見出し画像

ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉟三者面談〜誓約書

👆 ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉞経緯 は、こちら。



🍪 超・救急車


「本日はお忙しい中ご足労いただき、ありがとうございます。わたしはフリーライターのカイワレと申します。よろしくお願いいたします。こちらが名刺となります」

カイワレは知波と歩の前に、名刺を一枚ずつ置いた。

名刺を差し出された経験は生まれて初めてで、大人扱いされたみたいで嬉しかったが、ナメられないようムスッとした顔で、歩はじっくり目を通した。

そんな歩の態度を見てると、名刺なんかじゃあ易々と誤解なんてとけないもんだな、とカイワレは心で冷笑していた。

だいたいこの三者面談をもうけたのは、ケンカ中の小鳥遊親子を和解させるためだった。

そういう事情を若森に相談したら、企画書をふたりに見せる前に、誓約書へサインをもらう事を義務づけられた。

1.企画書に目を通すのは、その場限りである事

2.企画資料の撮影、面談光景の撮影および盗聴は、厳禁である事

3.該当記事の雑誌掲載が始まり、掲載中または終了後にも絶対に他言無用で、守秘義務を負う事

4.以上が守られない場合は、損害賠償請求も辞さない事

カイワレはこの誓約書をテーブルに置き、一つ条項を読み上げては、わかりやすく説明していった。

まさかの誓約書を前にし、知波と歩は豆鉄砲を喰らった鳩のようだった。

誓約書を凝視し、緊張している様子のふたりの心を解きほぐそうと、カイワレはなるべく軽やかな言い方で提案した。

「その前に何か注文しましょう。お好きなものをご注文ください!本日も取材の一環ですので、経費で落ちますから」

知波はこの状況にいたたまれなくなり、ぽつりとカイワレへ告げた。

「あの、こんな大袈裟な書面を取り交わさなくても、わたしたちカイワレさんのお仕事の邪魔するつもりはありませんからご安心ください」

隣りの歩も真顔で首を縦にブンブン振る。

カイワレはこの誓約書の意義について、丁寧に話し始めた。

「わたしはフリーのライターで、どこかの会社に所属する者ではありません。しかし、今回は大手出版社の雑誌の一企画であり、出版社の規則に従う必要があります。出版社としては、企画を外部の方へ公開する事自体、異例中の異例なので、こうして誓約書を取り交わさねばならないのです。その旨、ご理解いただけたらと思います」

知波は軽くため息をつき、上目づかいでおずおずと切り出した。

「わかりました。誰もが知る有名雑誌ですもんね。そんなすごい雑誌の企画に、わたしの記事が掲載されても大丈夫なんでしょうか」

「わたしは、小鳥遊さんから【夢の買い取り】をSNSでご提案いただき、前回対面で夢日記をご提供いただきました。拝見すると、内容自体も興味深いものでしたし、言葉のセンスも良いし、文章構成がまた上手いなと。それでお会いするのも今回が2度めとなりますが、正式に、夢日記の提供をお願いしたいと」

カイワレはこのプレゼンのために熟考を重ね、作成した台本通りに一言一句、知波と歩に伝えたのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?