

「観光客と触れ合ったからその馬がストレスでERVを発症し
それがウチの馬に感染した!」

となっても理論的にはおかしくはないので、本当に難しい部分ではあるのですが、ファンも牧場さんも消毒と検温、検査の徹底をしていくしか
「感染拡大と感染経路になっていませんよ」と言うことは難しいのかなと。

それだけ厄介なウイルスなんだなと言うことも分かりました

僕は獣医ではないの獣医学は素人ですが
馬が経済動物である以上は、獣医学的に解明されている部分もあるので
そこを確認しつつ、しっかりとしたルール制定と周知をしていく方が
長期的にみると馬産地、競馬界にとってプラスなのかなと思います。

その為にも、まずはファンがしっかりと感染症を含め
獣医学に関する知識をつけることができれば
将来さらに馬産地がファンを受け入れやすい環境作りができるのかもしれません。



参考資料
https://blog.jra.jp/shiryoushitsu/2020/05/erv-4ea9.html
http://keibokyo.com/wp-content/themes/keibokyo/images/learning/pdf/kansen17_3.pdf
http://keibokyo.com/wp-content/themes/keibokyo/images/learning/pdf/39.pdf
https://www.jra.go.jp/training/pdf/research_seisan.pdf


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