4歳児の気遣いに泣いた夜
「ママ、じゃあおやすみ」
リビングのドアの前。息子が笑顔で手を振り、寝室に消えていった。
「おやすみ」と返したものの、なんでこのタイミングでおやすみと言われたのかわからなかった。だって、夜は決まって私と息子の2人で寝ているから。
不思議に思いつつも寝室まで追っていくと、「きょうはここでパパとねる」と言う息子。「え?パパと2人で寝るの?」と聞き返す私に、「うん」とニコニコしながら答えた。
生まれてからずっと寝る時はママと一緒だったのに、急にどうしたんだろうか。寝かしつけもママがいいと言う子なのに。不意に心の中にポカンと穴が空いたような感覚になった。
子どもが生まれてから、寝返り・寝言・おねしょ…と、色んな理由で夜に何度も起きてしまうようになった。おかげで万年睡眠不足。「一体いつになったら朝までぐっすり眠れるの!?」と何度思ったことか。仕事の関係で、1人別室で寝ている旦那を羨ましく思っていた。
でも「1人で寝ていいよ」と言われると、びっくりするくらい寂しさを感じている自分がいた。
本人の気持ちを尊重したいと思っているものの、「ママちょっと寂しいな」とポロッと言葉が漏れてしまった。
すると、それまで屈託なくニコニコしていた息子の表情が、みるみる変わっていった。それは口元で泣くのを我慢している笑顔だった。
「あれ…どうしたの?何か我慢してる?」声を掛けると、息子は堰を切ったようにおいおい泣き出した。「だって…ぼくのせいで…」と言葉に詰まる息子。そこでピンときた。
その前夜、深夜3時に息子の寝言で覚醒してしまった私。その後なかなか寝付けなかったせいで、朝は睡眠不足からくる目眩にやられていた。「だいじょうぶ?」と息子が声をかけてくれたときに、ことの次第を説明していたのだった。
私は笑い話として話したものの、息子は責任を感じていたらしい。だから「パパとねる」と言い出したようだった。
正直なところ、まさか4歳でそこまで考えるとは思っていなかった。それに、途中まで息子の笑顔は普段と変わらなかったから、本当にそう考えてるのだと思っていた。
ちっちゃな心で寂しさを押し殺して、「ママのために」と笑顔を作ってくれてたんだと思うと、胸が締め付けられた。
「ごめんね。ママは一緒にねんねするのが大好きなんだ。だから大丈夫だよ」と伝えて、2人でボロボロ泣いた。そして、その日は3人で寝ることにしたのだった。
これまで「子どもだから言葉通りにしかわからないだろう」と思って話していた部分があった。でも、今回のことでその考えが改まった。息子の成長を感じると共に、これからは話すことにも気をつけなきゃいけないな、と感じた出来事でした。
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