ドロッッッッップキッッッッック!!!!!!!!

・ドロップキックを放ちたい。

・果たしてドロップキックに「放つ」が接続されるかどうかは不明だけれど、とにかく僕にはドロップキック欲が秘められている。表出することなく、延々とイメージトレーニングをしている。ずっと内側で鬱屈しているだけで、一生それが発散されることはないしされる必要もないしもちろんされるべきではない。トレーニングの必要性どころか、イメージすら本当は不要。

・十分な助走をつけ、利き足で踏み切り、両ひざを折りたたむようにジャンプ。射程圏内に入った瞬間に全体重と速度を乗せた両足で相手を蹴り飛ばす。

・必ずしも助走する必要はないようだけれど、つまりその場で飛び上がってキックする方法もあるようだけれど、僕のイメージするドロップキックは助走している。身体は斜め上を向いていた。相手にヒットしたあと、空中でうつ伏せになるよう体勢を捻り、受け身を取る。そして即座に立ち上がる。

・楽しいだろうなと思う。50m走の20m地点くらいの爽快感を味わうことができるだろうなと思う。こうして考えてみると僕はドロップキックのスピード感に憧れているだけのように思える。走り幅跳びでも良いんじゃないかと思える。ただ、それでも僕がイメージしているのはドロップキックだった。ドロップキックの、ヒット直前だった。

・ドロップキックを初めて見たのは中学一年生の頃だった。僕の通っていた公立中学校は平和小学校と暴力小学校の生徒が統合されて入学する学校だった。校舎裏でケンカをしていたのが暴力小学校あがりの中学生で二階の窓からそれを見下ろしていたのが平和小学校あがりの僕だった。どちらもそれぞれ身分相応な悪性を抱えていた。
 ケンカというかプロレスみたいだった。古い漫画とかではイジメの言い訳としてプロレスが引き合いに出されることがあるけれど、そういう意味ではなく、ターン制だという意味でプロレスらしかった。
 そういうルールめいたものがあるからなのか、ドロップキックをした人は受け身を取らずにドサッと、というよりドチャっと汚く着地したのに、絶好の機会なのに、相手の人はその人の立ち上がりを待っていた。立ち上がりを待っていたということはもちろんドロップキックは当たっていないという意味でもあるのだけれど。
 そもそもあんな予備動作丸出しの攻撃が当たるはずがない。当たってくれるはずがない。本当のプロレスでもない限り。

・あれ、おかしいな。この記憶だとあまりドロップキックに憧れるような要素が無いな。そもそもドロップキックという名前もおかしい。ドロップするのはキックしたあとだから、ヒットしたあとにドチャっと落ちることだから、ドロップキックという名前はその語感の心地良さほどドロップキックの本質を掴めてはいないのではないか? やっぱり走り幅跳びの方が好きかもしれない。名前的にも過不足が無い。

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