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ステラおばさんじゃねーよっ‼️㊹急展開〜ストック

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️㊸雪山にて〜ないものねだり は、こちら。



🍪 超・救急車



カイワレの【母さがし】が始まり、すでに1週間が経とうとしていた。

カイワレはすっかり、オファー少なめのフリーライターの日常に戻っていた。

今現在の大モノの仕事といえば、月刊女性誌《Fabuleux》の企画で、3月号掲載の《夢占い》特集記事。

それだけでもありがたい話なのだが、反響次第では4月号より《夢占い》の連載をと、若森から依頼されていた。

カイワレはその企画の準備に、1日の大半の時間を費やしていた。

この女性誌のターゲット層にインパクトを与えるキーワードは、恋愛・結婚・出産といったところだろう。

言い方は良くないが、夢見がちな女性の夢、というのが、理想のエピソードになるはず。

元ネタになる夢日記のストックは、知波から譲り受けたものの中から候補にあげた、7つのエピソード。

3月号の特集記事では、3つのエピソードが消費されるのが決まっており、連載になれば、1ヶ月に1エピソードの掲載となる。

そうなるとストックは、実質4ヶ月分しかない。

また吉夢か凶夢か、何を暗示するのか、夢占い自体に興味を持たせられるか。

そして夢記事の質は高く、量も豊富にあった方がいい。

それに夢占い師と知波との連携を、密にしなければ。

夢を覚えていない体質と人見知りの性格が、高い壁になってカイワレの前に立ちはだかっている。

そんな不安を払拭するかのように、カイワレは黙々と夢占い研究に没頭していった。

⭐︎

最近、知波は緩和ケア病棟にある聖の個室で、休憩時間を過ごしている。

血を分けた姉の最期を見届けたくて、この病棟の看護師長の許可の下、休憩時に面会をさせてもらっている。

積極的治療を施さないと決めた聖は、日に日に痩せ細っていく。

ここ数日は会いに行っても、死んだように眠り続ける聖。

今はもう、トイレさえ自力で行けない。

「わたしのせいで…聖、ごめんね」

個室を訪れるたび、弱りゆく双子の姉の姿を見ては、ひとり静かに泣いた。

一方聖は、夢の中で少女の姿でブランコに乗って遊んでいた。

「大好きなあの場所に宝物を埋めたの。
本当は、わたしのものじゃないんだけど。

もうひとつの宝物はもらっちゃった。
本当は、あの子のものなんだけど」

夢中で漕ぎすぎたせいか少女はブランコから降りられず、しまいには泣き出すほかなかった。

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