ステラおばさんじゃねーよっ‼️73.シアワセノカタチ〜夢を覚えている
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️72.墓前にて②〜満開の桜の下で-2〜 は、こちら。
🍪 超・救急車
花見を兼ねた聖の法要から、1ヶ月が過ぎた。
カイワレは、平日5日を小鳥遊宅で過ごしている。
週末2日は今秋までとなってしまったポーちゃんとの残りわずかな同居生活を楽しんでいた。
カイワレ名義の初連載『夢占い♡夢日記』、通称《ゆめ♡ゆめ》も好評を博し、他の雑誌社からの原稿依頼も徐々に増えていった。
歩は、看護師の卵として平日は専門学校へ通っている。
学友の数も、覚える医療知識も増えて、充実したスクールライフを送っている。
そして週末は、知波のような看護師を目指し自ら勉強に励むようになった。
なのでカイワレとは、朝晩の食卓で顔を合せるくらいになった。
知波は、長年勤務した八雄市総合病院を3月末に退職し、現在失業保険を受給しつつ、専業主婦を楽しんでいる。
カイワレの夢日記パートを担う知波は、新たにノートパソコンを購入し、今まで用紙に書きためた日記も、データとしてカイワレへ渡せるよう、努めた。
「太士朗…半角と全角って、どうやって変えるんだっけ?」
パソコン初心者の知波は、カイワレに質問を繰り返した。
その度にカイワレは、幸福な気持になった。
母とこうして、たわいない話で笑っている。
ただそんな単純なやり取りが幸福である事を、生まれて初めてしるカイワレだった。
⭐︎
カイワレは、夢を見た。
いつもの異空管をもの凄い速さですり抜けると突如、聖らしき女性がこちらを何度も振り返る。
スローモーションで。
そしてその女性は、呟き笑う。
「やっと、ひとつになれました。ありがとう」
と。
そのシーンが何度かリフレインすると、やさしい雨が降ってきた。
少し生ぬるいものを感じる、大粒の雨が。
カイワレは目をゆっくりと開いた。
そして、真っさらのままに放り投げられたノートブックを探した。
あれ、覚えている…。
夢を覚えている!
「おはよう」
真っ赤に目をはらした知波が、キッチンで朝食をこしらえていた。
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